チェンジ~理玖~

小鳥遊郁

文字の大きさ
3 / 16

3

しおりを挟む
 中世ヨーロッパを思わせる建物。理玖はキョロキョロと見上げながら歩く。石畳の道は歩きにくく、こちらの靴と思われる皮のブーツは履き心地は良いが慣れてないので歩き辛い。
 それほど歩かない場所に『いつもの宿』があったので理玖はホッとした。とにかく早く自分の姿を確認したい。

「お母さん、お客さん連れてきたよ~」

 リューリの母親の耳は白くフサフサしている。まだ若く二十代と思われた。

「いらっしゃいませ。あたしはサラだ。用がある時はだいたいここにいるからなんでも言っとくれ。お風呂とトイレ付きで一泊銀貨4枚だ。夕食と朝食付きだと銀貨五枚になるよ」

「ちなみにお風呂とトイレ付いてないのはいくらですか?」

「あら、高そうな服着てるから風呂付きが良いのかと思ってたよ。付いてないのは三銀貨だよ。冒険者はたいていこっちだがね」

 理玖としても風呂付きの方が良いので初めから風呂があるのなら風呂付きを考えていたが、稼ぐことが出来なくなった時の為に相場が知りたかったのだ。この世界に風呂が存在していた事に感謝したい。きっとあの少女もホッとしているだろう。

「風呂トイレ付きの食事付きで五泊だ」

 理玖は鞄に財布があるのはなんとなく感じていたので財布を出す。財布は理玖が今まで使っといたのとは全く違うただの袋で紐で結ぶ簡単な造りだった。

「なんだい、やっぱり風呂付きかい。銀貨二十五枚だね。白銀貨二枚と銀貨五枚でもいいよ」

 どうやら白銀貨一枚が銀貨10枚になるようだ。こういう基礎的な事も調べておかないと騙されるなと理玖は思った。財布から金貨一枚を出して渡した。白銀貨より金貨の方が高そうだからお釣りがいくら貰えるか確かめるためだ。お釣りは白銀貨七枚と銀貨五枚だから、金貨は白銀貨十枚になる。理玖は財布にお釣りを入れながら当分は頭で考えながらお金を使わないといけない事に顔を顰めた。

「二階の角の『すみれ』だよ。部屋の掃除とシーツ替えは昼間にやるからね。貴重品は自分で管理しとくれよ。部屋の掃除がいらない時も朝のうちに言っとくれ」

 持ち物は基本的に部屋に置いとかない方が良いという事だろう。部屋の掃除は有難いが宿屋はどうしても自分の居場所って感じがしない。早めにお金を貯めて部屋を借りないと息が詰まりそうだ。
 理玖が宿帳にイバタリクと書くと

「イバタリク様ですね」

と言われた。理玖はずっとフルネームで呼ばれるのは嫌なので

「リクと読んでください」

と言った。

「リク様、これが鍵になる。無くすと白銀貨二枚かかるから外出する時はここに預けることだね」
 
「はい、気をつけます」

 
 ベッドとタンスがあるだけで実に殺風景な部屋だった。鏡も三十センチくらいで全身像は見れそうもない。それでも理玖は真っ先に鏡へと向かう。

 「あ~」

 ピンクの髪に赤い瞳。彫りの深い顔。だがかすかに花奈の面影がある事に理玖は気付いた。
 
(神様が間違えたのか? それともこれは俺への罰なのか? 花奈さんを死なせたことへの罰。その事をいつでも思い出せるように花奈さんとよく似た顔にしたのか? でも女の姿にする必要があるのだろうか?)

 リューリが夕飯だと呼びに来てくれるまで理玖は頭を抱えて考え続けていた。

 












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

処理中です...