転生したら魅了スキルが強すぎて人生ハードモードだった件

蟒蛇シロウ

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第1章「幼少期~小学生の日々」

第5話「サイレンの音 ~かれんちゃんの秘密~」

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「雄飛ちゃ~ん♪ 朝だよ~、起きて~」
 朝、母さんのそんな呼びかけで目が覚める。そっか今日も保育園だったっけ。俺は体を起こすと母さんに言う。
「おはよう、ママ」
「うん、おはよう♪ いい天気だよ! 保育園行く前に、朝ごはん食べちゃおうね~」
 そんな会話をしながら俺と母さんは朝食を摂る。そして、身だしなみを整えるとママと一緒に保育園へと向かう。

 保育園前に着くと、昨日よりは幾分か寂しくなさそうにしながらも母さんが俺を抱きしめる。
「いってらっしゃい。おやつ食べたら迎えに来るからね? いい子にするのよ?」
「うん! いってきます!」
 俺が笑顔でそう言うと、母さんも微笑み返してくれる。そして俺を送り出してくれた。
 俺は母さんに手を振ると保育園へと入っていくのだった。

「ゆうとくん、おはよう~!」
 俺を見つけると、かれんちゃんが元気よく駆け寄ってきた。
「おはよう! かれんちゃん!」
 俺が笑顔で返すと、かれんちゃんもにっこりと微笑む。
「ゆうとくん、きょうもあそぼうね!」
 そんなかれんちゃんの笑顔に俺も思わず微笑んで答える。
「うん! あそんでくれる?」
 俺がそう聞くと、かれんちゃんは笑顔で頷いた。
「うん! ゆうとくんとあそびたい!」

 こうして俺とかれんちゃんは一緒に遊び始める。今日はブロックのおもちゃで遊んでいる。すると、ブロックを上手くつなげて高く積んでいく俺にかれんちゃんが目を輝かせながら言う。
「ゆうとくん、すごいね! おとなのひとみたいにあたまいいね! ブロック、じょうず!」
 そんなかれんちゃんに俺は照れながら言う。
「そんなことないよ……。でもうれしいな」
 俺がそう言うと、かれんちゃんは首を横に振る。そして満面の笑顔で言った。
「ううん! ゆうとくんはすごいよ! だって、こんなにいっぱいつみあげてるんだもん! おかあさんかおとうさんにおしえてもらったの? ブロックあそび」
「うん、そうだよ!」
 そんな俺の答えにかれんちゃんは嬉しそうに微笑んで言う。
「そっか! ゆうとくんのおとうさんおかあさんってやさしいんだね!」
 そう言ってくれるかれんちゃんに俺は笑顔でうなずいた。


 そのあとも一緒に遊んでいた俺たちだったが……。
 ウウゥーーーーン!!
 辺り一帯に警報が鳴り響いた。
 周りの子供たちは怯えたように保育士さんに抱き着いたり、他の子たちと身を寄せ合ったりしている。危険警戒警報だ。このあとに、警報を鳴らした理由のアナウンスが鳴るはずだ。
『ただいまの警報は……テロリストによる軍事暴動が行われたことを警告するものです。市民の皆さまは速やかに建物の中に避難し、警報が解除されるまでは、決して外を出歩かないようお願い申し上げます……。繰り返しお伝えいたします。ただいまの警報は……』

 意味がわかっていない子供たちも、鳴り響く警報の不気味な音と、ただ事実を伝えるかのように無機質な放送音声に怯えていた。
「ママァ! パパァ!」
「うわあああん! 怖いよぉ!」
「うえ~~~ん!!」
 子供たちのパニックに保育園の先生たちは、優しく声をかける。
「みんな、大丈夫だから落ち着いて! みんなのことは先生たちが守るから!」
「そうよ! ここは大丈夫だからね!」
 児童たちを落ち着かせようとする先生たちですら、久しぶりの警報音に焦りを隠せないようだった。

 俺が生きていた頃は、3日に1度は当たり前のように鳴り響いていたこの警報音も、前世の俺が死ぬ1年前に警報が鳴らない平和な時期が訪れた。
 それから俺が転生するまでに4年、そして俺が転生してから3年の約7年間、今まで警報は一切鳴らなかったらしい。
 久しぶりに鳴り響いた警報音に先生たちが戸惑うのも、初めて聞く不気味な警報音に子供たちが恐怖するのも無理はない。
 俺ですら転生して、平和な世の中になりつつあると思った今、かつての警報音を聞いて心臓がザワザワしている。
 そんな中、かれんちゃんは泣きじゃくっている子を見つけ、その子を抱き締めて落ち着かせていた。4歳なのに彼女はたくましいな、と思う。


 それから程なくして……。
『ただいまの警報は、テロによる暴動が鎮圧されたため解除されました。市民の皆様には大変ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます……』
 そんなアナウンスが流れ、子供たちの泣き叫ぶ声が収まっていく。代わりに保育園の電話が鳴り止まない。子供たちの親御さんたちが電話しているのだろう。
 俺の母さんもかなりの過保護だから、きっと電話しているかもしれない。そう思っていたらやっぱりそうだったらしく、少し電話を替わってもらい安全を伝えた。
「雄飛ちゃん! だ、大丈夫なの? 怖かったよね? 先生の言うこと聞いて、過ごしてね。夕方前に迎えに行くから」
「うん! ありがとう、ママ!」
 そんなやり取りをして、俺は先生に電話を替わった。

 母さんは過保護気味とはいえ、さすがに今回の件は親であれば誰でも心配するだろう。誰だって久しぶりに聞く警報音だったからだ。
 一気に生前の記憶に戻されていく。何度も何度も警報音が鳴り響き、その度にどんな状況なのか、放送音声やテレビ、ラジオなどに釘付けだった。

