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第1章「幼少期~小学生の日々」
第40話「精力を解き放つ ~絶望の舞歌~」
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「ど、どうしたの、母さん?」
「い、いや! もうやめて……」
俺の言葉も母さんには全く届かない。華怜の方を見たが、彼女も同じ状況だった。
「ふふっ、驚イタ? 雄飛クンノオカアサン、舞歌チャンハネェ……昔ワタシニ襲ワレタンダヨォ」
名女川は、まるで世間話でもするかのように平然と話し始めた。
「襲……われた?」
俺が聞き返すと、名女川優希は不気味な笑みを浮かべたままうなずく。
「ソウダヨ! アノトキハ怖ガッテ、ズット震エテタネェ! ネェ、舞歌チャン?」
名女川優希が母さんに近付こうとしたのを、俺は慌てて止める。
「な、何する気だ!」
俺がそう叫ぶと、名女川はケタケタ笑いながら言った。
「何ッテ……気持チヨクシテアゲヨウカナッテネ……フフ」
こいつを止めないと! 母さんが危険だ!
「やめろぉぉぉぉ!」
俺は叫びながら、名女川に殴りかかった。しかし……。
ガシッ! そんな音が聞こえてきそうなほどに、俺の拳はあっさりと名女川優希の細い腕に掴まれてしまった。そしてそのまま腕を捻られ、地面に投げ飛ばされる。
「ぐあっ……!」
「雄飛クン……チョット落チ着イテヨォ! モシカシテ、昔ノ事聞イテ怒ッテルノカナ?」
名女川はそう言いながら、倒れ込んだ俺の上にまたがるように乗っかってきた。
俺は必死に逃れようとするが、まるで体が石になったかのように全く動かすことができない。
「くそっ! 離せ!」
「雄飛を離しなさいッ!」
華怜が俺たちの方へと走って向かってくる。だが、その行く手を塞ぐ影があった。
太めの中年男性……華怜が遭遇したというOuroborosメンバー!?
「ヌフフ、お久しぶりですねぇ~、華怜ちゃん。申し訳ありませんが、邪魔をさせていただきますよぉ~? あちらはあちらでお取込み中のようですからねぇ」
華怜の腕を掴もうとするが、彼女は咄嗟に腕を引いて少し後ろに下がる。
「くっ、アンタ……。合原茂樹とか言ったわね。……怪我したくなかったら、そこをどきなさい? 今、アンタに構ってるヒマは……」
「そんなつれないこと言わないで下さいよぉ~華怜ちゃぁ~ん。ムッフ~ン! その怒った顔、可愛いですなぁ~」
華怜の言葉を遮り、身もだえする男……合原。
「な、なによ……。気持ち悪いわね……」
華怜が引き気味でそう言うと、合原はコホンと咳払いをして姿勢を正した。
「ヌフフ、とにかくあなたの相手はこの私です。雄飛くんは、名女川氏に譲る約束でしたのでねぇ」
名女川に馬乗りになられている俺と、華怜の目が合う。彼女はこちらの助けに入れないことに焦っているようだ。
ここは俺が自分でなんとかするしかない。
俺は自分に馬乗りになって、見下ろしている名女川に視線を戻す。
長い黒髪が垂れて、顔に影を作っている。そこから覗く顔は、不気味なほどの笑みを張り付かせている。
恐怖に飲まれそうになるけど、ここで負けるわけにはいかない。
「フフ……カワイイ。ソウダ、舞歌チャンノ前デ雄飛クンノ初メテヲ奪ッテアゲル! ソウシタラ、舞歌チャンモ安心シテクレルデショ?」
名女川はそう言いながら、俺のワイシャツのボタンを一つずつ外し始めた。そしてシャツの前がはだけると……。
「や、やめろぉぉぉ!」
俺は必死に抵抗したけど、名女川優希の細い腕はびくともしなかった。
「雄飛クン……カワイイネェ……。柔ラカソウナ肌、触ッテミタクテ我慢デキナイヨォ」
