淫らで美味しいワンコ君が、センセイの帰りを待っています! ~崖っぷちから始まる辺境女教師スローライフ~

冬島六花

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第二章 淫らで美味しい同居生活

2-9.ところでその仮装は何?★

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「ところで……その仮装は何?」
「仮装?」

 リズの言葉の意味が分からない様子で、テッドは聞き返した。リズにはとても不思議だった。いつの間にか彼の頭からは、フサフサとした銀色の耳が生えている。あのハロウィンパーティの夜のように、狼の仮装をしたのだろうか。

「耳のことよ」
「えっ……あ、ああっ、ごめん、何でもないんだ!」

 テッドはバババッ――! と、それはもう、見たことのない勢いでリズから身体を離した。

(えっ……今のは、何……?)

 あまりの豹変ぶりに、リズは困惑する。何かまずいことを指摘してしまったに違いない。

(でも、なんで? 仮装って他人に見せるためのものじゃないの? 指摘されて驚くって、どうして?)

 リズは訳が分からないまま、テッドを見つめた。すでに夜着は乱れて、前がはだけた状態である。リズとしても気持ちが盛り上がっていたところで、放り出されたような寂しさを感じる。
 しかしテッドはリズには構わず、リビングルームを出て浴室へと向かった。その後ろ姿には、狼の尻尾まで付いている。なんとも完璧な仮装だ。

「テッド、一体どうしたっていうのよ」
「み、見ないで。お願いだから……今日はもう寝よう。疲れたんだ」

 リズは立ち上がると部屋を出て、浴室の扉をノックし声をかけた。向こうにいるテッドは、何やら切羽詰まった様子だ。

「もしかして、具合が悪くなった? いくつかお薬は常備してあるわ。もし良ければ……」
「いいから。リズ先生、ごめん。今日はもう、寝よう……」
「わ、分かったわ」

 声には悲壮感が漂っている。よほどリズには知らせたくない事情があるのだろう。しかし、それは何なのか……? 興味は募るものの、あまり強くも言えず、リズは身を引いた。

(身体の調子が悪いなら仕方ないわよね。……言ってくれてもいいのに……)

 一人リビングルームに戻り、乱れた夜着を整える。身体はまだほんのり熱を帯びているが、気分は平静に戻っていた。

(まぁ、明日、改めて事情を確認すればいいわ)

 よく考えたら、まだ月曜日であった。明日も明後日も授業があるのだから、色恋にうつつを抜かしている場合ではない。リズは教師だ。分かりやすい授業をし、クラス運営をスムーズに行うという使命を負っている。

(あら、もう十時を過ぎているわ。……早く眠らないと)

 浴室にこもっているテッドのことは気になるが、彼がリズから身を隠したいという事情なら、深追いするのも野暮である。ここは潔く身を引くしかない。

 胸にふつふつと湧き上がる小さな疑問をギュッと抑えて、リズは明日への準備をするのだった。
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