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第2章「経矢の故郷」
第31話「彼女の仕掛けは、閃光の中で」
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(多少森を焼くことになるけど……次かその次の光があるうちに吸血鬼たちを倒しきるしかない!)
取り出したハンドガンを左手に、ナイフを右手に構える。
今までは山火事を起こさないために、ナイフに宿した炎で敵本体だけを攻撃する方法を取っていた経矢だがそうも言っていられない状況だ。
炎を宿した銃弾で中距離から攻撃し、たとえ躱されたとしても相手の足場や退路を火の海にすることで、動きを制限することができる。
また、灯明ほどではないが炎の明かりによって、位置を掴むことも可能だ。
本来はそのような自然を破壊しかねない戦い方は経矢もしたくないのだが、やむを得ない。
彼が覚悟を決めたその時だった。
「キョウヤ! あたしに考えがある! いったんこっちに戻って来て!」
後方のイリーナが彼に向かって叫んだ。
夜の闇で表情は見えないが、彼に向かって大きく手を振っているのが見えた。
経矢はイリーナのその声に従い、吸血鬼たちの間を駆け抜けると彼女の元へと戻ろうとする。
「行かせると思うのかしら?」
吸血鬼たちが後ろから追いすがろうとするが、経矢はすさまじい跳躍と滑空であっという間に距離を取る。
それでもなおも追いかけようとする吸血鬼たちに向けて、イリーナが一発の銃弾……ではなく榴弾を放った。
ポンッ! という破裂音と共に、夜空一帯に眩い明かりが広がる。
経矢は背中越しにまるで朝日かと思う程の、強い光を感じていた。
「きゃあっ!」
「目、目がぁッ!」
吸血鬼たちが苦痛に悶え、のたうち回る声を背にイリーナの元を目指す経矢。
イリーナが放ったのは閃光弾だった。
灯明のような魔法では無いため、効果時間はすこぶる短いがその光量はすさまじく、今のように目くらましとしても有効だ。
そして視界を奪われてのたうち回っている吸血鬼たち1体1体に向けて、イリーナは銃弾を撃ち込むのだった。
「へへっ、あのガキどもまだやる気なのかねぇ。そんな目くらまし、ただの悪あがきでしかねぇだろうによ」
吸血鬼たちが眩い光に苦しんでいる姿を見ながら、ジャスティンは呆れたようにつぶやく。
閃光弾こそ聞いているものの、イリーナが撃ち込んだ銃弾自体はやはりダメージになっていないようだ。
「もうすぐお前らは俺の可愛い子ちゃんたちに血を吸われるんだぜぇ」
経矢とイリーナが隠れて作戦を立てているであろう場所を見ながら、彼は不気味に笑う。
笑い声が夜気を震わせた。
——その声に、寒気よりも濃い闇の気配が混じっていた。
「大丈夫か、イリーナ! さっきのは閃光弾か? ナイスタイミングだったよ」
イリーナの元へと戻った経矢は、彼女の肩を抱きながら尋ねる。
「うん、あいつらがまとまっててくれたから狙いやすかった! ……て、そんなことよりもここからのことよ!」
経矢の言葉を受け、一瞬嬉しそうにするイリーナだったが、すぐに気を取り直したように経矢の目を見る。
「キョウヤなら相手の場所さえわかれば、すぐに仕留められるよね?」
「ああ奴らは光を避けて暗闇に移動するし、今は居場所が見えてるわけじゃない。けど場所さえわかれば……」
イリーナからの問いに、経矢はそう返した。
暗闇ではさすがに吸血鬼たちが有利だ。
経矢は気配で相手の位置をある程度探ることができるが、目で相手の姿や位置、動きを捉えているわけではない。
対して吸血鬼の方は、経矢の一挙手一投足を見て動くことができる。
加えてあちらにはまだ5人程の人数の利点もあるため、攪乱や連携などは厄介極まりない。
「キョウヤ的には周囲が薄っすらと明るいよりは、相手の居場所がはっきりとわかった方が戦いやすいかな?」
考える経矢にイリーナが尋ねた。
「そうだな。さっきまでの戦いである程度地形は把握できた。イリーナの言うように周囲が明るいことよりも、相手がどこにいるのかわかるほうがやりやすい」
彼女の問いに対して、同意する経矢。
経矢の言葉を受けたイリーナは納得したようにうなずくと、ライフルの銃弾を入れ替え始める。
「もうすぐ閃光弾の効果が切れる……。そしたらキョウヤは吸血鬼たちを攻撃してくれる?……大丈夫、もう仕掛けはしてあるから!」
イリーナは経矢にそう伝えると、ジャスティンたち吸血鬼がいる方を指差す。
「あたしは残りの魔力を使って灯明弾を撃ちながら前進するね。キョウヤが吸血鬼たちを倒したら、あたしがジャスティンの隙を作ってみせる。そしたらアイツを一気に仕留めてほしいんだけど……大丈夫そうかな? あたしの残りの魔力と持ってる銃弾じゃ大した威力も期待できないし」
イリーナの作戦を聞いた経矢は、彼女の目を見てうなずく。
経矢自身の戦い方だと、この辺り一帯を火の海にしかねない。
ここは彼女の作戦に乗ろうと決めた。
「ああ、任せてくれ。ところでその仕掛けってのは……」