名女川は俺の首筋に、その細い指先を触れさせる。
「うぐっ……!」
俺は思わずうめき声を上げてしまう。そしてそのまま、俺の上半身が露になった。
「アハッ! カワイイネェ雄飛クン……。ホレボレスルヨォ」
名女川は俺の首からお腹にかけて、指先を滑らせていく。
「うあっ! や、やめろっ!」
俺は必死に抵抗するが……名女川は構わずに続ける。
恐怖とくすぐったさが入り混じった感覚に、俺の体はビクンと跳ね上がった。
「や、やめなさいっ! 私の雄飛ちゃんを離してっ!」
叫び声と共に名女川を突き飛ばしたのは、母さんだった。
彼女の反撃は予想していなかったのか、名女川は不意打ちを喰らったように突き飛ばされる。
「雄飛ちゃん、怖かったよね、ごめんねっ! もう大丈夫だから!」
母さんは俺を抱き起すと、俺を抱きかかえて名女川から距離を取る。
「ママ……大丈夫だよ。ママこそ大丈夫なの?」
「う、うん。雄飛ちゃんが助けてくれたから」
母さんは笑顔でそう言った。だけどその声は震えており、明らかに名女川に対して強い怯えを感じられた。
「あ~あ、舞歌チャンニ奪ワレチャッタァ」
名女川はそう言って、わざとらしく肩をすくめてみせると……。すぐにニヤリと俺と母さんに視線を向ける。
「ひっ……こ、来ないで……」
母さんが弱々しく呟く。
「舞歌チャンノ、オ味。久シブリニ味ワイタイナァ。舐メタゲルネ、舞歌チャン♡ アトデ雄飛クンモ、チョット舐メテアゲルネ? 愛スル人ノ味ハ、特別ナンダヨ?」
「や……やめてっ!」
母さんがそう叫ぶと、名女川はまたケタケタと笑った。まるで蛙の鳴き声のように不快で不気味な声だった。
「いやあああああああああっ!! もうやめてぇっ! お願いだからお願いだからっ! もう私に関わらないで!」
母さんは狂ったように叫び、その場にうずくまる。
「ママっ! 落ち着いて!」
そんな母さんを、必死に落ち着かせようと背中をさすった。だが……。
「いやぁっ!! 触らないでぇっ!」
「えっ?」
母さんは俺の手を振り払った。母さんからの拒絶は初めてだった。
すぐに俺の手を払ってしまったことに気付き、母さんはハッとして俺を見た。
「あ、ご……ごめんね雄飛ちゃん。雄飛ちゃんにこんなことするつもりは……なかったの。本当にごめんね! でも……怖い……怖いよ……」
今まで見たことないほど、母さんの恐怖心と焦りが伝わってきた。
「舞歌チャン、ワタシガ可愛ガッテアゲルネェ……」
「いやあぁぁっ!! ……うっ……」
名女川の言葉に、恐怖からか再び絶叫した母さんはそのまま倒れる。
どうやら気を失ってしまったらしい。
「ア……アァ……眠ッテル舞歌チャン、カワイイネェ。チョット怖ガラセ過ギチャッタカナァ……デモ、ソンナ表情モ最高ダヨォ」
名女川は恍惚とした表情で、身を悶えさせている。
「お前……よくも……よくも母さんを……!!」
俺は自分でも止められないほどの怒りを名女川にぶつけていた。
こいつを許さない。絶対に母さんと華怜を守るために戦うんだ! しかし、そんな俺を嘲笑うかのように、名女川はクスクスと笑う。
「アハハ、怒ッテル雄飛クンモカワイイネェ。チョットビックリサセチャッタダケナノニ……マァイイカ!」
名女川優希はそう言うと、狂気に満ちた笑みを浮かべたまま俺たちの方を見た。
俺は再び拳を握りしめ、名女川に向かっていく。
名女川は動じることなく笑いながら言った。
「イイネェ雄飛クン! ソノ顔ダヨ! ワタシガ見タカッタノハ、ソノ表情ナンダ!」
そして、俺の拳を軽々と避けたかと思うと、そのまま俺の腕を掴んで捻り上げる。
このままだと先ほどと同じだ……だけど!
