転生したら魅了スキルが強すぎて人生ハードモードだった件

蟒蛇シロウ

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第1章「幼少期~小学生の日々」

第2話「父と母の愛情」

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 それから数ヶ月が経って、俺はだいぶ自分の状況を把握できるようになっていた。
 まず第一に自分は赤ん坊であること。そしてカレンダーやテレビの情報を見るに俺が死んでから僅か、3年しか経っていないこと。今住んでいる場所は、東京だということ。
 最後に、ニュースで少しだけ流れた情報によると、俺と七海が命を落としたあの地震は多くの犠牲者を出し、復興は思うように進んでいないということだ……。

(七海……)
 俺は思わず心の中で呟く。俺と彼女の遺体は無事に発見されただろうか……。それとも被災した時に海に流れ出てしまって、見つかっていないのだろうか。そんなことを考えているうちに、自然と涙がこぼれる。
 すると、それに気付いた母親が慌てて駆け寄って来た。
「雄飛ちゃん、ママがついてるからね。よしよ~し」
 あやすように優しく言うと、俺を抱き上げる。俺は慌てて涙を拭うと笑顔を作って言った。
「だあ、だぁ」
 すると母親は安心したように笑った。
「よかった、元気になったみたい」
 俺は素直に嬉しかった。だから感謝を込めて言った。
「あぅー」
 彼女は微笑みながら優しく抱きしめてくれると、そのままベッドに横になる。どうやら添い寝してくれるらしい。
 その温かさに安心したのか、俺の瞼は重くなっていき、やがて眠りについたのだった……。
 
 目覚めると、今度は仕事から帰って来た父親がやって来る。
「さぁ~雄飛! パパだぞ~」
 そう言って俺を抱き寄せる父。その温もりを感じながら思う。
(七海……必ず君を探し出すから……そのためにも今は精一杯生きよう! 俺を愛してくれるこの人たちのためにも)
 そんな決意を胸に秘めて、今日もまた新しい一日が始まるのだった……。


 種吉雄飛たねよしゆうと。それが俺の新しい名前だ。父親が言っていたけど、種吉っていうのは全国でもかなり珍しい苗字らしい。
 俺の父親の名前は「種吉秀たねよししゅう」。
 フランスの一流レストランで修行後、27歳の時に東京に帰って来て自分のお店を立ち上げて今はその店のオーナーシェフだ。その店は、雑誌やテレビでも取り上げられるほどの有名店らしい。店ではバリバリと働き、家庭では笑顔を絶やさない、まさに理想のパパという感じだ。
 母親の名前は「種吉舞歌たねよしまいか」。旧姓は西木にしきだったらしい。
 現在は専業主婦だけど、父と結婚する前は有名なモデルだったそうだ。
 日本人離れしたスタイルの持ち主で、街を歩けば誰もが振り返るような美人だ。そして何より……彼女は笑顔が可愛らしく、とても優しい人だった。
  ちなみに父もハンサムで背が高い。そんな二人の間に生まれた俺は、自分で言うのもなんだがかなり容姿に恵まれている方だと思う。
 髪の毛は父親譲りの癖っ毛だけど、顔立ちはどちらかというと母親似かな? 前の人生の平均以下の身長、大きい頭に短足だった容姿とはエラい違いだ……。

「雄飛ちゃ~ん! うぅん! いつ見ても可愛い♪」
 そう言って俺の顔を抱きしめてスリスリする母さん。……恥ずかしいけど、嫌じゃないんだよね。むしろ嬉しいかも?
「ママばっかりズルい! パパも!」
 すると、横から父さんが乱入して来て俺たちを抱き寄せると頬ずりを始めた。柔らかい髭が当たってくすぐったい……でもそれ以上に幸せだ。
 俺は思わず笑顔になる。そんな俺を見て、父さんが言った。
「ああ、天使のような笑顔だ!」
 そう言って更に強く抱きしめる父さん。
「もう! そんなに強く抱きしめたら雄飛ちゃんが痛いでしょ?」
 その言葉に父さんは慌てたように力を抜いてくれたけど……まだ離してくれない。

 本当に幸せそうな2人を見ていると、こっちまで笑顔になれる。俺は、前世の記憶を持ちながらも、赤子としての本能からか、この人たちが大好きになっていった。
「さぁ、雄飛ちゃん。ご飯の時間だよ~♪」
 そう言って母さんは俺を抱きかかえると、自分の服をたくし上げて胸部を露出させた。
 この時間が好きでありつつも、恥ずかしさと申し訳無さを感じていた。
 目の前に迫る綺麗で丸みを帯た大きな胸。
 赤子であることと、血のつながった親子であるためか、変な興奮をしないのが救いだ。
「はい、どうぞ。ふふ、やっぱり雄飛ちゃんは食いしん坊なんだね」
 そんな俺の様子を見て母さんは嬉しそうに微笑むと、もう一方の手で優しく頭を撫でてくれた。
 やっぱり一種の罪悪感を覚えるけど、母さんの愛に満ち溢れた顔を見ると、俺も嬉しくなるのだ。
 そうして両親に愛されながら、今日もまた一日が過ぎていくのだった。

 母さんは本当に俺のことを可愛がってくれた。嫌な顔一つせず、暇さえあれば俺と遊んでくれた。
 父さんも、仕事から帰ってきて疲れてるはずなのに俺をお風呂に入れてくれたり、俺が寝るまで一緒に遊んでくれたりしてくれた。
 父さんと母さんの会話から、どうやら母さんは、幼い頃に両親を亡くしたらしく、それ以来ずっと親戚の家で冷遇されて育ったらしい。
 だからなのか……彼女は俺に無償の愛を注いでくれた。

