【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第二章:4騎士との出会い

第12話・治癒魔法を探して

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満月が過ぎ、ルナフィエラの体調はだいぶ落ち着いていた。
けれど、それは一時的なもの。
次の満月が来れば、また同じように魔力が乱れ、体が弱ってしまう。

今はヴィクトル、ユリウス、そしてシグがそばにいる。
それでも、自分の体調管理もできないままでは、彼らに余計な負担をかけ続けることになる。

「……何か方法はないのか?」

ヴィクトルが少し険しい顔をして言う。

「根本的な解決策が見つかればいいんだけどねぇ」

ユリウスも腕を組みながら考え込んでいた。

ルナフィエラ自身も、まだ自分の体質について分からないことが多い。
けれど、「満月のたびに魔力が乱れ、体調が悪くなる」という事実は変わらない。

「……少しでも症状を和らげる方法があればいいんだけど」

ルナフィエラがぼそっと呟いたときだった。

「そういや……」

シグがふと思い出したように言う。

「人間の中に、治癒魔法に長けたやつがいるって話を聞いたことがある」

「人間……?」

ルナフィエラが顔を上げる。

「確か、深い森の近くで暮らしてるらしい。治療院とかは持ってねぇが、そいつの力を頼る人間は多いみたいだ」

「……人間の治癒魔法が、ヴァンパイアに効くとは思えないけど…………」

「それだけじゃねぇ」

シグは少し口ごもるように言った。

「そいつ、人付き合いを避けてるらしい。必要なときしか人前に出ねぇんだと」

「……つまり、見つけるのが難しい?」

「そもそも会えるかどうかも分からねぇな」

ルナフィエラは考え込んだ。
人間の治癒魔法がヴァンパイアにどこまで効くか分からない。
それでも、このまま何もせず満月のたびに倒れるよりは、試せるものは試したかった。

けれど、その人間は人との関わりを避けている。
わざわざ探し出しても、治癒魔法を受けられる保証はない。

(それでも……)

彼女の迷いを察したのか、ヴィクトルが静かに問う。

「……本当に探すのですか?」

「……そうね」

「見つかる保証もないし、会えたとしても治療を受けられるかどうかも分かりません。それでも?」

ユリウスがゆっくりと続ける。

「もし相手がヴァンパイアを拒絶する人間だったら、かえって厄介なことになるかもしれないよ?」

「……それでも、探すわ」

確証がなくても、可能性があるなら。
今できることを一つずつ試していくしかない。

「どんなに小さな可能性でも、試す価値はあるもの」

ヴィクトルが小さく息をつく。

「……承知しました」

ユリウスは肩をすくめ、苦笑しながら言う。

「君がそう言うなら、僕たちは協力するだけさ」

シグはニッと笑い、腕を組んだ。

「そんじゃ、まずはそいつの居場所を探るか」

こうして、ルナフィエラたちは「人との関わりを避ける治癒魔法の使い手」を探すことになった。

——————

数日後、シグは目星をつけた場所を見つけた。

それは深い森の中にある祠のそばに立つ、小さな小屋だった。
そこに、治癒魔法を使う人間が住んでいるらしい。

夜が深く、月の光が木々の間から漏れ落ちる。
ルナ、ヴィクトル、ユリウス、そしてシグの四人は、静かに森の中を進んでいた。

「今夜は月明かりが強いな」

ユリウスが軽く呟く。

「祠まではそう遠くねぇ。気を引き締めろよ」

シグが先頭を歩きながら言う。
ヴィクトルはルナフィエラの少し後ろを歩き、彼女を護るように位置を取っていた。
ユリウスは一番後ろから周囲を注意深く見渡しながら警戒を強めている。

ルナフィエラも足音を殺しながら、周囲の静寂に耳を澄ませる。
夜の森には不思議な静けさが漂い、何かが潜んでいるような気配がする。

やがて、木々の合間に小さな祠が見えた。
その横には、朽ちかけた木々に囲まれた小屋がひっそりと立っている。

「ここだな」

シグが低く呟く。

ルナフィエラは、小さく息をのんだ。
屋根には苔が生え、窓は小さく、まるで森の一部のように静かに佇んでいる。

けれど、不思議と冷たさは感じなかった。

(……本当に、ここにいる?)

確かめるように扉をノックする。

コン、コン。

しばしの静寂の後、中から低く、穏やかな声が響いた。

「……誰だ?」

その声を聞いた瞬間、ルナフィエラの心臓が跳ねた。

(この声……)

シグが口を開く。

「治癒魔法を使う者を探している。そちらがその者か?」

また少しの沈黙。
それから——扉がゆっくりと開く。

月の光が、男の顔を照らした。

その顔を見た瞬間、ルナフィエラは思わず息をのむ。

「……君、まさか」

男も、目を見開く。

「……ルナ?」

その瞬間、ルナフィエラの記憶が一気に蘇る。

「フィン……?」

小さく、震える声で名前を呟く。

その名を聞いたフィンは、驚愕に目を見開き、ルナフィエラをまっすぐに見つめた。
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