力強く返事をしてから、イリーナの言う仕掛けについて尋ねる経矢。
ちょうどその瞬間、辺りが再び闇に包まれた。
閃光弾の光が完全に消えたのだ。
取り出したハンドガンを左手に、ナイフを右手に構える。
今までは山火事を起こさないために、ナイフに宿した炎で敵本体だけを攻撃する方法を取っていた経矢だがそうも言っていられない状況だ。
炎を宿した銃弾で中距離から攻撃し、たとえ躱されたとしても相手の足場や退路を火の海にすることで、動きを制限することができる。
また、灯明ほどではないが炎の明かりによって、位置を掴むことも可能だ。
本来はそのような自然を破壊しかねない戦い方は経矢もしたくないのだが、やむを得ない。
彼が覚悟を決めたその時だった。
「キョウヤ! あたしに考えがある! いったんこっちに戻って来て!」
後方のイリーナが彼に向かって叫んだ。
夜の闇で表情は見えないが、彼に向かって大きく手を振っているのが見えた。
経矢はイリーナのその声に従い、吸血鬼たちの間を駆け抜けると彼女の元へと戻ろうとする。
「行かせると思うのかしら?」
吸血鬼たちが後ろから追いすがろうとするが、経矢はすさまじい跳躍と滑空であっという間に距離を取る。
それでもなおも追いかけようとする吸血鬼たちに向けて、イリーナが一発の銃弾……ではなく榴弾を放った。
ポンッ! という破裂音と共に、夜空一帯に眩い明かりが広がる。
経矢は背中越しにまるで朝日かと思う程の、強い光を感じていた。
「きゃあっ!」
「目、目がぁッ!」
吸血鬼たちが苦痛に悶え、のたうち回る声を背にイリーナの元を目指す経矢。
イリーナが放ったのは閃光弾だった。
灯明のような魔法では無いため、効果時間はすこぶる短いがその光量はすさまじく、今のように目くらましとしても有効だ。
そして視界を奪われてのたうち回っている吸血鬼たち1体1体に向けて、イリーナは銃弾を撃ち込むのだった。
「へへっ、あのガキどもまだやる気なのかねぇ。そんな目くらまし、ただの悪あがきでしかねぇだろうによ」
吸血鬼たちが眩い光に苦しんでいる姿を見ながら、ジャスティンは呆れたようにつぶやく。
閃光弾こそ聞いているものの、イリーナが撃ち込んだ銃弾自体はやはりダメージになっていないようだ。
「もうすぐお前らは俺の可愛い子ちゃんたちに血を吸われるんだぜぇ」
経矢とイリーナが隠れて作戦を立てているであろう場所を見ながら、彼は不気味に笑う。
笑い声が夜気を震わせた。
——その声に、寒気よりも濃い闇の気配が混じっていた。
「大丈夫か、イリーナ! さっきのは閃光弾か? ナイスタイミングだったよ」
イリーナの元へと戻った経矢は、彼女の肩を抱きながら尋ねる。
「うん、あいつらがまとまっててくれたから狙いやすかった! ……て、そんなことよりもここからのことよ!」
経矢の言葉を受け、一瞬嬉しそうにするイリーナだったが、すぐに気を取り直したように経矢の目を見る。
「キョウヤなら相手の場所さえわかれば、すぐに仕留められるよね?」
「ああ奴らは光を避けて暗闇に移動するし、今は居場所が見えてるわけじゃない。けど場所さえわかれば……」
イリーナからの問いに、経矢はそう返した。
暗闇ではさすがに吸血鬼たちが有利だ。
経矢は気配で相手の位置をある程度探ることができるが、目で相手の姿や位置、動きを捉えているわけではない。
対して吸血鬼の方は、経矢の一挙手一投足を見て動くことができる。
加えてあちらにはまだ5人程の人数の利点もあるため、攪乱や連携などは厄介極まりない。
「キョウヤ的には周囲が薄っすらと明るいよりは、相手の居場所がはっきりとわかった方が戦いやすいかな?」
考える経矢にイリーナが尋ねた。
「そうだな。さっきまでの戦いである程度地形は把握できた。イリーナの言うように周囲が明るいことよりも、相手がどこにいるのかわかるほうがやりやすい」
彼女の問いに対して、同意する経矢。
経矢の言葉を受けたイリーナは納得したようにうなずくと、ライフルの銃弾を入れ替え始める。
「もうすぐ閃光弾の効果が切れる……。そしたらキョウヤは吸血鬼たちを攻撃してくれる?……大丈夫、もう仕掛けはしてあるから!」
イリーナは経矢にそう伝えると、ジャスティンたち吸血鬼がいる方を指差す。
「あたしは残りの魔力を使って灯明弾を撃ちながら前進するね。キョウヤが吸血鬼たちを倒したら、あたしがジャスティンの隙を作ってみせる。そしたらアイツを一気に仕留めてほしいんだけど……大丈夫そうかな? あたしの残りの魔力と持ってる銃弾じゃ大した威力も期待できないし」
イリーナの作戦を聞いた経矢は、彼女の目を見てうなずく。
経矢自身の戦い方だと、この辺り一帯を火の海にしかねない。
ここは彼女の作戦に乗ろうと決めた。
「ああ、任せてくれ。ところでその仕掛けってのは……」
力強く返事をしてから、イリーナの言う仕掛けについて尋ねる経矢。
ちょうどその瞬間、辺りが再び闇に包まれた。
閃光弾の光が完全に消えたのだ。
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