純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第二章:4騎士との出会い

第15話・夜明け

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森の静けさの中、東の空がほんのりと明るくなり始めていた。

ルナフィエラとシグは、小屋のそばに並んで立ち、冷たい朝の空気を静かに感じていた。

「……そろそろ戻る?」

ルナフィエラがぽつりと言うと、シグは腕を組みながらちらりと小屋の方を見やる。

「どうするかね。まぁ、そのうち誰かが起きてくるだろ」

「そうね……」

ルナフィエラが微笑みながら頷いた、そのときだった。

——バタンッ!

小屋の扉が勢いよく開く音が響いた。

「……ルナフィエラ様!?」

ヴィクトルの焦った声が飛び込んでくる。

その声に、ルナフィエラは一瞬びくりと肩を揺らした。

「……っ、ヴィクトル?」

「……あー、やっぱりな」

シグが軽くため息をつく。

ヴィクトルは外に立つルナフィエラを見つけ、わずかに安堵したように息をつきながらも、すぐに険しい表情を浮かべた。

「ルナフィエラ様、どうしてこんなところに……!」

「ごめんなさい、目が覚めて……それで少し外の空気を吸おうかと……」

「それなら、どうしてお声がけくださらなかったのですか……!」

ヴィクトルは明らかに焦りと困惑を滲ませながら、ルナフィエラのそばへと駆け寄った。

「外はまだ暗く、決して安全ではありません。もし何かあったら——」

「だから俺がついてたんだろ」

シグが口を挟むと、ヴィクトルは彼を鋭く睨む。

「貴殿がいたとしても、万が一があるかもしれない」

「おいおい、そんな怖い顔すんなって。別に何も起こっちゃいねぇだろ?」

「……っ」

ヴィクトルは言葉を詰まらせるが、それでも納得がいかない様子だった。

「私はただ、ルナフィエラ様がどこにもおられなかったことに驚き——」

「……心配してくれたのね」

ルナフィエラが小さく微笑むと、ヴィクトルはハッとしたように口をつぐむ。

「……当然のことです」

ルナフィエラはそんなヴィクトルを見つめながら、ふっと小さく息をついた。

「ごめんなさい、勝手に外に出て……心配かけたわね」

「……分かってくださったのなら、いいのです」

ヴィクトルは少しだけ表情を緩めると、「もうお戻りください」と促すように扉の方へ手を向けた。

その時、ちょうど小屋の中からもう一人、眠たげな声が響く。

「ん……なんか騒がしいな……」

ユリウスが寝ぼけ眼をこすりながら、扉の向こうからひょこっと顔を出した。

「……ああ、君がいないからヴィクトルが騒いでたのか」

「騒いではいません」

ヴィクトルが即座に反論するが、ユリウスはあまり気にした様子もなく、軽く伸びをする。

「まぁ、何事もなかったならいいけど……あー、なんかちょっと寒いな」

「夜明け前だから、まだ冷えるわね」

ルナフィエラは小さく息を吐くと、静かに空を見上げた。

もうすぐ太陽が昇る。
今日も、新しい一日が始まろうとしていた。

「……とりあえず中に戻りましょう」

ルナフィエラがそう言うと、ヴィクトルは頷き、シグは軽く肩をすくめた。

ユリウスは「あー、朝ごはんとかないかな」と呟きながら、先に小屋の中へ戻っていく。

フィンもすでに目を覚ましていたようで、奥の方から軽く声をかけてきた。

「おはよう。外に出てたんだね?」

「ええ。目が覚めちゃって……」

「そうか。調子はどう?」

「昨日よりは、少し楽かもしれないわ」

ルナフィエラがそう答えると、フィンは微笑んだ。

「それならよかった。今日から、治癒魔法で魔力の調整を始めるつもりだけど……大丈夫?」

「ええ、お願いします」

ルナフィエラは真剣な眼差しで頷いた。

彼女の魔力の暴走を抑えるための調整。
それが、これからの彼女の運命を大きく左右するかもしれない。

外はまだ薄暗いが、確実に朝の気配が満ち始めている。

それぞれの思いを胸に抱きながら、ルナフィエラたちは新しい一日を迎えようとしていた。
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