「精力、循環!!」
俺がそう叫ぶと同時に、俺の肉体に身体能力を著しく向上させるエネルギーが満ち溢れてきた。
「ナニッ!?」
俺が名女川に抵抗できたことに驚いたのか、名女川は思わず声を上げていた。
そしてその瞬間を、俺は見逃さなかった。すぐさま名女川の腕を振り払い、腹部に蹴りを食らわせる。
「グフッ!」
俺の攻撃は上手くヒットしたようで、名女川は苦しそうな声を上げた。
……が。
「アララ……チョット油断シチャッタネェ」
すぐに体勢を立て直した名女川は、再び不気味な笑みを浮かべた。
「ゆ、雄飛くん……?」
突然素早い動きで、名女川と戦闘を始めた俺を見て、茉純さんは困惑している様子だ。
無理もないだろう。まだ小学校を卒業したばかりの俺が、常人離れしたスピードで名女川相手に蹴りを入れたのだから。
「華怜も雄飛くんも、一体どうしちゃったの……何が、起きてるの?」
茉純さんは、そう言いながら華怜の方へ視線を移す。
「……お母さん、雄飛のママを連れてもう少し下がってて。あとでちゃんと説明するから……」
「で、でも……華怜……」
「お母さん、大丈夫だから。私を信じて」
そんなやり取りをしながらも、華怜は目の前の合原から目を離さない。
「華怜! そっちのおじさんは任せてもいいか? こいつは……俺の母さんを傷つけたこいつは、俺が絶対に倒すから!」
俺はそう言いながら、名女川を睨みつけた。しかし彼女は動じる様子もない。
「フフフ、イイネェ……ソノ目。ゾクゾクシチャウヨォ……」
名女川はそう言いながら、再び俺に向かってきた。だが……。
「同じ手を喰らうもんか! はあっ!」
俺は向かってくる名女川に対し、回し蹴りを繰り出す。彼女の反応速度はかなり早く、ギリギリのところで俺の攻撃を避けたようだったが、俺はそこで再び能力を強化する。
「精力循環! 筋力強化!」
俺は回し蹴りの足を戻すと、鋭く強力な蹴りを名女川の左足に叩きこんだ。名女川の骨にダメージを与えた感触がある。少なくとも軽い骨折くらいはしているはずだ。
「アァッ! 痛イッ!」
名女川の足は充血し、腫れあがっている。しかし、それでも名女川はまだ笑っていた。
「っ! このっ!!」
俺は拳に力を入れ、一気に距離を詰めると名女川のみぞおちに拳をめり込ませた。
「ウグッ」
……入った! 名女川の体ががっくりと崩れ落ちる。かなり強く打ち込んだから、気絶したかもしれない。
……そう思ったのだが、名女川はまたすぐに立ち上がった。
「……アハッ、雄飛クン、強イネェ。デモ……」
名女川はそう言うと、俺の腕を掴んできた。
「なっ!?」
そんな……。かなり本気で打ち込んだはずだ。当たり所が悪ければ命に関わるかもしれないほどの……。
しかし名女川は、何事もなかったかのように笑って見せたのだ。
「今ノ一撃ハ効イタヨォ? デモ、マダマダ! ワタシヲモット楽シマセテネ!」
「い、いや! もうやめて……」
俺の言葉も母さんには全く届かない。華怜の方を見たが、彼女も同じ状況だった。
「ふふっ、驚イタ? 雄飛クンノオカアサン、舞歌チャンハネェ……昔ワタシニ襲ワレタンダヨォ」
名女川は、まるで世間話でもするかのように平然と話し始めた。
「襲……われた?」
俺が聞き返すと、名女川優希は不気味な笑みを浮かべたままうなずく。
「ソウダヨ! アノトキハ怖ガッテ、ズット震エテタネェ! ネェ、舞歌チャン?」
名女川優希が母さんに近付こうとしたのを、俺は慌てて止める。
「な、何する気だ!」
俺がそう叫ぶと、名女川はケタケタ笑いながら言った。
「何ッテ……気持チヨクシテアゲヨウカナッテネ……フフ」
こいつを止めないと! 母さんが危険だ!
「やめろぉぉぉぉ!」
俺は叫びながら、名女川に殴りかかった。しかし……。
ガシッ! そんな音が聞こえてきそうなほどに、俺の拳はあっさりと名女川優希の細い腕に掴まれてしまった。そしてそのまま腕を捻られ、地面に投げ飛ばされる。
「ぐあっ……!」
「雄飛クン……チョット落チ着イテヨォ! モシカシテ、昔ノ事聞イテ怒ッテルノカナ?」
名女川はそう言いながら、倒れ込んだ俺の上にまたがるように乗っかってきた。
俺は必死に逃れようとするが、まるで体が石になったかのように全く動かすことができない。
「くそっ! 離せ!」
「雄飛を離しなさいッ!」
華怜が俺たちの方へと走って向かってくる。だが、その行く手を塞ぐ影があった。
太めの中年男性……華怜が遭遇したというOuroborosメンバー!?
