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「やっぱお前の飯は美味いなー!」
ダイニングの席に座り、嬉々としてビーフストロガノフをかき込むハジメさん。
一緒にキッチンに立つ大嗣さんは、見慣れた無表情のはずなのにどこか不機嫌に見えた。
「すみません、かなめさん」
「いえ! 楽しいですよ!」
大嗣さんの親友と食事ができるなんて、彼女としてもっと近い存在になれる気がして嬉しい。
「二人も早く食おうよ!」
ハジメさんの手招きで、やっと私達も彼の向かい席に並んで腰かけた。
ガラス製のダイニングテーブルは上品で大嗣さんっぽい。
自宅にお邪魔するのはもう三回目だけれど、やっぱりまだドキドキする。
私の家よりも少し広いリビングは、とても整えられていて上品だけれど、男性っぽい匂いというか、大人の色香が漂っている気がして。
「無限キャベツ美味しそうです」
私が即席で作ったツナとキャベツのサラダを眺めて頬を赤らめる大嗣さん。
なんてことのない簡単な料理しか作れなくて恥ずかしいけれど、大嗣さんはいつも喜んでくれる。
「無限キャベツねぇ……」
ハジメさんの冷笑を見逃さなかった。
私のことを大嗣さんの彼女として認めていないことが、ひしひしと伝わる。
「結構癖になりますよ! 食べてみてください!」
ここで日和ったら女がすたると、敢えて気にしない素振りでハジメさんの取り皿にキャベツをこんもりとのせた。
「俺、キャベツ好きじゃないんだよね」
「……ハジメ」
ギロリと睨みつける大嗣さんの視線は光線のようにハジメさんを直撃して、ハジメさんは狼狽えながらキャベツを頬張る。
「ん!? んまいっ!」
目を見開き頬をピンク色に染めるハジメさんは急に少年のように見えて、少しだけ親近感を覚えた。
「ナニコレ!? あとひく!」
「でしょ!? でしょ!? ブラックペッパーが決め手です! クッ○パッドで殿堂入りになってたやつ!」
思っていたよりも悪い人ではないのかもしれない。
なんと言っても大嗣さんの親友なんだから。
「……かなめさん……」
隣の大嗣さんが子犬のようにシュンと眉を下げているのに気づいた。
可愛らしすぎて胸がギャンッと鳴る。
「た、大嗣さんもたくさん食べてください!」
慌てて大嗣さんのお皿にキャベツを取り分けていると、彼はホクホクと「いただきます」と目を細めた。
こんなふうに甘えてくれるなんて新鮮で、心の中の自分は悶えてのたうちまわる。
「乾杯しようぜ!」
さっきコンビニでハジメさんが買ってくれた赤ワインを本人が三人分ワイングラスに注いでくれて、私達は乾杯した。
「素敵なグラスですね! 大嗣さんち、食器まで洗練されていて」
「そこまで高価なものではありませんが、集めるのが好きで」
三人分のワイングラスを用意しているなんて、家でよく飲むのかな?
そんなふうに思い浮かべていることがバレたのか、ハジメさんがニヤリと笑った。
「よく大嗣の家で宅飲みするもんな。高校の時のメンツで」
「そうなんですね」
……それって、女性も?
特別気にすることではないってわかっているけど、どうしてもモヤモヤしてしまう。
思った以上に自分は嫉妬深いんだって思い知ってしまった。
「かなめさん、そんな一気に」
思わずグイッと一杯目のワインを飲み干す。
「おー、飲みっぷりいいじゃん。じゃんじゃん飲もうぜ」
「……いただきます」
ボトルを片手に微笑むハジメさんに向かって、受けて立つとグラスを差し出した。
「結構ノリよくて良いキャラしてんな」
とりあえず飲みっぷりだけは認められたみたいで、手応えを感じる。
そんな私を大嗣さんがじっと見つめていることに気づいて、「大嗣さん?」と僅かに頭を傾げる。
「飲みすぎないで。酔うとかなめさんもっと可愛くなっちゃうから」
突然耳元に顔が近づいたと思ったらコッソリ囁かれて、途端にグラッと酔いが回った。
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