相棒はかぶと虫

文月 青

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12月 7

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周囲の騒めきが消えたような気がした。自転車のハンドルを握ったままの友達と、呆然と立ち尽くす元カノ。繋げる言葉もなく黙り込む同級生三人を、やはり無言で見守る五人のサンタクロース。

「ええい、沈まれい」

いきなり口を開いたのはしおり祖母ちゃんだった。まさかと思ったら腕のあたりをごそごそやって、例の印籠もどきを翳している。というかそもそもこの場だけ静かなんだけどね?

「この紋所が目に入らぬか」

ぽかんとする友達と元カノを尻目に、一気にげらげら笑い出すサンタ五人衆。俺も何だかおかしくなってふっと息を吐いた。

「しおり祖母ちゃんはご老公様じゃなかったの?」

「ありゃ? そう言えばそうだったんださ」

素に戻ったしおり祖母ちゃんが勝手にほっほっほと締めくくる。うん。きっと俺のピンチを救おうとしてくれたんだよね。相手は悪代官じゃないけれど。

「久しぶり」

俺は自分から二人に近づいた。かぶと以外のサンタはそれぞれの持ち場に散らばってゆく。

「元気だった?」

明るく訊ねたつもりだったけれど、友達は唇を半ば開いては閉じるのを繰り返し、答えを返せないでいる。やがて意を決したように頭を下げたので、俺は彼の言おうとしていることを咄嗟に遮った。

「謝るのはなしだよ」

驚いて顔を上げる友達。隣りの元カノも目を見開いている。

「俺が引きこもっていたのは、お前らのせいじゃないから。あくまで俺の都合だから」

「でも」

「別れないでいてくれて、ありがとな。お前らが駄目になっていたら、俺今頃こうして笑っていられなかったよ」

堪え切れなくなったのか、元カノはぽろぽろ涙を零してはごめんなさいと繰り返した。友達も再び頭を下げる。二人とも俺のせいでずっと責任を感じていたのだろう。

「それより俺、酒屋さんの前で料理に挑戦してるから、良かったら食べに来て」

謝る代わりに明るく誘いをかけると、友達と元カノはよほど意外だったのか、一瞬きょとんとした後にようやく笑みを浮かべた。

「必ず」

そう約束して寄り添いながら去ってゆく。やっと一仕事終えたような、肩の荷を下ろしたような、不思議な安堵感が心を満たした。

「可愛い子だったね」

ふいに俺の腕に抱き着いたかぶとがぷーっと頬っぺたを膨らます。だから密着し過ぎだって。

「あんまりくっつくなよ、かぶと。俺だって一応男なんだからな?」

危機回避の注意を促した筈なのに、かぶとは何故かめちゃくちゃ可愛いく微笑んで更にきつく抱き着いた。女心は複雑でさっぱり分からない。

「おーい、サンちゃん。始めるぞ」

酒屋のおじさんの声に俺とかぶとは視線を合わせて同時に頷いた。

「行こう」

かぶとに差し出された手に自分の手を重ね、俺は待ってくれているサンタ達の元へと急いだ。


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