転生したら魅了スキルが強すぎて人生ハードモードだった件

蟒蛇シロウ

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第1章「幼少期~小学生の日々」

第41話「雄飛の怒り ~覚醒する精力~」

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 俺は慌てて腕を振り払おうとするが……。
「雄飛クンハ、ドンナオ味ガスルノカナァ? アハ、楽シミダネェ」
 名女川なめかわはそう言いながら、俺の腕を引っ張る。そしてそのまま俺を壁に押し付けると、顔を近づけてきた。
「や……やめろっ! 離せ!」
 俺は必死に抵抗するが、名女川の力は強く振りほどくことができない。
 そんな俺の様子を楽しそうに見ていた名女川だったが、突然俺の頬に舌を這わせてきた。

「うあっ!?」
 思わず声を上げてしまう。
「フフ……チョットダケ舐メルネェ……」
 そして今度は、そのまま耳たぶを口に含んできた。
「あ……ああ……」
 俺は恐怖で体が固まってしまい、抵抗することができない。
「アァ……雄飛クン、美味シイネェ。舞歌チャントハ違ウ、男ノ子ノ味ダヨォ」
 名女川は俺の耳元で囁く。なんだ、この恐ろしさは……。力が入らない……。こうやって母さんも、こいつに……。

「うああっ! やめろぉっ!」
 俺は恐怖に支配され始めた体を、無理やり動かして名女川を振り払った。
 距離を取ろうとした俺だったが、なぜか後ろに下がることができない。
 腹部に圧迫感を感じて視線を落とすと、そこには何かが巻き付いていた。
「え……? し、舌?」
 俺がその舌のようなものを、目で追っていくと、それは名女川の口から伸びていた。
 彼女はまるでカメレオンのように、舌を伸ばすことができるようだ……。

 名女川は俺の動揺を楽しむかのように、ニヤニヤと笑っている。
 そして次の瞬間、彼女は自ら舌を手で掴んで引きちぎった。……そんなことをすれば常人なら即死だ。
 だが……。
 ペロリ、とまるで新しい舌が生えてきて、笑う名女川。
 俺に巻き付いた舌の方はというと、まるで縄のように俺の体を締め付けている。
 コイツ……本物の化け物か……!?

「雄飛クン、ホントカワイイネェ。チョット怖ガラセチャッタンダケド、マダ元気イッパイネ」
 名女川はまるで蛇のように、舌を垂らしたまま近づいてくる。俺は名女川の残された舌を振りほどこうとするも、ヌメヌメしていて上手く掴めない。それでいてしっかりと縛り付けてくるものだから、力づくで解くこともできない。
「な、なんなんだよ、これっ!」
 俺がもがいているうちに、名女川はゆっくりと距離を詰めてくる。
「雄飛、逃げてっ!」
「それそれお嬢さん、当たったら痛いですよぉ? ヌフフ!」 
 合原のムチによる攻撃を避けながら、華怜がこちらに叫んでいる。彼女の方も余裕はなさそうだ。


 その様子を少し離れた場所から観察する2つの影があった。
「始友ち~ん、このままだと聖母も種主しゅしゅも、名女川に犯されちゃうんじゃない? 聖母の方は計画に問題ないけど、種主の方はここで名女川にイタズラされたら、支障がでるでしょ?」
「ん、そうだなぁ。好き勝手やっていいとは言ったが、このままだと雲行きが怪しいのはたしかだなぁ。合原の方もあの少女に対して興奮してきてやがるみたいだしなぁ」
 Ouroborosの幹部である金沢かなざわ遊娜ユナと、同じく幹部である白始友ハクシユウだ。
 遊娜はキャンディーを舐めながら、呆れたように言う。
「ムダに遊びすぎだよね~あの2人は」
「おいおいユナ、お前が言うのかよ? まぁ、これ以上行為がエスカレートするようなら、止めるさ」
 遊娜のボヤキを受け、始友はサングラスの位置を直しながら雄飛たちの様子を眺めるのだった。


「ほらほらお嬢さん、頑張って避けるのです。ヌフフ、彼らに近寄ろうとしても無意味ですぞぉ?」
 合原はムチを巧みに操り、華怜が雄飛たちの傍に近寄ろうとするのを邪魔する。
(くっ、こいつ……。チャンスが来たら、懐のビーズを投げつけて動きを抑制する。隙をうかがうのよ、私……!)
 華怜は合原に対して警戒を解かないまま、彼の動きを観察している。
 楽しんでいるようにしか見えない合原だが、ムチの扱いに関してはかなり手慣れているようで、ムチを自由自在に操る姿はまるで熟練のダンサーのようだった。

