転生したら魅了スキルが強すぎて人生ハードモードだった件

蟒蛇シロウ

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第1章「幼少期~小学生の日々」

第4話「保育園デビュー ~かわいいかれんちゃん~」

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 翌日、俺たちは家族3人でごっこ遊びをした。父さんは変身アイテムが手に入ったのが嬉しかったのか、いつも以上に張り切ってウィッチマンのポーズをしていた。
 ……うん、なんというか。俺も前世では似たようなことをしていたから人のことを言えないんだけど……父さんの方が年甲斐もなくはしゃいじゃってるように見えた。まぁ息子としてはとても嬉しいけど。
 そうして家族みんなで遊んでいると、玄関のチャイムが鳴った。
「誰かしら?」
 母さんが玄関に向かうのを見て、俺は父さんに言う。
「パパ、まほうつかってあそぼ!」
 俺がそう言うと、父さんは笑顔でうなずいてくれた。そして俺たちはウィッチマンの変身ごっこを再開する。そこへ母さんが誰かを連れてきたようで、1人の女性がやって来た。

「お邪魔します。秀さん、雄飛くん」
 その人とは、俺ももう何度も顔を合わせている。母さんが所属していた事務所の女性社長、新山にいやまさつきさんだ。母さんが小学生の頃、町で見かけてスカウトしたのも彼女らしい。
「あ、社長! お久しぶり……でもないですね。いつもお世話になっています」
 父さんはそう言って頭を下げる。そして新山さんが俺に気が付くと微笑んで言う。
「雄飛くん、こんにちは。はい、これおばさんからのプレゼント」
 そう言って新山さんは俺に紙袋を渡した。……何だろう?
「わぁ! ありがとう!」
 俺は笑顔でお礼を言う。

「さつきさん、遊びに来るたびに申し訳ないですよぉ」
 母さんはそう言いながら、新山さんにお茶を出す。
「いいのいいの。舞歌ちゃんにはたくさん頑張ってもらったんだから。まだまだ足りないくらいよ」
 彼女はそう言って笑った。……母さんは、彼女のことを世界を広げてくれた恩人だと話していたっけ。そんなことを思いながら彼女からのプレゼントである紙袋を開けると、中には俺が好きなチョコレートの箱、そして子供用のオシャレな服が何着か入っていた。

「わぁ!ママ、パパみて! おようふくだ!」
 俺は思わずそう口にする。それを見た父さんが嬉しそうに俺に言う。
「良かったな、雄飛」
「うん!」
 俺が目を輝かせながらそう言うと、父さんと母さんは顔を見合わせて笑った。
「可愛くてオシャレな服! 雄飛ちゃんにピッタリだぁ♪」
 母さんも、俺と同じように目を輝かせる。そして新山さんに向き直るとお礼を言う。俺も2人に続いて、彼女にあらためてお礼の言葉を伝えるのだった。
 それからお茶を飲みながら、父さんが作っていたケーキをみんなで食べるのだった。


「それで? 今日はどうしたんですか?」
 お茶を飲んでしばらくすると、父さんがそう聞くと、彼女は答えた。
「たまたま近くに用事があったのよ。久しぶりに舞歌ちゃんの顔も見たかったから。雄飛くんにも会いたかったし」
 そう言いながら、俺の頭を撫でる新山さん。……本当に昔から可愛がってくれるんだよなぁ。
「……さつきさん、ごめんなさい。今でもこうして気遣ってくれるのに……何も恩を返さなくて……。私、もう芸能界には……」
 少し沈黙があって、母さんが申し訳なさそうに言う。……そっか、社長さんがこうして時々家に来るのはそういう理由があったからなのか。

「わかってるわ、舞歌ちゃん。貴女がやりたいことをすればいいし、それが私にとっては一番よ。だから申し訳ないとか思わないで? こうして来てるのは、貴女の笑顔を見たいだけなんだからね」
 そう言って母さんの頭を撫でる新山さん。両親を早くに亡くし、親戚の家で冷遇された母さんにとって、新山さんは本当の母親のように大切な存在なのだろう。
「はい……。ありがとうございます」
 母さんは、涙ぐみながらそう答えた。
「……ほら、泣かないで。雄飛くんが不安になっちゃうわ」
 そう言って新山さんは母さんの涙を拭った。
「う……、うん! ごめんね? ママ泣かない!」
 そう言って笑顔を作る母さん。