「可愛い可愛い雄飛ちゃん、大好き~!」
 そんな母さんの愛情表現は過剰に感じたけど、今となってはそれがとても心地良かった。
 母さんは、俺が笑うだけで幸せそうな顔をしてくれる。それだけで俺も嬉しくなったし、もっと頑張ろうという気持ちになるのだ。
 一家の大黒柱として、父さんはそんな俺と母さんを包み込むように見守る。
「雄飛、お前はパパとママの宝物だよ」
 そんな父さんの言葉に胸が熱くなる。俺は幸せ者だ。
 こんなに優しい両親に恵まれて本当に良かったと思う。


 俺の楽しみはというと、母さんが俺と一緒に昼寝した後、ひっそりと新聞を読んだりテレビを見たりすることだ。母さんが起きている時は、子供向けの教育番組を一緒に見ることになるから、1人でいる時はニュース番組やワイドショーを見ることが多い。
 もちろん母さんが起きてバレそうになったときは、偶然にリモコンをイタズラしてしまったような感じを装う。当然その度に、母さんは俺が1人で歩き回ったことを心配するのだけど。
「ニュース番組を見るなんて、雄飛ちゃんは頭がいいんだね~! ママは、こっちの方がいいなぁ♪」
 そう言いながら教育番組を点ける母さん。
「グー! チョキ! パー! あ~、負けちゃったぁ~、あはは!」
 俺よりよっぽど子供向け番組に夢中になっている。自分の母ながら、可愛らしい人だと思う。
「雄飛ちゃん、ママとお手てつなごっか!」
 そう言って手を差し出す母さんに俺は笑顔で応える。
「ああ! 可愛い! もう食べちゃいたいくらい!」
 そう言って俺の手を優しく握り、抱きしめる母。

 そして夜になると、父さんとの時間が始まる。
「それ、雄飛! おいでおいで! もう少っし! もう少っし!」
 ハイハイする俺が、父さんの膝元までたどり着くと、俺を抱き上げて頬ずりする。
 こんなことを何回も繰り返しているけど、本当に幸せだ。
「雄飛ちゃん、そろそろおねんねの時間だね。ママと一緒にねんねしようね」
 そうして母さんと2人で布団に横になる。
 俺は母さんに甘えるように抱きつくと、その温かさを感じながら眠りに落ちるのだった……。

 最初は、二度目の人生なんてどうでもいいと思っていたけど、今では俺を転生させてくれたあの男に感謝すらし始めていた。それと同時に、新聞やニュースで俺と七海が死んだあの地震の情報が無いか、隈なく調べていた。俺はこの2度目の生を無駄にせず、その上で七海の生まれ変わりを探してみせる……それだけは自分に誓うのだった。


 そうやって過ごしているうちに、俺は3歳になっていた。
「「ハッピーバースデートゥーユー! ハッピーバースデートゥーユー! ハッピーバースデーディア、雄飛~、ハッピーバースデートゥーユー!」」
 父さんと母さんは嬉しそうに歌いながら、俺を見つめる。そして俺にケーキの火を吹き消させる。
「雄飛ちゃん、お誕生日おめでとう!」
 そう言いながら俺を抱きしめる母さん。……そうなのだ! 今日は俺の3歳の誕生日なのである! 俺は素直に感謝の言葉を口にした。
「ありがとぉ」
 俺がそう言って笑うと、母さんは嬉しそうに微笑む。
「もぉ、可愛すぎ! うちの子、なんでこんなに可愛いの!?」
 そう言って再び俺を強く抱きしめる母さん。俺は恥ずかしさで顔を赤くした。
「パパもお祝いするぞ! 雄飛、お誕生日おめでとう!」
 そんな両親の言葉に、俺は幸せを感じるのだった。

 3歳になって変わったことは他にもあった。まず一つは言葉だ。3歳児とは思えないほど、今の俺は普通の成人同様に喋れるようになっていた。まぁ元々オッサンの記憶が残ってるわけだし……! 
 二つ目は運動能力だ。正直、尋常じゃないくらいの身体能力を誇っている。ハッキリ言って、将来的にはどの種目でも金メダルを取れそうな気がする。
 これらのことはもちろん、2人にはバレないようにうまくごまかしている。それでも少しずつ、直接2人に感謝の言葉を伝えたり、2人と言葉でコミュニケーションを交わせるようになったりしたことは本当に嬉しかった。

「ママ、パパ! だいすき!」
 俺は満面の笑みで2人に言った。すると……2人は顔を真っ赤にしながら悶絶する。どうやら俺の笑顔にノックアウトされたようだ。あまりにもぶりっこ過ぎる気もするけど、このように2人が喜んでくれることだし、悪いことでもないはずだ。
「ああ、もうダメ! 可愛すぎる!」
 そんな母さんの言葉と共に、俺は2人に抱きしめられる。
「 雄飛ちゃん、ママの宝物だよ~!」
 そう言って頬ずりする母さん。……うん、2人も俺の宝物だ。
「父さんも雄飛が大好きだぞぉ!」
 そう言って父さんは俺を高く持ち上げる。
「わ~い! きゃはははっ!」
 そうして俺は満面の笑みで2人の愛情に応えるのだった。
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