「ヌフフ、お久しぶりですねぇ~、華怜ちゃん。申し訳ありませんが、邪魔をさせていただきますよぉ~? あちらはあちらでお取込み中のようですからねぇ」
華怜の腕を掴もうとするが、彼女は咄嗟に腕を引いて少し後ろに下がる。
「くっ、アンタ……。合原茂樹とか言ったわね。……怪我したくなかったら、そこをどきなさい? 今、アンタに構ってるヒマは……」
「そんなつれないこと言わないで下さいよぉ~華怜ちゃぁ~ん。ムッフ~ン! その怒った顔、可愛いですなぁ~」
華怜の言葉を遮り、身もだえする男……合原。
「な、なによ……。気持ち悪いわね……」
華怜が引き気味でそう言うと、合原はコホンと咳払いをして姿勢を正した。
「ヌフフ、とにかくあなたの相手はこの私です。雄飛くんは、名女川氏に譲る約束でしたのでねぇ」
名女川に馬乗りになられている俺と、華怜の目が合う。彼女はこちらの助けに入れないことに焦っているようだ。
ここは俺が自分でなんとかするしかない。
俺は自分に馬乗りになって、見下ろしている名女川に視線を戻す。
長い黒髪が垂れて、顔に影を作っている。そこから覗く顔は、不気味なほどの笑みを張り付かせている。
恐怖に飲まれそうになるけど、ここで負けるわけにはいかない。
「フフ……カワイイ。ソウダ、舞歌チャンノ前デ雄飛クンノ初メテヲ奪ッテアゲル! ソウシタラ、舞歌チャンモ安心シテクレルデショ?」
名女川はそう言いながら、俺のワイシャツのボタンを一つずつ外し始めた。そしてシャツの前がはだけると……。
「や、やめろぉぉぉ!」
俺は必死に抵抗したけど、名女川優希の細い腕はびくともしなかった。
「雄飛クン……カワイイネェ……。柔ラカソウナ肌、触ッテミタクテ我慢デキナイヨォ」
名女川は俺の首筋に、その細い指先を触れさせる。
「うぐっ……!」
俺は思わずうめき声を上げてしまう。そしてそのまま、俺の上半身が露になった。
「アハッ! カワイイネェ雄飛クン……。ホレボレスルヨォ」
名女川は俺の首からお腹にかけて、指先を滑らせていく。
「うあっ! や、やめろっ!」
俺は必死に抵抗するが……名女川は構わずに続ける。
恐怖とくすぐったさが入り混じった感覚に、俺の体はビクンと跳ね上がった。
「や、やめなさいっ! 私の雄飛ちゃんを離してっ!」
叫び声と共に名女川を突き飛ばしたのは、母さんだった。
彼女の反撃は予想していなかったのか、名女川は不意打ちを喰らったように突き飛ばされる。
「雄飛ちゃん、怖かったよね、ごめんねっ! もう大丈夫だから!」
母さんは俺を抱き起すと、俺を抱きかかえて名女川から距離を取る。
「ママ……大丈夫だよ。ママこそ大丈夫なの?」
「う、うん。雄飛ちゃんが助けてくれたから」
母さんは笑顔でそう言った。だけどその声は震えており、明らかに名女川に対して強い怯えを感じられた。
「あ~あ、舞歌チャンニ奪ワレチャッタァ」
名女川はそう言って、わざとらしく肩をすくめてみせると……。すぐにニヤリと俺と母さんに視線を向ける。
「ひっ……こ、来ないで……」
母さんが弱々しく呟く。
「舞歌チャンノ、オ味。久シブリニ味ワイタイナァ。舐メタゲルネ、舞歌チャン♡ アトデ雄飛クンモ、チョット舐メテアゲルネ? 愛スル人ノ味ハ、特別ナンダヨ?」
「や……やめてっ!」
母さんがそう叫ぶと、名女川はまたケタケタと笑った。まるで蛙の鳴き声のように不快で不気味な声だった。
「いやあああああああああっ!! もうやめてぇっ! お願いだからお願いだからっ! もう私に関わらないで!」
母さんは狂ったように叫び、その場にうずくまる。
「ママっ! 落ち着いて!」
そんな母さんを、必死に落ち着かせようと背中をさすった。だが……。
「いやぁっ!! 触らないでぇっ!」
「えっ?」
母さんは俺の手を振り払った。母さんからの拒絶は初めてだった。
すぐに俺の手を払ってしまったことに気付き、母さんはハッとして俺を見た。
「あ、ご……ごめんね雄飛ちゃん。雄飛ちゃんにこんなことするつもりは……なかったの。本当にごめんね! でも……怖い……怖いよ……」
今まで見たことないほど、母さんの恐怖心と焦りが伝わってきた。