 帰り際、見送る俺たちに新山さんは笑顔で言う。
「じゃあまたそのうちに顔を見に来ちゃうかもしれないけど、よろしくね。……舞歌ちゃん。今の貴女、とっても素敵よ。雄飛くんと一緒にいる時が一番幸せそうだもの」
 そう言って母さんを抱きしめる新山さん。その言葉に、母さんは満面の笑みでうなずき、俺を抱きかかえる。
「はい! この子の成長を見守るのが私の夢なんです。私の大切な宝ですから!」
 その言葉に嬉しそうに微笑むと、新山さんは手を振って帰って行くのだった。


 それから1ヶ月ほど後、ついに申請していた保育園の空きが出たらしく、俺も近所の保育園に通うことになった。
 正直、精神が大人の状態で本当の子供たちばかりの保育園に通うのはしんどかったけど、母さんが少しでも自分の時間を取れた方がいいかなと思い、通うことにした。……まぁ当の母さんの方は、俺が保育園に行くのが寂しいと言っていたけど……。
「ママ~! いってきます!」
 俺は保育園の入り口で母さんに見送られながら、元気よくそう言った。新山さんがプレゼントしてくれたお気に入りの服で、保育園デビューだ。

 母さんは心配そうな表情で俺に言う。
「忘れ物ない? 持ち物に、お名前書いてあるよね? ご挨拶は覚えてる?」
 どうやらかなり心配しているようだ。
「雄飛くんのことは安心して、我々にお任せください!」
 若い女性の保育士さんが、胸を張って母さんにそう言った。その頼もしい言葉に母さんはやっと安心したようだ。
「お願いします! 雄飛ちゃん、ママ行くから……保育士さんの言うことちゃんと聞いてね? 寂しくても泣いちゃだめだよ?」
 そう言って俺を強く抱きしめる母さん。俺はそんな母を抱きしめ返して言う。
「だいじょうぶだよ、ママ。あとでおむかえにきてね! いってきます!」
 母さんに手を振りながら、俺は保育士さんにもう片方の手を引かれて保育園に入っていく。

「うぅ……雄飛ちゃん……」
 保育園の外で涙目になりながら手を振る母さんを見て、俺よりも母さんの方が子供みたいだ、と感じて少し笑ってしまう。
「雄飛くん、それじゃあもう少ししたらみんなに挨拶するからね。怖くないから安心してね」
 優しく語りかける保育士さんに、俺は笑顔でうなずき、一緒に他の児童が待つ部屋へと向かうのだった。


「みんな~、おはよう! 今日はみんなに新しいお友達を紹介するよ~! 雄飛くん、ご挨拶できるかな?」
 そう言って
 俺に優しく語りかける保育士さん。
「……うん! えっと、はじめまして! たねよしゆうとです!」
 俺は元気よくそう答えた。すると他の子供たちが俺に向かって言う。
「よろしくー!」
「よろしくね、ゆうとくん」
「ゆうとくん、いっしょにあそぼ!」
 そう言った子供たちに、俺は笑顔でうなずいた。
「うん! よろしくね!」
 そうして保育士さんの隣でみんなと遊んでいると、部屋にとある1人の女の子が入って来た。
 まるでお人形のように整った容姿の女の子だ。

「あれ? 華怜ちゃん、どうしたの?」
 保育士さんが不思議そうにその子に聞くと、彼女は答えた。
「わたしね、ゆうとくんといっしょにあそびたいの!」
 そう言って俺を見つめる女の子。俺はその女の子に向かって言う。
「いいよ! いっしょにあそぼ!」
 俺がそう答えると、その女の子は嬉しそうに俺の手を取った。そんな俺たちを見て保育士さんが言う。
「じゃあ、かれんちゃん、ゆうとくんのことよろしくね! 仲良くするんだよ!」
「はーい! ……いこ、ゆうとくん」
 俺たちは手をつないで他の児童たちの所へ向かう。

 俺たちが他の児童のところにやって来ると、彼女は俺に人形を手渡してきた。
「あそぼ! このこ、わたしのおともだち!」
 そう言って人形を抱きしめるかれんちゃん。その人形はクマのぬいぐるみのようだった。俺は笑顔で答える。
「うん! あそぼー! ゆうとだよ。よろしくね、かれんちゃん」
 そう挨拶すると彼女は嬉しそうに笑った。
 
