淫らで美味しいワンコ君が、センセイの帰りを待っています! ~崖っぷちから始まる辺境女教師スローライフ~

冬島六花

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第三章 二人のクリスマス、そして

3-2.テッドのアイデア

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さて、クリスマスパーティが間近に迫った十二月のある日のこと。

「リズ先生、最近、なんだか落ち込んでない?」
「……分かる?」

 テッドが作った根菜のポトフを口に運びながら、リズは溜め息を吐いた。指摘の通り、最近は暗い表情をしていることが多い。その理由はもちろん、学校のことである。

「ごめんなさいね、クリスマスの企画がなかなか進まなくて」
「クラスのこと?」
「ええ、その通り。ほら、栗が手に入らなくて、最初の企画が頓挫したでしょう? 代替案が上手くいっていないのよ。ハンドベルの演奏をしようということにしたのだけれど、演奏が一番上手な生徒が病気で休んでしまって。本番までは、もう何日もないのに。他の生徒たちも進路選択があって忙しいし……多難だわ」

 時間をかけて煮込まれた人参とジャガイモには、テッドの愛情が感じられる。今夜はパンもあった。なんと彼がこの家で焼いたものらしい。一人暮らしを始めてから、リズはずっとパンを専門店で調達した。焼きたての手作りパンが食べられるなんて感激である。

 こうしてテッドが毎日、夕食を用意して待っていてくれるから、リズは仕事に専念できるのだ。クラスの企画で悩みを抱えている時期だからこそ、今の状況はありがたかった。

「クリスマスツリーは、もう飾ったの?」
「ツリー? たしか講堂への搬入は終わっているはずよ。講堂の真ん中への設置と飾り付けは、パーティ前日のはず」
「それなら、僕に良い考えがあるよ」
「テッド?」

 リズは目を瞬《しばたた》かせた。良い考え? それは一体、どんなものなのだろう。テッドは得意げに口角を上げて、リズを見ている。まるで人なつこい犬か狼のように。初対面の夜から、彼の印象はずっと変わらなかった。

「僕が作ったお菓子のオーナメントを、そのツリーに飾ったら? 人や動物の形のクッキーをそのまま吊してもいいし、小さな袋に入れて吊してもいい。中身が見えない方が、プレゼントっぽくなって楽しいかな?」

 手を組み歌うように楽しげに、テッドは提案する。彼はいつだって明るい。その表情に、リズは日々癒やされていた。

「すごくいいアイデアだわ! ……ただテッド、さすがにあなたにお菓子を作らせるわけにはいかない。家事をしてもらっているのだから、これ以上甘えられないもの。私がクラスのみんなと作るから、教えてちょうだい!」
「リズ先生? ……料理、できるの?」
「そ、それは……」

 身を乗り出したリズに対して、テッドは冷静だった。

「全部は無理でしょ? 一番簡単にできる、型抜きクッキーの作り方をレクチャーするね。家庭科室の設備を借りれば、数時間で作れるはずだから。もう少し凝ったお菓子は、僕が作って袋に詰めておくよ。安心して」
「ありがとう。助かります」

 頓挫しかけたクリスマス企画に、ようやく光明が差したのだ。ウンウンと、リズは首を縦に振ってテッドの案を受け入れる。彼にはいつも感謝しきりだった。なぜこんなによく出来た男が、自分と同居しているのだろう――リズには未だに疑問であった。

「それより、リズ先生……」

 テッドはリズを抱き寄せ、額についばむような口付けをした。温かい唇が頬に触れると、自然に胸は高鳴ってしまう。

「ちょ、駄目よ、テッド」
「つれないなぁ」

 向かってくるテッドを押しのける。彼は残念そうな表情でリズを見た。
 申し訳ないが、リズは今、彼を受け入れたい気持ちにはどうしてもなれなかった。

(ようやくクリスマスの見通しが立ったわ。これならきっと……やれる!)

 リズは拳を握り、唇を噛んで決意を新たにしたのだった。
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