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8月 4
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祖父ちゃんにかぶと虫の育て方を聞いてみたら、土や餌を取り換えるだけじゃ駄目なのかと逆に問い返された。祖父ちゃんが子供の頃は、かぶと虫は夜になると街灯の周りにうじゃうじゃ飛んできていたので、珍しい物でもわざわざ店で買う物でもなかったそうだ。
だから捕まえたかぶと虫は虫かごに入れておいたり、おがくずを敷いた菓子箱の中に入れておいたらしい。ただ箱の場合空気穴を開けた蓋を被せてしまうので、当然かぶと虫の様子は見えない。
「夜に蓋を開けておけば、電気に向かって飛びまくるぞ」
ワイルドだな祖父ちゃん。それは単に逃げ出していただけなのでは。でもそういうわけで仏間のかぶと虫はスイカを食べ続けているので、とりあえず昆虫ゼリーだけでも用意してやろうと思った。
「で? どこに買いに行くんださ?」
俺のベッドを背に座っているかぶとが、だらんと手足を伸ばした格好で言った。気のせいかいつもより元気がない。
具合が悪いのかと訊ねたら、夏バテ気味なんださと力なく答えた。かぶと虫は夏に弱いという話に説得力が出たと解釈する俺は、もはや救いがない。
「通販で頼むつもりだったんだけど」
かぶとの隣に並んで膝を抱える。世の中便利だ。家にいながら買物ができる。しかし俺は荷物を届けられたときのことを全く考えていなかった。配達日や時間は家族の留守に指定できても、受け取るのだけは自分がやらなくてはならない。そうじゃなくてもまもなくお盆を迎えるので、このところ我が家は人の出入りが多くなっている。そろそろ両親の仕事も休みになる頃だ。そこに荷物を届けられるとちょっと塩梅が悪い。
「やっぱり人に会いたくないんださ?」
「まぁね」
冬眠生活を送っておいて何だが、俺は特別人間嫌いなわけではないし、外の世界をシャットアウトしたいわけでもない。けれど不特定多数の人に面白おかしく話題にされたり、興味本位で詮索されるのはご免被りたい。
「じゃあかぶと虫の世話はできないんださ」
真顔でかぶとがきっぱりと言う。
「どうして」
「葉は人に会わないで済むときだけ面倒を見たいんださ? かぶと虫の餌が無くなっても、誰かがいたら放置するんださ? だったら初めから手をかけては駄目なんださ」
都合が良すぎるとかぶとは唇を引き結んだ。
「冬眠したいならずっとしていればいいんださ。葉はそれでも生きていけるんださ」
久しぶりにもの凄く腹が立った。そんな言い方することないじゃないか。お前に俺の何が分かるんだよ。でもそう怒鳴りたかったのにできなかったのは、たぶんかぶとの言葉が正しいことを自覚しているから。そして何故か「かぶと虫は冬眠しない」ということが脳裏に浮かんだから。
だから捕まえたかぶと虫は虫かごに入れておいたり、おがくずを敷いた菓子箱の中に入れておいたらしい。ただ箱の場合空気穴を開けた蓋を被せてしまうので、当然かぶと虫の様子は見えない。
「夜に蓋を開けておけば、電気に向かって飛びまくるぞ」
ワイルドだな祖父ちゃん。それは単に逃げ出していただけなのでは。でもそういうわけで仏間のかぶと虫はスイカを食べ続けているので、とりあえず昆虫ゼリーだけでも用意してやろうと思った。
「で? どこに買いに行くんださ?」
俺のベッドを背に座っているかぶとが、だらんと手足を伸ばした格好で言った。気のせいかいつもより元気がない。
具合が悪いのかと訊ねたら、夏バテ気味なんださと力なく答えた。かぶと虫は夏に弱いという話に説得力が出たと解釈する俺は、もはや救いがない。
「通販で頼むつもりだったんだけど」
かぶとの隣に並んで膝を抱える。世の中便利だ。家にいながら買物ができる。しかし俺は荷物を届けられたときのことを全く考えていなかった。配達日や時間は家族の留守に指定できても、受け取るのだけは自分がやらなくてはならない。そうじゃなくてもまもなくお盆を迎えるので、このところ我が家は人の出入りが多くなっている。そろそろ両親の仕事も休みになる頃だ。そこに荷物を届けられるとちょっと塩梅が悪い。
「やっぱり人に会いたくないんださ?」
「まぁね」
冬眠生活を送っておいて何だが、俺は特別人間嫌いなわけではないし、外の世界をシャットアウトしたいわけでもない。けれど不特定多数の人に面白おかしく話題にされたり、興味本位で詮索されるのはご免被りたい。
「じゃあかぶと虫の世話はできないんださ」
真顔でかぶとがきっぱりと言う。
「どうして」
「葉は人に会わないで済むときだけ面倒を見たいんださ? かぶと虫の餌が無くなっても、誰かがいたら放置するんださ? だったら初めから手をかけては駄目なんださ」
都合が良すぎるとかぶとは唇を引き結んだ。
「冬眠したいならずっとしていればいいんださ。葉はそれでも生きていけるんださ」
久しぶりにもの凄く腹が立った。そんな言い方することないじゃないか。お前に俺の何が分かるんだよ。でもそう怒鳴りたかったのにできなかったのは、たぶんかぶとの言葉が正しいことを自覚しているから。そして何故か「かぶと虫は冬眠しない」ということが脳裏に浮かんだから。
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