Fate-未来世界 機械戦記物語-

菜々瀬

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1-Revival

Awakening

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 ジョニーの攻撃により少しの時間稼ぎをしていたが、その場を切り抜ける兆しは見通しが立たない。



 テクノは更に腕を変形させて、大砲へと変わる。それは、二人にとって絶望的な展開となる事を示していた。



 大砲口から巨大な鉄球が放たれて、周辺の設備を次々と破壊していく。部品が無残にも飛散していく様子を見て、ジョニーはそれが尋常ではない殺傷能力を持っていることを悟る。



 今の二人には、ラヴァンのプログラムのインストールが完了することを待つしかない。



 ジョニーはテクノの攻撃を避けながら、電磁砲を撃ち続けて反撃を行う。しばらく奮闘しながらも、不意にテクノによる蹴りを受けたことで壁へと吹き飛ばされてしまう。



 「っ…ジョニー!!」



 ウルは名を叫ぶが、ジョニーは四肢を動かす事すらままならない。



 壁に背をもたれて、首を俯かせている。



 ジョニーは朦朧とする意識の中で、ゆっくりと顔を上げて接近する鉄拳を視界に映す。



 死を覚悟した時、彼は瞳を閉じた。



 テクノは容赦なくジョニーの身体に襲いかかった。首から下の全身を圧迫されることで臓器が破裂して血飛沫ちしぶきが舞い上がる。



 テクノが赤く染めた拳を離すと、ボディを後ろに回転させてウルを狙い定める。
 
 

 彼女はその場から身動きすらままならなくなる。



 自分が無謀な行動を取ったばかりに、ジョニーを命の危険に晒してしまった。



 その罪悪感と、死への恐怖を感じ取り身体を震わせ、涙を流す。



ー どうしよう…どうしよう…!!



 そして、テクノはウルへと近付いてくる。



 彼女は国家による侵略に対抗するため、この地に進入した。全てはかつての戦士を復活させて力を得るためだった。



 しかし、運命は変えられなかったのだ。



 ウルは徐々に悔しさによる涙を流してしまうが、そのまま彼女へとテクノの手は及ぼうとしていた。



 それでも、彼女は目を逸らさなかった。



 死を受け入れられないが、視線を向け続けていた。




 突如、視界に赤色が入る。


 赤い髪がなびいていた。



 ウルの前に突如立ちはだかり、テクノによる攻撃を片手で受け止めていた。



 そこに立っていたのは、遂に目覚めたラヴァンである。



ー インストール完了。
 テクノコードACG751-3019 
 “ラヴァン” 活動開始アクティベート



 アナウンスが終わると、ラヴァンはテクノの方へと身体を向ける。



 そのまま片腕に力を込めて、自身よりも巨大なボディを押し退けて転倒させた。



 その衝撃により床にはクラックが走り、その風圧でウルは反射的に顔を腕で覆う。

 

 千年前、ユーロフィアにおいて絶対的な力を発揮していた伝説の戦士が、再び動き始めようとしていた。



 ラヴァンによって呆気なく押し倒されたテクノは、ゆっくりと立ち上がると再びラヴァンへと攻撃を仕掛ける。



 大砲口から複数の鉄球を放つ。彼ならば、この程度の攻撃ならば容易に避けられるだろう。



 しかし、これらを避けた場合にウルにも危険が及ぶことは明らかだ。



 その時、ラヴァンは腰に掛けていた筒状の物質を取り出す。筒の先端から蛍光色のサーベル“セイントセイバー”が出現する。



 こちらを目がけて勢いよく軌道を描く鉄球に、セイバーのきっさきが触れる。すると鉄球は綺麗に真っ二つに斬られる。残骸が二人を避けて周囲に飛散していった。



 ラヴァンは相手の行動が止まった一瞬の隙を逃さない。彼はテクノに接近して、腕の関節部分にセイバーを突き刺して、引き抜くと再び距離を置く。



 屈強な武装が施された巨大な腕が、スパークを起こしながら床に落ちるていく。



 ウルはテクノを凌駕する身体能力を目の当たりにして、伝説の戦士として古くから言い伝えられる所以を思い知る。



 破壊されて動きが鈍くなりながらも、テクノはもう片方の腕を振りかざして、最期の悪あがきとして鉄槌を叩き込もうとする。



 またもや彼は腕を上にかざして難なく受け止める。テクノは上から力を込めてそのまま押し潰そうと試みるが、ラヴァンは顔色一つ変えない。



 巨体を押し倒して仰向けにさせると、ボディに飛び乗りセイバーをテクノの頭部に突き刺した。



 深く損傷したテクノのボディは煙を上げて、周囲を巻き込むように大爆発を起こした。



 これに対してラヴァンは咄嗟に右手を前にかざして、およそ3mの高さのガラス状のように薄いが、頑丈なシールドを展開することで、爆風を防いだ。



 こうして、ラヴァンの千年の時を超えた戦いは終結した。



 彼にとってはウォーミングアップにも及ばなかったようである。汗一滴も流さずに強敵を倒してしまった。これが、伝説の戦士と言い伝えられるテクノである。
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