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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第106話・腕に抱かれて、膝に甘えて
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朝食のあと、ルナフィエラは4人と森へと足を運んだ。
今日は天気もよく、澄んだ空気が一層心地よい。
先頭を行くヴィクトルの背中を追いながら、両脇にはユリウスとフィンが並び、シグは少し離れた後方から全員を見守っていた。
「今日は、いつもより少し奥まで行ってみようか」
ユリウスの提案に、ルナフィエラは目を輝かせて頷いた。
鳥のさえずりや木々のざわめきに耳を澄ませながら進むうち、見慣れぬ花々や、小さな泉が視界に現れる。
フィンがその花の名前を教えてくれ、ヴィクトルは道端に落ちた枝や石をさりげなく避けて歩きやすくしてくれる。
そんな穏やかな時間の中、帰路につく頃には、ルナフィエラの足取りが少し重くなっていた。
「まだ歩ける」と笑ってみせた瞬間、背後から伸びた大きな手が彼女を抱き上げる。
「……疲れただろ」
低く短いシグの声。
気づけば、片腕にすっぽりと収められる形で抱え上げられていた。
シグの肩越しに見える空は高く、歩くたびに揺れる視界が、なんだか心地よい。
「まだ、歩けるのに……」
「そう言って、無理する」
短く言い切ると、シグは視線を前に戻した。
その横顔が頼もしく、彼女は結局何も言い返せなかった。
頬が少し熱を帯びていくのを感じながら、彼の腕の中で静かに身を委ねた。
古城へ戻ったあと、ルナフィエラはソファに腰掛けて一息ついた。
森の奥まで歩いたせいか、心地よい疲労感が体に残っている。
それを見たユリウスが「今日は訓練はやめて、ゆっくり過ごそう」と提案し、ルナフィエラは素直に頷いた。
壁一面を覆う本棚には、ユリウスが定期的に新しく補充してくれる本が並んでいる。
その中から、ふと手に取ったのは、表紙に花の絵が描かれた物語集だった。
席に戻ると、すぐ隣にヴィクトルが腰を下ろし、柔らかな膝掛けと温かなハーブティーを差し出した。
「お疲れではありませんか、ルナ様」
「ありがとう、ヴィクトル」
「どうかお気になさらず。……お傍で見守らせていただきます」
ページをめくる音が静かに響く。
向かいの椅子ではユリウスも書物に目を通し、窓際ではフィンが音楽を奏でている。
シグは壁際にもたれ、時折こちらに視線を向けていた。
同じ空間にいるだけで、不思議と安心できる。
そんな穏やかな午後の時間が、ゆっくりと流れていった。
夕暮れが近づき、窓から差し込む光がやわらかく黄金色に変わっていた。
頬にかすかな温もりと、髪を梳く指の感触。
ゆるやかな心地よさに包まれながら、ルナフィエラはゆっくりとまぶたを持ち上げた。
視界いっぱいに映ったのは、真剣でやさしい光をたたえたヴィクトルの瞳。
そして、自分が彼の膝に頭を預けていることに気づいた瞬間、胸の奥が跳ねた。
「……お目覚めでございますか、ルナ様」
低く甘やかな声が、耳もとでやわらかく震える。
「私……いつの間に……」
「本をお読みになっているうちに、眠ってしまわれました。……あまりに安らかな寝顔で、起こすのが惜しく、膝枕を」
「……恥ずかしい」
「恥じることなど、何ひとつございません。
……こうしてお傍で、守らせていただけるのは、私にとって何よりの幸福ですから」
真っ直ぐな声音に、ルナフィエラは視線を逸らしきれず、胸の奥までくすぐったくなる。
「……もう少し、このままでもよろしいでしょうか」
静かな問いかけに、彼女は小さく頷いた。
