淫らで美味しいワンコ君が、センセイの帰りを待っています! ~崖っぷちから始まる辺境女教師スローライフ~

冬島六花

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第二章 淫らで美味しい同居生活

2-1.ジャスミンティーの効能は?★

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(なぜ私は……こんな正体不明の男を……)

 自問自答しながら、リズは二つのマグカップを手にダイニングテーブルへと向かった。その先にはワンコ君――先ほど知り合ったばかりの青年が、椅子にきちんと座って待っている。帰宅したばかりで、室内の空気はまだ冷たい。マグカップの熱が、手に心地良かった。

(いきなり押し倒されるかと思ったけれど、意外とまともかもしれない)

 雰囲気に流されて、リズはワンコ君を自分の部屋へ招き入れた。パーティの夜、みんなが外出しているから、周りはシンと静まり反っている。藍色のインクを流したような夜空に、チカチカと輝く星。爪の先のような薄い月が世界を見下ろす、美しい夜であった。

「ジャスミンティーでも飲んで、少し落ち着きましょう。……そろそろ、仮面は外したら?」

 マグカップをテーブルに置き、リズはワンコ君に微笑んだ。おかしな雰囲気にならないように、気を遣う。

「分かった。……でもいいの? ジャスミンティーで」

 クスクスと小さく笑いながら、ワンコ君は仮面を外す。色白で愛くるしい顔が、リズの前に現れた。

(かっこいい子ね)

 正直、とても好みだった。いわゆる吊り橋効果――非日常ならではの補正もかかっているかもしれないが、お世辞を抜きにしても、ワンコ君の顔立ちは端整な部類である。

(だめだめっ、何を思っているのよ!)

 学校のパーティでナンパしてくるようである。雰囲気的に、十代ではないようだが――校内で知り合った得体の知れない男に惹かれるなんて、もってのほかだ。

「ジャスミンティーは嫌いなの? 落ち着くから、眠る前によく飲むの」

 ワンコ君の向かいに腰掛け、リズはカップを口へ運んだ。リズは珈琲や紅茶も嗜むが、やはり帰宅後に選ぶならカフェインの少ないハーブティーだろう。

「知らないんですか? ジャスミンティーには催淫作用があると言われています」

「……はっ? 催……淫……?」

 リズは慌ててカップを口から離した。ワンコ君は愉快そうに微笑むと、リズの手首をそっと掴む。

「そうです、催淫作用。センセイ、知らなかったんですか?」

 ワンコ君が手の甲に口付ける。

「きゃっ」

 たじろぐリズにも動じず、ワンコ君は立ち上がった。リズをグッと引き寄せて、額にキスをする。

「センセイ、ジャスミンティーが、僕にも効いてきたみたいです」

 囁きながら、ワンコ君は耳たぶを噛む。生温かい吐息が、リズを優しくくすぐった。

(この展開……今度こそ……)

 抵抗しないのを確かめると、ワンコ君はリズをソファに押し倒した。
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