わるいむし

おととななな

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 しかし、升谷はそんなことより…と言いながら新汰の方へ体を寄せてきた。
 「新汰くんあの動画でヌイたりしてくれた?」
 「は?!」
 車内に響いた新汰の声に前方に座っているいくつかの頭がこちらを警戒するような動きをした。
 「…シーッ…声が大きいよ」
 升谷は新汰の唇に指を乗せると、ふふと笑みを浮かべる。
 「俺のお尻に興味持ってくれたかなと思って」
 新汰を見つめる眼差しには妙な色気が乗っている。
 動画で見た、あの挑発的で男を誘う眼差しだ。
 不覚にもその内容を思い出してしまい、ドキッとしてしまう。
 だが、同時に苛ついた。
 升谷は今恋人の実家へ向かっている身。
 その道中で恋人の弟に色目をつかうなんて奏汰に対する裏切り行為だ。
 「あんたどうかしてるんじゃないんですか?今この状況でその話します?」
 新汰は距離を縮めてくる升谷から離れようと体をずらした。
 升谷のオナニーショーをこれ以上思い出すわけにはいかない。
 「したんだ?ね、したんでしょ?やっぱり興味持ってくれたんだ。ふふ、嬉しいな」
 升谷は勝手に解釈すると今度は新汰の腕に抱きついてきた。
 店で彼に接触したときのあの不思議な香りが鼻を擽る。
 妙に意識を惹きつけられる甘い香りだ。
 その香りが引き金になったのか、升谷の唇の感触や動画で観た淫らでいやらしい姿が新汰の脳に鮮明によみがえってきた。
 升谷のことなんか何とも思ってない。
 この男は新汰にとって邪魔者で、排除すべき存在だ。
 兄への気持ちに気づいた今、升谷への憎しみは以前よりさらに膨れあがり、呪えるものなら呪ってやりたい大嫌いな相手である。
 だが、なぜか新汰はいつもこの男のことを本気で拒めていない。
 殴ってでもいいから拒めばいいと思うのに、升谷が醸し出す独特な雰囲気や視線を前にすると流されてしまい、いつのまにか彼のペースにまきこまれているのだ。
 でもそれももう今日でおしまいだ。
 新汰は膝の上でぎゅっと拳を握りしめる。
 もうこの男に惑わされたりしない。
 新汰はまだ兄が戻ってくる気配がないことを確認すると、升谷の胸ぐらを掴んで引き寄せた。
 「なら今すぐ尻出してくださいよ。あんたの孔が閉じなくなるまで出し入れしてやるんで」
 
 
 
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