 中身が大人の俺にとって、小さい子と遊ぶのは子守をするのと変わらない。だけど、今を精一杯楽しむことが大事だ。ここは本当に子供に戻ったつもりで、彼女と仲良くなることにした。
「ねえ、なにしてあそぶ?」
 俺がそう聞くと、彼女は少し考えた後で言う。
「……えほん、よむ!」
 かれんちゃんはそう言って絵本を持ってきた。
「このクマちゃんにえほんをよんであげるの! ゆうとくん、パパやって」
 そう言ってクマのぬいぐるみを座らせると、俺の手を引いてその隣に座らせる彼女。こうやって家でもパパとママに絵本を読んでもらってるんだろうな、と思いながら、俺は絵本を読み始めた。

「むかーしむかし、あるところに……」
 俺が絵本を読むと、かれんちゃんは笑顔で言った。
「ゆうとくん、じょうず!」
 そんな感想を言ってくれる彼女に俺は笑いかけて言う。
「ありがとう! かれんちゃんはなんさい?」
 俺がそう聞くと、彼女は少し考えて答える。
「……んーとね……。4さい!」
 そう言って嬉しそうに笑う彼女。なるほど、じゃあ俺の1つ上だ。
「わぁ! ぼく3さいだからかれんちゃんのほうがとしうえだ~」
 俺がそう言うと、彼女はまた嬉しそうに笑う。そんな彼女の笑顔に癒されながら俺は絵本を読み進めるのだった。

「……こうしてみんななかよくくらしましたとさ、おしまい!」
 そんな俺が朗読を終えると、他の子供たちも集まって来た。
「ねぇねぇ、こんどはみんなでおにごっこしようよ!」
 一人がそう言うと、みんな頷く。
「うん! ゆうとくんもいいよね?」
 そう言って笑う子供たちを見て俺も笑顔でうなずくのだった。

 お昼ご飯を食べたら、お昼寝タイムをして、その後にレクリエーションをしながらのおやつタイムだ。
 保育園の布団に横になりながら周りを見回す。スヤスヤと眠る小さい子たち。まぁ俺も小さい子なんだけど……。こういう小さい頃は、これが当たり前でずっと続くと思っていた。
 ……父さんは今仕事して、母さんは家事と在宅ワーク頑張ってるんだよな……。いいのか、俺寝てて。……いや、そんなこと言っても俺にできることなんてないし……。子供は寝るのが仕事って言うし……。今は時の流れに身を任せよう。……そう考えながら、俺は眠りにつくのだった。

 おやつタイムを終えると、親たちが迎えに来てみんな次々と帰って行く。俺も保育園の入り口に、不安そうな表情をしている母さんの姿を見つけたので帰ることにした。
「かれんちゃん、みんなまたね~!」
 俺はそう言って、かれんちゃんやみんなに手を振る。
「うん! じゃあね~!」
 元気な声で答えながら手を振り返すかれんちゃん。俺は、母さんの所へ走って向かう。
「ママ~!」
 俺が元気よく叫ぶと、母さんは心配そうな顔から笑顔に変わって俺を抱きしめる。
「雄飛ちゃん、おかえり! 大丈夫だった? ご挨拶ちゃんとできた?」
 そう言って俺を心配する母さん。俺は笑顔で答える。
「うん! ちゃんとできたよ!」

 すると、保育士さんが俺たちに言う。
「こんにちは、雄飛くんのお母さん。雄飛くん、とても立派に挨拶していましたよ。お友達もすぐにできて、元気に遊んでました!」
 そう言って微笑む保育士さん。母さんは安心したように、そして嬉しそうに言う。
「良かった……。本当にありがとうございます! 雄飛が迷惑かけてないか心配で……」
 そう不安な表情で言う母さんに俺は笑って答える。
「ぼくね、ちゃんとおともだちとあそべたんだよ!」
 そう言うと、母さんは嬉しそうに微笑んで言う。
「そっかぁ……。偉いぞぉ、雄飛ちゃん」
 そう言って俺を抱きしめる母さんに俺も抱きつきく。