 かれんちゃんは、俺のところに戻ってくると心配そうに言う。
「ゆうとくん……。だいじょうぶ? ゆうとくんはこわくない?」
 俺はそんなかれんちゃんに笑顔で言う。
「うん! だいじょうぶだよ!」
 俺がそう言うとかれんちゃんはホッとした表情を見せた。
「よかったぁ……。せんせいがね、ゆうとくんはやさしくてきっとまもってくれるからだいじょうぶっておしえてくれたの!」
 そう言って笑うかれんちゃん。そんな可愛らしいかれんちゃんに俺は微笑んで言う。
「そっか! ぼくもね、かれんちゃんがいるから、こわくないよ!」
 俺がそう言うと、彼女は少し照れ臭そうにして言う。
「ほんとう? うれしいな♪」
 そんな風にお互い笑いあう俺たちを、先生は微笑みながら見ていた。

「ねぇ、ゆうとくん……。ふたりきりではなしたいことがあるんだ。……えへへ、きのうあったばかりだけど……どうしてもきになって。おひるねのじかんに、いっしょにうらにわにきてくれる?」
 かれんちゃんは、俺に少し恥ずかしそうにそう言ってきた。
 俺は笑顔で言う。
「うん、いいよ! おひるねのじかんは、おにごっことかしてあそばないからたいくつだもんね!」
 俺がそう言うとかれんちゃんは嬉しそうに笑った。


 そして俺たちは昼ご飯を食べたあとの昼寝の時間に、1人ずつバレないように布団を抜け出して外に出た。かれんちゃんの布団を見ると、布団にくるまっているかのように、わざと布団をこんもりとさせていた。やっぱり頭のいい子だなぁ。
 俺はこっそりと部屋から出ると、園の玄関に向かい靴を履く。かれんちゃんはすでに外で待っていたようで、俺が靴をはいたタイミングで出てきた。
「ごめんね、おそくなって」
「ううん! おひるねにぬけだすのたのしかったから!」
 そう言って彼女は笑う。
「えへへ、ぼくも! それじゃあいこっか!」

 俺たちは裏庭へと向かう。するとかれんちゃんは、空を見上げて言った。
「ゆうとくんは、さっきのおおきなおとにもびっくりしてなかったね! すごいよ! おとなのひとみたい!」
「えへへ、そうかなぁ。でも、かれんちゃんだってほかのこにやさしくしててかっこよかった!」
 俺がそう言うと、かれんちゃんは嬉しそうに微笑んだ。そして俺は、そんなかれんちゃんの頭を撫でる。
「えへへ……。ありがとう! ゆうとくん」
「ううん! おにいちゃんがいもうとのあたまをなでるのはふつうでしょ? あ……でも、かれんちゃんのほうがひとつとしうえだっけ?」
 俺がそう言うと、かれんちゃんは嬉しそうに微笑んで言う。
「うん! わたしのほうがおねえちゃんだよ!」
「わぁ、でもかれんちゃんかわいいもん!」
 俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑む。そして彼女は不思議なことを口にした。

「……ねぇ、おなまえはなんていうの?」
 その質問を不思議に思う俺。名前なら雄飛と名乗ったし、この子もそう呼んでくれている。……いや、子供だからあだ名とか他の呼び方を聞きたいのかな?
「ぼく? ゆうとだよ」
 俺がそう答えると、かれんちゃんは首を横に振った。そして俺を見て言う。
「ちがうよ。ゆうとくんのなまえじゃなくて……おなまえはなんていうの?」
 そんな質問をしてくるかれんちゃんに、さらに不思議に思い首を傾げて黙る俺。すると彼女はハァ、とため息をついて4歳の子供とは思えない表情でニヤリと笑う。
「……だからね、って聞いてるのよ、雄飛くん?」
 その口調もまた、幼い子供のたどたどしいものではなく、俺がやろうとすればできるように大人のハッキリとした口調だった。


「……な、なにを……言ってるんだ?」
 俺はその言葉に不意打ちを食らい、いつもの子供口調を少し崩してしまう。そんな俺を見てかれんちゃんは言う。
「あっはは! そんなクールな口調だったのね、あなた」
 おかしそうに手を叩く彼女。……もしかして、この子も転生者なのか? 俺は思わず彼女に聞いた。
「君も……転生したの?」
 俺がそう聞くと、彼女は少し驚いた表情をする。
「え? まさか気付いてなかったの? ……あなた何度目の転生?」
 何度目って……初めてですけど? そんなことを思いながらも、彼女の言葉に驚きを隠せない俺。やはり彼女も転生者だったようだ。
「1、1回目だと思う……」
 俺がそう呟くと、彼女は納得したようにうなずいた。

「ふ~ん、どうりでこっちの正体に全然気が付かないわけね。……まぁいいわ、私はもう5回転生してるから! 先輩として尊敬してよね!」
 そう言って俺に向かってビシッと指をさすかれんちゃん。俺は気になって聞いてみる。
「5回転生……ってどういうこと? いったいなんでそんなに!?」
 俺がそう聞くと、彼女は一瞬暗い表情になり俯くも、すぐに顔を上げる。
「い、いろいろとあるの! とにかく! せっかく同じ保育園に通う転生者同士仲良くしてあげようってこと……。ど、どう?」
 かれんちゃんは少し恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうに俺にそう聞いてくる。そんな様子のかれんちゃんに俺は笑顔で答えた。
「うん! よろしくね、かれんちゃん!」
 そんな俺を見て、彼女はパァッと顔を明るくする。
「久しぶりに自分と同じ境遇の人に出会えたわ。まっ! よろしくね、雄飛!」
 そして俺たちは握手を交わすのだった。
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