チェンジ~理玖~

小鳥遊郁

文字の大きさ
4 / 16

しおりを挟む
 異世界で初めて食べた夕飯は思ってたよりずっと美味しかった。何の肉かわからないけど鶏肉のような食感の肉はニンニクのような味で付焼いてあり付け合せの野菜もドレッシングのようなものがかかってあって、これがまた実に美味いのだ。丸くて固そうなパンはこんがりトーストされて上にチーズがのせてある。噛むのが大変だけど、チーズが溶けて絶妙な味になっていた。

「まさかこんなに美味しいものが食べれるなんて思ってなかったな。これなら暮らせて行けそうだ」

 理玖は人間に一番大事な物は食事だと思っている。食のまずい世界なんて考えられない。人間は食事を美味しく食べるために働いているのだと思っているくらいだ。

「どう、うちのご飯美味しいでしょ?」

 リューリに声をかけられた。どうやらお手伝いをしているようだ。

「これはサービスよ」

 リューリはコップを差し出してきた。コップの中身は白く濁っていて、カルピスのような色だ。

「ちょうど飲み物が飲みたかったんだ。ありがとう」

 お茶のようなサービスがなかったので有難かった。リューリは一気に飲もうとして、口に入れた途端に喉が焼け付くような感覚に驚き一口しか飲み込めなかった。吹き出さなかった自分を褒めたいくらいだ。

「リューリ、これ酒じゃないか」

「うん、そうだよ。この国では夕飯食べるときはアルコールって決まってるでしょ」

 お茶が出なかったのはアルコールを飲むのが当たり前の国だからだそうだ。飲み物を何も頼まないからリューリがサービスしてくれたようだ。それにしてもこの酒はアルコール度が強すぎる。ビール位なら飲めるのに。

「ビールはないのか?」

「ビール?」

「上に白い泡が出る.....」

「なんだ、エールのことか。エールならあるわよ。持ってこようか?」

「いや、今日はこれを飲むからいいよ。明日から頼む」

「はーい」

 一気に飲まなければ大丈夫そうだ。理玖はチビチビと飲みながら周りを見る。冒険者風の男が多い。明日から冒険者になろうと思っているが、女でもなれるのだろうか? 本の世界とは違って現実なんだから、下手をすればまた命を亡くすことになる。問題はどのくらい強いかだよな。神様の話では魔法もスキルもくれると言っていたから安心していたが、筋肉隆々の冒険者達を見ていると不安に思う。この身体は手も足も細く、一応剣を腰に差しているが本当に戦えるのか。

「おい、ネーチャン、見たことない顔だな」

 うだうだと悩んでいると声をかけられた。如何にもな感じの筋肉隆々の男の集団だ。ネーチャンと言われて振り向きたくないがどう見ても周りにネーチャンらしき者は存在しない。

「俺のことか?」

「ほかにネーチャンなんていないだろう」

 男がキヒヒ下品に笑うとお仲間らしい男達もキヒヒと笑う。
 自分が強いのかどうかもわからないのに相手にしたく無いが逃げれそうに無い。どうしたものかと思っていると

「待たせたな」

と言って普通の男が目の前の椅子に座ってきた。待たせた覚えはないがここは頷いたほうが良さそうだ。

「お前が遅いから変なのに絡まれただろ」

「悪い悪い。で、こいつらなんなの?」

「知らない」

「ふーん。君達用がないんならあっちに行ってくれる? 俺たち今から大事に話をするんだ」

 どう見ても強そうにない男が雑魚でも見るような目で筋肉隆々の下品な連中に冷たい声で言う。理玖は大丈夫なのか心配になった。助けてくれてるようだがもっと強そうな男が良かった。

「なんだと~!」

 案の定男は馬鹿にされたと激昂する。だが仲間の一人が慌ててその男を止めた。

「馬鹿、よく見ろよ。ギルドのヨルダンさんだよ」

「ヨルダン...さん、し、し、失礼します」

 先ほどまでとはまるで違う人間になった子羊のような男たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。

「ははは、助けてあげたんだからしばらく付き合ってもらおうか」

 誰も助けてくれとは言ってないと言ってやりたいが、助かったのは事実だ。おまけにギルドに関係ありそうだし話くらいは聞いておこうと理玖は思った。

「そうですね。助けてくれたお礼にエール位ならおごりましょう」

 リューリにエールを二杯頼んだ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...