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第二章
第六話 話し合い
しおりを挟む「聖女セツコよ、此度は誠に……感謝する」
「国王様、そんな、顔を上げてください」
セツコは焦ったように言う。
公式の場ではないにしろ、国王が頭を下げているのだ。セツコにしてみれば、国王に会ったのはこれが二度目で、何かされたとも思っていないし、この国に来たのだってかつての仲間やその家族が危険に晒されているなら助けたいと思ったからだ。ある意味、私的な理由だった。
自分にはそれを成し遂げる力があるのだから、と迷いもなかった。
それを国王に伝えると、王はもう一度深く礼をした。
「本当にありがとう……」
「いいえ。それで、被害の大きい地域から回ろうと思うのですが――」
一刻を争う状況だろう。王との話のあと効率よく浄化と魔物の殲滅を行うために、被害状況を把握しているものたちを交えて会議を行うことになった。
場所を会議室に移しセツコたちと国王、その周りの国を動かす立場のものたちが集まって話が始まった。
「王都を中心に、ぐるぐると渦巻き状に回っていくのがいいだろう」
「それだと王都は守られるが助けが間に合わない地域もあるのではないか?」
「王都が機能しなくなったら国は終わりだ」
「しかし困窮する民たちがーー」
もっともではあるが、多くの貴族が王都を守る意見に賛成しているのは、ほぼ保身のためである。しかしセツコはシェーレを助けに来たというよりは、聖女がいないことで一番に被害を受ける民たちを助けることを優先したいと思っている。
「せっかく集まってくださったのに申し訳ございませんが、私は壊滅的な被害を受けているところから回っていきます」
「いや、待て。それよりも王都の防衛をーー」
「王都には優秀な騎士団がいるではありませんか。瘴気のある各地で奮闘している兵団を回ります」
「ここの警備をおろそかにすればーー」
「ですから、ここは騎士団で足りますよね? 私は人の足りないところ、被害の大きいところから回りますので」
「な、なんだと?! 我らこそ優先して守るべきものだろう!」
「だーかーらー! あなたたちは守られているでしょう!!」
「やめんか」
「「「っ!」」」
ここに集まった高位貴族のあまりにも勝手な言い分に、セツコもさすがに憤りを感じている。
王のひと言で、ヒートアップしていた会議室が静まり返った。見た目はやさしいおじいちゃんだが、ポプティット・ルル・シェーレはさすがの賢王である。怒らせてはいけない部類の人だった。
「セツコ殿の言う通り、王都は騎士団がいる。それに、付近に瘴気が湧き出るポイントはない。王都はまだ充分持ちこたえられるだろう」
「し、しかし王! 聖女は最強の守り札ですぞ?! 王都こそーー」
「黙れ。民無くしては、国は成り立たん!」
「っ!」
保身を図るでもなく、国民を守ろうとする王を見て、セツコは感動した。ちゃんとした王族もいるんだな、と。それと、なんで王子がああなっちゃったかな……と。
「セツコ殿にお任せしよう」
「あ、はい。では、ええ、ゾゼから北上してきたので、ここより南はもう大丈夫です。被害報告の一覧はありますか?」
「これを」
「あ、ありがとうございます」
セツコに分厚い書類を手渡したのは、ヘパストス侯爵である。シェーレで騎士団長を務めていて、軍神と言われるほどの強者だ。
「北のザゴスが一番の痛手を負っている。そこから、ペパスト、ジェジル、ロミアランの順で被害が大きい」
ヘパストス侯爵が、広げられた地図を指でなぞっていく。北から北西、西、東の順だ。
「ではその順で回りましょう」
「頼む」
厳格なオジサマ侯爵が、深く頭を下げた。
侯爵も、本当なら今すぐ各地に駆けつけて加勢したいと思っている。しかし、前述したとおり王都の守りを少しでも薄くしようものならギャーギャーと騒ぐやからが多いのだ。身動き取れずにもどかしい気持ちでいた。
そんななか、浄化も魔物の消滅もできる最強聖女が、帰ってきてくれたのだ。感謝してもしきれない。
王とヘパストス侯爵がほかの貴族を黙らせ、セツコの行動順が決まった。
「では、我ら第15兵団とセツコでまずは北へ真っ直ぐーー」
団長レッツランドがまとめに入ると、会議室の外が騒がしくなり、バタンと大きな音を立てて扉が開かれた。
「王子、いけません!」
「ええいうるさい!」
必死で止めようとしている宮兵を張り倒して、真打の登場だ。
「セツコ! お前、よくも今までこの国を放置してくれたな!!」
「……はあ?」
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