「舞歌チャン、ワタシガ可愛ガッテアゲルネェ……」
「いやあぁぁっ!! ……うっ……」
名女川の言葉に、恐怖からか再び絶叫した母さんはそのまま倒れる。
どうやら気を失ってしまったらしい。
「ア……アァ……眠ッテル舞歌チャン、カワイイネェ。チョット怖ガラセ過ギチャッタカナァ……デモ、ソンナ表情モ最高ダヨォ」
名女川は恍惚とした表情で、身を悶えさせている。
「お前……よくも……よくも母さんを……!!」
俺は自分でも止められないほどの怒りを名女川にぶつけていた。
こいつを許さない。絶対に母さんと華怜を守るために戦うんだ! しかし、そんな俺を嘲笑うかのように、名女川はクスクスと笑う。
「アハハ、怒ッテル雄飛クンモカワイイネェ。チョットビックリサセチャッタダケナノニ……マァイイカ!」
名女川優希はそう言うと、狂気に満ちた笑みを浮かべたまま俺たちの方を見た。
俺は再び拳を握りしめ、名女川に向かっていく。
名女川は動じることなく笑いながら言った。
「イイネェ雄飛クン! ソノ顔ダヨ! ワタシガ見タカッタノハ、ソノ表情ナンダ!」
そして、俺の拳を軽々と避けたかと思うと、そのまま俺の腕を掴んで捻り上げる。
このままだと先ほどと同じだ……だけど!
「精力、循環!!」
俺がそう叫ぶと同時に、俺の肉体に身体能力を著しく向上させるエネルギーが満ち溢れてきた。
「ナニッ!?」
俺が名女川に抵抗できたことに驚いたのか、名女川は思わず声を上げていた。
そしてその瞬間を、俺は見逃さなかった。すぐさま名女川の腕を振り払い、腹部に蹴りを食らわせる。
「グフッ!」
俺の攻撃は上手くヒットしたようで、名女川は苦しそうな声を上げた。
……が。
「アララ……チョット油断シチャッタネェ」
すぐに体勢を立て直した名女川は、再び不気味な笑みを浮かべた。
「ゆ、雄飛くん……?」
突然素早い動きで、名女川と戦闘を始めた俺を見て、茉純さんは困惑している様子だ。
無理もないだろう。まだ小学校を卒業したばかりの俺が、常人離れしたスピードで名女川相手に蹴りを入れたのだから。
「華怜も雄飛くんも、一体どうしちゃったの……何が、起きてるの?」
茉純さんは、そう言いながら華怜の方へ視線を移す。
「……お母さん、雄飛のママを連れてもう少し下がってて。あとでちゃんと説明するから……」
「で、でも……華怜……」
「お母さん、大丈夫だから。私を信じて」
そんなやり取りをしながらも、華怜は目の前の合原から目を離さない。
「華怜! そっちのおじさんは任せてもいいか? こいつは……俺の母さんを傷つけたこいつは、俺が絶対に倒すから!」
俺はそう言いながら、名女川を睨みつけた。しかし彼女は動じる様子もない。
「フフフ、イイネェ……ソノ目。ゾクゾクシチャウヨォ……」
名女川はそう言いながら、再び俺に向かってきた。だが……。
「同じ手を喰らうもんか! はあっ!」
俺は向かってくる名女川に対し、回し蹴りを繰り出す。彼女の反応速度はかなり早く、ギリギリのところで俺の攻撃を避けたようだったが、俺はそこで再び能力を強化する。
「精力循環! 筋力強化!」
俺は回し蹴りの足を戻すと、鋭く強力な蹴りを名女川の左足に叩きこんだ。名女川の骨にダメージを与えた感触がある。少なくとも軽い骨折くらいはしているはずだ。
「アァッ! 痛イッ!」
名女川の足は充血し、腫れあがっている。しかし、それでも名女川はまだ笑っていた。
「っ! このっ!!」
俺は拳に力を入れ、一気に距離を詰めると名女川のみぞおちに拳をめり込ませた。
「ウグッ」
……入った! 名女川の体ががっくりと崩れ落ちる。かなり強く打ち込んだから、気絶したかもしれない。
……そう思ったのだが、名女川はまたすぐに立ち上がった。
「……アハッ、雄飛クン、強イネェ。デモ……」
名女川はそう言うと、俺の腕を掴んできた。
「なっ!?」
そんな……。かなり本気で打ち込んだはずだ。当たり所が悪ければ命に関わるかもしれないほどの……。
しかし名女川は、何事もなかったかのように笑って見せたのだ。
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