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第三章 二人のクリスマス、そして

3-8.番(つがい)になりたい★

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(テッド……そういえば、おかしなことはいくつかあったわ)

 リズは思い出す。これまでだって、身体を重ねようと思えばいくらでも機会はあった。けれど、テッドはかたくなにそれを避けていた。途中まで良い雰囲気になったのに、突然テッドが浴室にこもってしまった日もある。――あれは、狼に変身する姿を見られたくなかったからだったというわけか。

(でも、まさか……欲情すると、狼に変身してしまうだなんて!)

「ああ。だから、これ以上は……」
「私はそんなの気にしないわ。お願い、来て」
「俺は狼族の男だ。女のうなじを噛むことで、つがいになる。そしてひとたび番となったら、一生をともにすることになる。でも、それは……」
「それは?」

 テッドはためらっていた。彼の心情は、リズにも理解できる。だって彼の今の姿は、狼そのものなのだから。
 しかし、それを差し置いても、リズはテッドと一つになりたかった。

「番になったら、君を拘束してしまう」
「……かまわないわ。私も、あなたと番になることを、望んでいるから」

 リズは自らテッドの首に手を回した。ふさふさの、銀色の体毛。狼に姿を変えた彼は、人間とは違った温かさがある。

「リズ先生。……本当に?」
「何度も聞かないで。本当よ。私はテッドと……番になりたい」
「そうか。……わかった」

 テッドはリズの意思を確認すると、服を脱がせた。――というより、大きな爪で破った。引き裂かれたワンピース。リズの白い肌が露わになる。

(テッド……!)

 獣の姿をしたテッドにのしかかられ、服を破られると、まるで乱暴にされているようでドキドキする。きめ細やかな肌は外気に触れて粟立ち、テッドの次なる行動を心待ちにしていた。

 テッドはふさふさとした獣の身体を寄せると、リズの胸を、大きな舌でペロリと舐める。
 
「っ、……や、あんっ」

 たまらず、リズは唇の間から声を漏らす。

「このくらいで感じていたら、この先は耐えられないかもよ?」
「い、言わないでよっ、テッド」

 狼の姿をしているのに妙に冷静に人の言葉を操るテッドを前に、リズは照れた。

「ここがリズ先生の感じるところだね。もっともっと、朝までしてあげる」
「ひぁっ、や、あああっ……!」

 両方の胸を代わる代わる舌で舐め上げられて、リズは悲鳴に近い喘ぎ声を上げた。

「リズ先生。これじゃまるで、僕が犯しているみたいだ……」
「き、気にしないで。そんなこと」

 リズはテッドの大きな身体の下で、絶え絶えの声で答えた。
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