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第二章
第四話 助けに来た聖女
しおりを挟む「セツコ……ほんとうに、セツコか?」
「ええ、本物よ。久しぶりね、ズェラシエさん」
「な、なんでここに……?」
5年だ。
セツコがシェーレを追放されて、5年が経っている。ズェラシエが疑問に思うのも当然だった。
ジスとズェラシエが会ったのは3年ほど前。そのときに、セツコは魔の森からゾゼ国のヘコリーン山へ抜けて、無事に暮らしていると聞いていたのだ。まさかシェーレで再開するなんて、夢にも思っていなかった。
「ゾゼにいると……」
「そうなんだけどね。ゾゼの王様から頼まれたの」
「た、頼まれた?」
「そう。シェーレの浄化をしてきてーって」
「そ、それで、引き受けたのか?」
「ええ。みんなにはお世話になったし、放っておけないでしょ」
「セツコ……」
何でもないことのように言うセツコだったが、ズェラシエはその言葉に感動していた。ある日突然召喚されて、聖女という地位と危険な仕事を押し付けられ、しかし最後には呼び出した国のトップの勝手で捨てられたのだ。
それなのに、助けに来てくれた。
たった一年だったが、行動を共にしていた第15兵団とセツコの間には、確かに仲間としての絆があったのだ……と。
「あれ? 泣いてるの?」
「う、うるせぇ……」
「ははっ、ズェラシエさんは感動屋さんなんだな」
「お前は黙ってろ」
セツコに言われるのはいいが、ジスにからかわれるのは、なんかイヤなズェラシエであった。
カロン河の戦線は守られた。加えて、セツコたちはゾゼのヘコリーン山からシェーレに入り北上してきて、その間の瘴気の浄化と魔物対峙を済ませてきたことを告げる。
第15兵団団長であるレッツランド辺境伯は、感心したように言った。
「さすがだなぁ、セツコ。規格外の強さだ」
「宝の持ち腐れだったので思う存分使って下さいな、ジェス団長」
「ははっ、ありがたい」
追放された森では、この神聖力がとても役に立った。魔物を退け、無傷でゾゼに抜けられたのだ。しかし,
ゾゼではペガサスに保護され平和に暮らしていた。神聖力を使って作物を育てたりポーションを作ったりしてはいたが、それをしても余りあるほどの力だ。ほんとうに、「早く言ってくれればよかったのに」ということだ。
「一度城に戻り、それから国内をどう回るか決めよう」
「セツコ……いいのか?」
「いいのよ、ズェラシエさん。ありがとう」
城へ戻るということは、王子と会うかもしれないのだ。嫌な思い出があるだろう、とセツコを窺うズェラシエだったが、本人はあっけらかんとしている。
「助かる」
「行きましょう」
団長が言うと、セツコはペガサスとジス話し、ここからは兵団と行動を共にすることになった。
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