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第一章 辺境のハロウィンパーティ
1-4.新しい、広い家
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サウザンプールは王都から見て南東に位置する、国境沿いの街だ。街の東側は国境に接しており、南側には海がある。その海の向こうには隣国が見え、古くから交易で栄えてきた。
王都から遠いため「辺境」と呼ばれているものの、街は様々な国の人や物で溢れ、住民は明るく気さくで、開放的な気風を持つことで知られている。
新しい勤務先では、学校の敷地内に職員寮があった。学校からはとても近い。赤煉瓦造りの二階建て長屋の一区画である。
(部屋が三つもある! 何を使おうかしら)
ガランとしたリビングルームの真ん中で、リズは部屋を見渡した。一階には玄関と、リビングルーム、ダイニングルームにキッチン、それから浴室。階段を上ると大きな寝室が用意されているようだ。
以前は学校から徒歩二十分ほどの繁華街にあるアパートメントの一室だった。リズはもともと、荷物が少ない。養女だから遠慮していた面もあるし、大学で専攻した地質学はフィールドワークの多い学問で、鞄一つで移動するのが習慣だったのだ。
(すぐに授業が始まるから、きちんと服の皺を伸ばしておかないと)
職業は教師だから、若い女性が好む華やかな洋服や靴も少ない……というか、ものぐさなタイプなので、平日はほぼ同じ型の、モスグリーンや紺色のシンプルなワンピースに革靴を合わせている。
(そして、一番大切なのはやっぱりこれ)
リズはスーツケースから革張りの箱を取り出した。金色の留め金を外し、そっと開いてみる。
箱の中にはアザミの花の刺繍が施された白いハンカチーフが置かれ、その上に首飾りと耳飾り、そしてブローチが置かれていた。それぞれが雫をモチーフにしたデザインで、金の台座に鮮やかな緑色の孔雀石があしらわれている。
(いつ見ても、最高にきれい)
この三つ揃えのジュエリーは、リズの母親の形見らしい。らしい、というのは、養父から聞いた話で確証が持てないということだ。物心ついた後に、リズはこのジュエリーを渡された。以来、とても大切にしている。仕事上、華美な装飾品は禁止されているが、さりげない大きさの耳飾りだけは、職場でも身につけていた。
孔雀石は深い緑色の表面に、白い縞模様が現れる鉱物である。リズのジュエリーに使われている石の色合いはなんとも幻想的で、幼い頃から胸がときめいた。もっと鉱物について、そしてそれらを生み出した地球の神秘を学びたい――そう思ったのが、大学で地質学を専攻した動機である。
リズは耳飾りをそっと身につけ、窓際へと進む。窓を開け放つと、潮の匂いが部屋へ吹き込んできた。
(海が見える!)
小高い丘の上に位置する職員寮からの景色は、絶景であった。カラフルな建物で埋め尽くされた街並みの向こうに青い海があり、遙か遠くには水平線が見渡せる。
(ここで暮らせば、嫌なことなんて全て忘れられるかも)
深く深く、息を吸う。潮の香りが肺に満ちる頃、リズは新たな生活への期待を膨らませるのだった。
王都から遠いため「辺境」と呼ばれているものの、街は様々な国の人や物で溢れ、住民は明るく気さくで、開放的な気風を持つことで知られている。
新しい勤務先では、学校の敷地内に職員寮があった。学校からはとても近い。赤煉瓦造りの二階建て長屋の一区画である。
(部屋が三つもある! 何を使おうかしら)
ガランとしたリビングルームの真ん中で、リズは部屋を見渡した。一階には玄関と、リビングルーム、ダイニングルームにキッチン、それから浴室。階段を上ると大きな寝室が用意されているようだ。
以前は学校から徒歩二十分ほどの繁華街にあるアパートメントの一室だった。リズはもともと、荷物が少ない。養女だから遠慮していた面もあるし、大学で専攻した地質学はフィールドワークの多い学問で、鞄一つで移動するのが習慣だったのだ。
(すぐに授業が始まるから、きちんと服の皺を伸ばしておかないと)
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箱の中にはアザミの花の刺繍が施された白いハンカチーフが置かれ、その上に首飾りと耳飾り、そしてブローチが置かれていた。それぞれが雫をモチーフにしたデザインで、金の台座に鮮やかな緑色の孔雀石があしらわれている。
(いつ見ても、最高にきれい)
この三つ揃えのジュエリーは、リズの母親の形見らしい。らしい、というのは、養父から聞いた話で確証が持てないということだ。物心ついた後に、リズはこのジュエリーを渡された。以来、とても大切にしている。仕事上、華美な装飾品は禁止されているが、さりげない大きさの耳飾りだけは、職場でも身につけていた。
孔雀石は深い緑色の表面に、白い縞模様が現れる鉱物である。リズのジュエリーに使われている石の色合いはなんとも幻想的で、幼い頃から胸がときめいた。もっと鉱物について、そしてそれらを生み出した地球の神秘を学びたい――そう思ったのが、大学で地質学を専攻した動機である。
リズは耳飾りをそっと身につけ、窓際へと進む。窓を開け放つと、潮の匂いが部屋へ吹き込んできた。
(海が見える!)
小高い丘の上に位置する職員寮からの景色は、絶景であった。カラフルな建物で埋め尽くされた街並みの向こうに青い海があり、遙か遠くには水平線が見渡せる。
(ここで暮らせば、嫌なことなんて全て忘れられるかも)
深く深く、息を吸う。潮の香りが肺に満ちる頃、リズは新たな生活への期待を膨らませるのだった。
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