窓の外からは、森を渡る風がやわらかく流れ込んでくる。
その穏やかな空気の中、ルナフィエラはもう少しだけ、彼の膝に甘えることにした。
今日は天気もよく、澄んだ空気が一層心地よい。
先頭を行くヴィクトルの背中を追いながら、両脇にはユリウスとフィンが並び、シグは少し離れた後方から全員を見守っていた。
「今日は、いつもより少し奥まで行ってみようか」
ユリウスの提案に、ルナフィエラは目を輝かせて頷いた。
鳥のさえずりや木々のざわめきに耳を澄ませながら進むうち、見慣れぬ花々や、小さな泉が視界に現れる。
フィンがその花の名前を教えてくれ、ヴィクトルは道端に落ちた枝や石をさりげなく避けて歩きやすくしてくれる。
そんな穏やかな時間の中、帰路につく頃には、ルナフィエラの足取りが少し重くなっていた。
「まだ歩ける」と笑ってみせた瞬間、背後から伸びた大きな手が彼女を抱き上げる。
「……疲れただろ」
低く短いシグの声。
気づけば、片腕にすっぽりと収められる形で抱え上げられていた。
シグの肩越しに見える空は高く、歩くたびに揺れる視界が、なんだか心地よい。
「まだ、歩けるのに……」
「そう言って、無理する」
短く言い切ると、シグは視線を前に戻した。
その横顔が頼もしく、彼女は結局何も言い返せなかった。
頬が少し熱を帯びていくのを感じながら、彼の腕の中で静かに身を委ねた。
古城へ戻ったあと、ルナフィエラはソファに腰掛けて一息ついた。
森の奥まで歩いたせいか、心地よい疲労感が体に残っている。
それを見たユリウスが「今日は訓練はやめて、ゆっくり過ごそう」と提案し、ルナフィエラは素直に頷いた。
壁一面を覆う本棚には、ユリウスが定期的に新しく補充してくれる本が並んでいる。
その中から、ふと手に取ったのは、表紙に花の絵が描かれた物語集だった。
席に戻ると、すぐ隣にヴィクトルが腰を下ろし、柔らかな膝掛けと温かなハーブティーを差し出した。
「お疲れではありませんか、ルナ様」
「ありがとう、ヴィクトル」
「どうかお気になさらず。……お傍で見守らせていただきます」
ページをめくる音が静かに響く。
向かいの椅子ではユリウスも書物に目を通し、窓際ではフィンが音楽を奏でている。
シグは壁際にもたれ、時折こちらに視線を向けていた。
同じ空間にいるだけで、不思議と安心できる。
そんな穏やかな午後の時間が、ゆっくりと流れていった。
夕暮れが近づき、窓から差し込む光がやわらかく黄金色に変わっていた。
頬にかすかな温もりと、髪を梳く指の感触。
ゆるやかな心地よさに包まれながら、ルナフィエラはゆっくりとまぶたを持ち上げた。
視界いっぱいに映ったのは、真剣でやさしい光をたたえたヴィクトルの瞳。
そして、自分が彼の膝に頭を預けていることに気づいた瞬間、胸の奥が跳ねた。
「……お目覚めでございますか、ルナ様」
低く甘やかな声が、耳もとでやわらかく震える。
「私……いつの間に……」
「本をお読みになっているうちに、眠ってしまわれました。……あまりに安らかな寝顔で、起こすのが惜しく、膝枕を」
「……恥ずかしい」
「恥じることなど、何ひとつございません。
……こうしてお傍で、守らせていただけるのは、私にとって何よりの幸福ですから」
真っ直ぐな声音に、ルナフィエラは視線を逸らしきれず、胸の奥までくすぐったくなる。
「……もう少し、このままでもよろしいでしょうか」
静かな問いかけに、彼女は小さく頷いた。
窓の外からは、森を渡る風がやわらかく流れ込んでくる。
その穏やかな空気の中、ルナフィエラはもう少しだけ、彼の膝に甘えることにした。
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