【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝

第121話・秩序の街で出会う煌めき

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森近くの村を発ってから、一行は乗合馬車と徒歩を織り交ぜながら旅を続けた。

舗装された街道では馬車に揺られ、のどかな景色を眺めながら進む。
ルナフィエラは車窓に映る広大な畑や遠くの山並みに目を輝かせ、フィンはその隣で楽しげに話を広げた。

馬車の運行がない街道では、再び徒歩での移動となる。
シグが前を歩いて周囲を警戒し、ヴィクトルが荷を背負い、ユリウスは道程と宿の確認を怠らない。

ルナフィエラは時にフィンに手を引かれ、時にヴィクトルに支えられながら、小さな歩幅でしっかりとついていった。

ときおり立ち寄る村や町では、簡素な宿に泊まり、地元の食事を味わった。
市場を歩けば珍しい果物を見つけてはルナフィエラが目を輝かせ、フィンがそれを買い与え、ユリウスとヴィクトルは値段や品質を冷静に見極める。
シグはといえば、袋を抱えながらも無言で彼女の食べる姿を見守っていた。

そうして数日の旅を重ね――

やがて視界に、大きな城壁と塔の尖塔がそびえ立つのが見えた。
陽光を反射する白亜の石壁、城下に広がる活気ある街並み。

「……すごい……!」

ルナフィエラは思わず声を上げた。

クルミアの谷へと向かう途中にある最大の街――
王都シルヴェールが、その雄大な姿を見せていた。


大きな街門をくぐり抜け、王都へ足を踏み入れた瞬間――
ルナフィエラの瞳は大きく見開かれた。

石畳の大通りは隅々まで掃き清められ、両脇には等間隔に並んだ街灯が整然と立ち並ぶ。
行き交う人々は多いのに乱れはなく、整った服装に落ち着いた表情。
古城近くの街や、森を抜けて立ち寄った村とはまるで違う、秩序立った景色だった。

(……こんなに……人が多いのに、ざわついてない……)

胸の奥に不思議な感動が広がっていく。
宿に荷を置いた一行は、日が傾く前に市場へ足を運んだ。

市場の通りには、食材から工芸品まで、整然とした屋台がずらりと並ぶ。
色とりどりの果物や香辛料は木箱に美しく仕切られ、細工物の店先には繊細な銀細工や彩色ガラスが整然と並んでいた。

「わぁ……綺麗……」

ルナフィエラは思わず立ち止まり、光を受けてきらめくガラス細工に見入る。

「気に入ったかい?」

ユリウスが隣に立ち、微笑を浮かべる。

「……うん。でも、見てるだけで十分」

遠慮がちに首を振ると、フィンがすかさず割り込む。

「十分じゃないよ! こういうのは手に取ってこそ! はいっ」

彼は勝手に小さなガラスのペンダントを店主に頼み、ルナフィエラの手に乗せてしまう。

「ちょっ……フィン!」

頬を赤らめる彼女の肩を、ヴィクトルがそっと支える。

「ルナ様に似合うと思います」

真剣な声音に、また頬が熱を帯びる。

シグは少し離れたところで腕を組んでいたが、彼女が笑顔を浮かべたのを確認すると、わずかに口角を上げた。

市場のざわめきの中――
秩序だった都市の空気に包まれながらも、ルナフィエラの胸には確かな温もりが満ちていった。


市場の奥へ進むと、香ばしい匂いが風に乗って漂ってきた。
ルナフィエラの瞳がぱっと輝く。

「……いい匂い……!」

整然と並ぶ屋台には、焼きたてのパンや串焼き、色とりどりのスープやお菓子が並んでいた。
どの屋台も美しく整えられ、木皿や紙包みひとつ取っても丁寧な工夫が見て取れる。

整然と並ぶ食べ物屋台の一角に、木箱に美しく層を見せる菓子が並んでいた。

「これは、シルヴェール名物の“百層菓子”だよ!」

フィンが嬉しそうに説明する。

「薄い生地とクリームを何度も重ねてあって、サクサクで甘いんだ!」

すすめられるままに一切れを口にすれば――サク、と繊細な音がして、軽やかな甘さが広がる。

「……わ……! すごくおいしい……!」

「でしょ!」

フィンが得意げに胸を張る。

別の屋台では、焼きたての香ばしいバゲットに、薄切り肉と野菜、チーズを挟んだサンドイッチが並んでいた。
肉は香草で臭みを消し、甘辛いソースで仕上げられている。

ユリウスが一つを買い、ルナフィエラへ差し出した。

「こっちは栄養もあって食べやすい。旅の合間に適しているよ」

恐る恐るかじると、香ばしいパンの歯ごたえのあと、ジューシーな肉汁とソースの香りが広がった。

「ん……! これも……とっても美味しい!」

「よかったな」

シグが短く言い、背を支えるように軽く手を添える。

「ルナ様、口元にソースが……」

ヴィクトルが布巾でそっと拭ってくれ、ルナフィエラはさらに顔を赤らめる。

「ふふ、ルナが美味しそうに食べてるのを見ると、僕まで幸せになる」

フィンが笑い、ルナフィエラは思わず瞳を伏せながら微笑んだ。

整然とした王都の市場で、心を満たす食べ歩き。
そのひとときは、旅の疲れを忘れさせるほど甘く、あたたかかった。
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