磯田のニンニク

海野虎三郎

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磯田のニンニク

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「おい、ドジ。お前のせいで親に怒られた。」と朝から力也に5発ほど殴られた。

「僕は何もしてないよ。」と磯田春樹は言うとさらに7発蹴られ、気絶した。

近所を散歩してるおじさんに起こされ目を覚ますと、おじさんの腕時計が10時を示していて、「遅刻した」と春樹は海山中学校に走って行った。

クラスに入ると先生が授業をしていた。「すいません、気を失って起きたらこの時間で…。」
「春樹、また寝坊か、廊下に立ってなさい」
「あのー、土日の宿題…」
「やって来たなら提出して」
「忙しくて出来ませんでした」
「なに、バケツもって廊下に立ってなさい」

春樹は泣きながら廊下に立っていた。教室の涼子はそんな春樹を哀れに思った。

給食の時間、涼子の隣の席の春樹は一緒に食べていた。

「いつも力也にいじめられて、なんでやり返さないの」
「やり返したらもっとひどい事される。こわいし、」
「情けないね。」

その一言に春樹はひどく落ち込んだ。

下校中、昔から知っている農家のおじさんに会った。
「春樹、元気ないけどどうしたの。まぁ、いつものことか」
「あのー、前から思ってたんですけど、何育ててるんですか」
「これは、ニンニクだよ。君にも少しあげる。生で食べると元気でるよ、カツオの刺身とかにつけて、て何してる」

春樹は、ニンニクを生でかじっていた。
「結構辛いですね、確かに嫌な事わすれちゃった。ありがとう」と残りのニンニクをバックに入れ、春樹はスキップしながら家に帰る途中、力也にあった。

春樹は体中の力がみなぎるのを感じた。
「よお、力也。さっきは寝起きを襲いやがって。卑怯者め。」
「なんか匂う、もしかしてニンニク食った」
「うるせえ、かかってこい」
「このー」
力也は、渾身のストレートを何十発も出したが、当たらない。疲れて力也の気が緩んだ時、春樹のジャブで倒された。

「ちょろいぜ」と春樹は家に帰った。玄関には涼子が居た。
「さっきの見ちゃった。春樹君、本当は強いんだね、見直したわ。さっき、情けないなんて言ってごめんね。」
「全然気にしてないよ。それよりあの、好きです。付き合ってください」
「ん…。何か匂う、ごめんなさい」と涼子は走って帰っていった。
涼子に褒められつい調子に乗ってしまった事を後悔した。

翌朝、家を出ると力也とばったり会った。
「よお、昨日の借りを返しに来た」
「まだなぐられたいの、かかってこい」
「なにおー。」
昨日の戦いは嘘のように、春樹はボコボコに伸ばされた。
「ニンニクは食べてすぐじゃないとダメか」と春樹は嘆いた。

中学校の自分のクラスに着くと先生が授業をしていた。

「ごめんなさい、いろいろあって…。」
「春樹、今日も遅刻か。廊下に立ってなさい、と言いたいとこだがこれから実力テストだ、早くテストの準備をしなさい」
「君は毎日遅刻してるから、そうとう良い点数を取らないと成績がつけられない」
春樹は焦った。昨日夜までゲームして全然勉強していなかった。
力也に「春樹はいつも赤点だからな。」と言われた。

バックから筆記用具を取り出そうとした時、中に生ニンニクが一片入っていた。
「勉強に効くかどうか」と生でかじったら辛くて涙が出た。それを力也は見逃さず、「春樹のやつ泣いてる、こりぁ今日も赤点だな」とにやけていた。

テストが始まった。春樹の嫌いな数学のテストだった、がすらすら解けた。

6時間目のホームルームでテストが返された。
「力也、お前また赤点だ。親に電話するから」と先生に言われ力也は「うちの親は怒ると怖いんです。やめてください」と泣きついていた。

「次、春樹。良く頑張ったな。クラスで一番だ。」とテストを渡された。100点だった。

全員のテストが返し終わった後、先生が「最後の問題、実は解けたのは春樹しかいなかった。春樹、前に出てみんなに説明しなさい」と言われた。春樹は油断していた。とっくにニンニクの効果は切れている。
「えーこの問題は三平米の定理を使って、じゃなくてはさみ虫の定理かな、いや、2足す4が8だから…」
「春樹、その問題解けたのマグレか」と先生に言われ春樹は恥ずかしい思いをした。涼子は、いつもの春樹君だ、と心のどこかで良かったと安心した。

いよいよ部活の時間。春樹はバスケ部に所属している。2年の先輩に声をかけられた。
「春樹、1年のお前がなんでレギュラーメンバー様のユニホーム着てるんだ。」
「間違えました、すいません」
「ジャージに着替えて雑用しろ」
「僕も1年雑用すれば先輩みたいにレギュラーになれますか?」
同じ部活に属する力也は笑いながら、
「お前みたいな運動音痴、万年雑用だろ」と言い、先輩達も笑っていた。

春樹はカッとして力也に飛びかかろうとしたが、足をつってうずくまった。

先輩は「レギュラーになりたきゃ、せいぜいあがくんだな、まあ無駄だと思うけど」と言った。悔しい春樹は家の冷蔵庫からもって来たニンニクをパリパリと食べた。

さっそく先輩達の練習に混じった。2年と勘違いした先輩からパスをもらい、ゴールまで後3歩のところで足がもつれて転んだ。
「乾燥ニンニクじゃダメなのか」と言い、先輩を見返すために部活を抜け出しニンニク農家の家まで走っていった。

「おじさん、ニンニク頂戴」
「今収穫して手が離せない。春樹も手伝ってくれ」と言われしまいニンニクを引っこ抜いた。

しばらくして「いやー助かった。これ、うちで作った黒ニンニク。」
「ありがとう、頂きます」と食べると普通のニンニクより力が湧いてきた。
「これなら先輩を見返す事ができる、それどころか全国大会に行ける」と体育館に走って行った。

体育館に着くと先輩達が着替えていた。
「練習は?」
「もう6時だし終わりだよ、体育館の掃除よろしく。」
「先輩、僕の実力を見てほしいです」
「これから勉強しないと、明日見るから」春樹は落ち込んだ。それを見ていた力也が、「春樹、どこに行ってた。罰として体育館の掃除一人でやれ」
「そんな、1時間以上はかかるよ」
「じゃあな」

一人残された春樹は、泣きながら掃除を始めた。黒ニンニクのおかげか10分で掃除が終わった。
「せっかく黒ニンニク貰ったのに、無駄にしちゃった」と思った春樹はそのあとシュートの練習をした。忘れ物を取りに来た先輩は、春樹の一生懸命な姿を見て心を動かされたのか、何時間も春樹の練習に付き合った。
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