「雄飛、こんなところで全部諦めるの!? 頑張って振りほどくのよっ!」
 華怜は合原に意識を向けつつ、名女川の舌に縛られている雄飛に叫ぶ。
「前世の彼女と再会するんでしょ! しっかりして!」
「何ヲ言ッテルノ? アァ、転生前ノコト? ドウセソロソロ忘レチャウンダカラ、ドウデモイイジャナイ?」
 雄飛に絡みついた舌を舐めながら名女川はニタニタと笑う。
「……っ!」
 そんな名女川の言葉に雄飛が反応する。
(……俺が……七海を……忘れる? ……でも、たしかに……。……いやだ……そんなのは……いやだっ!)
「雄飛!?」
「雄飛クン?」
雄叫びと共に名女川の舌を振りほどいた雄飛は、名女川に向かって再び拳を構えた。


そうだ、俺はこんなところで負けてOuroborosの連中にいいようにされるわけにはいかないんだ!
母さんを守る、華怜を、茉純さんを守る。そしてみんなでここから脱出するんだ!
そして……絶対に七海を見つけ出すんだから!
「お前なんか、お前なんかにぃ! 負けてられるかぁっ!」
俺は叫びながら名女川に向かって突進する。
「アハハ、雄飛クン、チョットダケ男ラシクナッタナァ! デモ、ソンナニ興奮シテ……ホントニ大丈夫?」
名女川はおちょくるっているようだ。

「うおぉぉぉっ!! 精力、放出!!」
俺の叫びと共に、俺の肉体が一瞬で変化する。
普段は今年から中学に通うようにはとても見えないほど背も低く、小学校低学年やあろうことか園児に間違われることも多い俺。
だけど、溜め込んだ精力を解放することで、一時的に肉体を成長させることが可能だ。
そしてただ大きくなるだけじゃない。転生者として生まれた俺の身体能力は普段でもかなり高い方だけど、この姿になるとさらに強くなる。

「ウゥン!? ハ、速イッ!!」
名女川がそう言い終わるのと同時に、俺は何度も名女川に拳をお見舞いする。攻撃を防いでいた名女川だが、次第に防御が間に合わなくなり、俺の攻撃がまともに入るようになった。
「グ、ウゥッ……!!」
距離を取り、再び舌を俺の体に巻きつけようとする名女川だったが、俺は伸びて来た舌をしっかりと掴むと強化された筋力で彼女を引き寄せる。
一瞬の俺の反撃に対して名女川は反応することができず、彼女の体は俺の元まで引っ張られてきた。

「うおおおおおっ!!」
俺が鋭い拳を一度突き立てると名女川が大きく後ろに吹き飛ぶが、俺はそのまま舌を振り回して合原に向かって投げ飛ばした。
「うおっ!? な、なんです!? うぎゃあっ!」
予想外の動きに驚いたのか、合原は名女川を避けることができず、そのまま激突した。
「いたたた……。や、やってくれますねぇ! くそぉっ!」
名女川たちOuroborosが逃げ出さないように、俺は合原と名女川に近づいていく。
「雄飛、すごいわっ! 一気に形成逆転できるかもしれない!」
華怜も懐からビーズを取り出し、俺と一緒に2人に近付いていく。
名女川も合原も打ちどころが悪いのか、まだ立ち上がることができないようだ。


名女川と相原の様子を観察していた、白始友と金沢遊娜。
「ふぅん、おもしろい戦い方するじゃ~ん。種主、種吉雄飛……。あたしの能力のタイプと似てるし♪」
遊娜が手にした棒つきキャンディを舐め、2人を一瞬にして退けた雄飛を見て、嬉しそうに目を見開く。
「さ、そろそろ名女川たちを助けない? 恩を売っておくのもいいだろうしぃ~」
彼女はより一層目を見開いてそう言うと同時に、キャンディを噛み砕く。
だがその肩を始友が押さえる。
「ん~? どしたの始友ちん?」
彼女が首を傾げながら、始友に視線を向ける。
「待て待て。お前は種主と同じ学校に通って監視する役割をこなせるんだ。ここで顔を晒さない方がいいだろうぜ? 
俺が行って来る」
サングラスごしにニヤリと笑う彼に、遊娜も懐から取り出したグミを口に入れてニヤリと笑い返すのだった。
「おっけ~♪ ここは始友ちんに譲ってあげる♪」
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