 保育士さんはそんな俺たちを見て微笑みながら挨拶する。
「それじゃあ、雄飛くん。また明日元気に来てくださいね!」
「うん、せんせい、さようなら~!」
 俺がそう挨拶すると、母さんも頭を下げる。そして俺は母さんに手を引かれながら保育園を後にした。こうして俺の保育園デビューは、なんの問題もなく終わったのだった。


「よかった。でも、うちの雄飛ちゃんなら大丈夫だって、ママ信じてたけどね! だって、パパに似た優しくて賢い子だし!」
 そんな母さんに俺は笑顔で言う。
「あと、ママににてかわいいよ!」
「まぁ、雄飛ちゃんったら!」
 そんな会話をしながら、俺たちは夕食を摂るのだった。
「ごちそうさまでした! おいしかった~!」
 俺がそう言うと、母さんは嬉しそうに言う。
「うんうん、よかったよかった! それじゃあ、お片付けしてお風呂入ろっか」
 そう言って母さんは食器を片付けていく。そんな母さんを見て、俺も食器を運んでいった。
「ママ、おふろわいたよ!」
 俺がそう言うと、母さんは笑って言う。
「ありがとう! じゃあ一緒に入ろうね」
 そう言って俺の頭を撫でると、俺たちは浴室に向かうのだった。

「ただいま~」
 寝る前の歯磨きをしていると、父さんが仕事から帰って来た。
 俺と母さんは2人で出迎え、労いの言葉をかける。
 父さんは俺を見て、安心したような表情を浮かべて俺を抱え上げた。
「よかった! 雄飛が寝る前に間に合ったぁ。今日が保育園初日だったから、どうだったか心配でな」
 そう言って俺の体を自分の前まで持ってくる父さん。
「雄飛、保育園、どうだった?」
 少し心配しているのだろうが、それを隠すように父さんは笑顔で尋ねる。俺はすぐに満面の笑みで答えた。
「うん、たのしかった! おともだちもできたよ! いっしょにえほんよんでおにごっこした!」
 俺がそう答えると、父さんは俺を抱えながら頭を撫でてくれる。
「そうか! それは良かった。雄飛ならすぐお友達できると思ってたよ」
 そんなやり取りをしている俺たちを、母さんは微笑ましく見ながら、父さんの夕食の用意をしているのだった。

「そうだ、可愛い子はいたかい?」
 父さんは夕食を摂りながら、からかうように言った。俺は少し考えるように首をひねる。可愛いっていうことなら、中身が大人の俺から見れば全員可愛い子供なんだけど、父さんが言いたいのはそういうことじゃなくて、可愛い女の子がいたかどうかってことだろう。真っ先に思い浮かんだのは最初に俺に話しかけてくれて、一緒に遊んだ、かれんちゃんだ。
「うん、いたよ!」
「……うぐぅっ!」
 俺が元気よく言うと、父さんより先に母さんが反応する。しかもなぜか、左胸を苦しそうに押さえている。俺は慌てて母さんに言う。

「ママ! だいじょうぶ? どうしたの?」
 俺がそう言うと、母さんは目に涙を溜めながら答える。
「うぅ……、だ、大丈夫だよ! 雄飛ちゃん!」
 そんな様子を見て父さんが困ったように言う。
「こらこら、雄飛が心配してるぞ? ママ」
 母さんはそれを聞くと、いつもの表情に戻るも、拗ねたような口調で呟いた。
「だって、雄飛ちゃんが可愛い女の子がいたって言うから……。このままだと、雄飛ちゃんがとられちゃう!」
 俺はそれを聞いて、思わず笑ってしまった。母さんはそれを見て頬を膨らませて言う。
「むぅ~……。雄飛ちゃんったらひどい! ママのこと笑ったでしょ~」

 そんな母さんの様子に、父さんも笑う。
「ママ、雄飛も成長していくんだからな。保育園でのいろんな出会いが、この子を成長させる」
「それは……わかってるよぉ。でも、寂しいんだもん!」
 そう言って俺を抱きしめる母さん。俺はそんな母さんの頭を撫でながら言う。
「だいじょうぶだよ、ママ! ぼく、おおきくなったらママとけっこんするから!」
 俺が小さい子供が言いがちなセリフを言うと、母さんは目を輝かせて嬉しそうに微笑むと、俺に頬ずりをする。
 そんな様子を見て父さんは困ったように、だけど変わらぬ日常に嬉しそうに目を細めるのだった。
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