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本編
お見合い以前
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お前は! とでも言いたげな顔で、目の前の人物は私を指差した。一応記憶に残っていたんだと感心しながら、私は丁寧にお辞儀をする。
「お久しぶりです」
地方都市の駅に隣接されたホテルのロビーで、彼は不愉快さを隠さずに小声で責める。
「先週会った筈だが」
正にその通り。ただの酔っ払いでないところはさすがです。でも私も嘘はついていません。
「ところで、どうして」
ここにいるのか、と訊ねようとしたのだろうか。でもそう続ける前に、彼の言葉は賑やかな声に遮られた。
「よかった。ちゃんと来たのね、孝之」
いつもより着飾った彼の母親が歩み寄ってくる。
「やだ、何その格好」
いかにも仕事帰りといった、少しこなれたスーツがお気に召さなかったらしい。思いっきり渋面を作った。
「見合いの日取りをいきなりメールで送ってきて、それはないだろう。しかも相手が咲だなんて」
「あら、結衣ちゃんが知らせにいったでしょ?」
「結衣ちゃん?」
彼と母親が同時に首を傾げたところで、今度は別の女性が割り込んだ。
「遅れてごめんなさいね」
こちらも明らかに気張った出で立ちだ。二人とも主役が誰か忘れている。
「田坂のおばさん?」
一人で現れた女性に不思議そうに洩らした彼が、ふとこちらに視線を移した。私はとりあえずワンピースの皺を直し、もう一度頭を下げた。
「お久しぶりです。田坂結衣です」
驚愕に目を見開く彼ーー富沢孝之の姿に、私はにっこりと笑み零した。
ホテルのレストランに移動してからも、飲んでは喋り食べては喋りを繰り返す母親達に、孝之さんは根気よく事のあらましを確認していた。
「要するに結衣ちゃんとの見合いに変更したと」
呑気に食事を楽しむ私をよそに、疲れて嘆息する孝之さん。無理もない。まず顔を見ない日なんてないのに、数年振りに同窓会で再会した旧友のような状態の二人から、まともな情報を引き出すのは至難の業だ。
「だから結衣ちゃんから全部聞いてるでしょ」
仕方なくナイフとフォークを手にしたものの、孝之さんは意味ありげに私を窺う。
そう。私と孝之さんの家はお向かいさんで、私達はいわゆる幼馴染。といっても孝之さんは三十二歳の立派な社会人、私は二十歳の短大生で、その年齢差から一緒に遊んだことは殆どない。しかも孝之さんは大学入学を機に家を出たきり、滅多に帰省しなかったので、最後に会ったのが小学一年生のとき。成人した私とはむしろ初対面に近い。
なのにどうしてこの形ばかりのお見合いがセッティングされたかというと、全て幼馴染の胸きゅんな恋愛を夢見ていた母親達が原因である。富沢家は男ばかりの三兄弟、田坂家は女ばかりの三姉妹。これを全員結婚させようと大っぴらに目論んでいたわけなのだ。
ところが富沢家の次男と我が家の長女は既に幼馴染み以外の人と縁を結び、三男の悟と三女の私は同い年で仲良しながら、兄妹以上にも以下にもなれずに見事に期待を裏切った。幸い長男の孝之さんと次女の咲姉がつきあったおかげで、母親達は何とか満足してくれていたのだけれど。
実は三ヶ月前に破局してしまったこの二人。六歳の年齢差や遠距離など問題は多々あったようで、嫌いではないからこそ両者納得の上で幼馴染に戻ることにしたらしい。夢が潰えた母親達は気の毒なくらいしょんぼり。ただこれで大人しくなるかといったらそうは問屋が卸さず、
「もう一人余っているじゃない!」
余り物を娶せる考えに辿り着くなり、あっというまにこの席が用意される運びとなった。
「見合いなど必要ないだろう」
年齢的には一番不釣り合いなカップリングだし、そもそも顔合わせなんて今更だし家でも充分。父親達はもっともな意見を述べたが、母親達は胸元で拳を握り合わせてはしゃぐだけ。
「やってみたかったの!」
もはや二人の暴走を止められる者はおらず、父親達は頭を抱え、責任を感じた咲姉は日々私に謝ってくる始末。
「姉ちゃんとつきあっていた人と結婚すんだよ? 微妙じゃね?」
悟はむしろ別のことが気になったようだが、当の私は母親達の行動は予想範囲内だったし、お向かいの鼻たれ小僧だった私を、大人の孝之さんが本気で相手にするとは思えなかったので、美味しい食事を堪能しよう程度の気持ちでお見合いを了承したのだ。
実際咲姉はともかく、孝之さんは未練があったみたいだから。
「あとは若い二人でね。あぁ、孝之は若くないけど」
「じゃあね、結衣。ゆっくりしてらっしゃい」
非日常を満喫した母親達は、結婚式はいつ頃がいいかしらと、纏まってもいない話で盛り上がりつつ、これまた勝手に帰ってゆく。
「ちゃんと説明してもらおうか、結衣ちゃん」
残された若くない男に凄まれ、同じく残された若い私は、せめてデザートを食べてからにしてと条件をつけて頷いた。
「簡単にどこぞのおじさんに着いていっては駄目だぞ」
お見合い会場のホテルの一室に入って、窓際の席に向かい合うなり、眉を顰めた孝之さんに咎められた。自分も連れ込んでいるじゃないかと返しそうになり、いや今回は私を慮った行動だったなと思い出して口を噤む。
約束通り私がデザートと食後のコーヒーを堪能するのを待って、先週の出来事について問い質そうとした孝之さんは、レストラン内をさっと見回してから場所の移動を提案してきた。地元とはいえ彼はこの地を離れて久しいが、実家暮らしの私にとっては現在も生活圏。話が話だけに万が一誰かに聞かれぬよう配慮してくれたらしい。
ただいざ場所を変えようにも二人きりになれる所なんて早々なく、カラオケじゃ落ち着かないし、孝之さんのアパートはここから車で二時間近くかかる。だから私から言ったのだ。
「このホテルの部屋でいいですよ」
孝之さんは身に覚えがあるせいか、信じられないという表情で断固反対した。そもそも一緒に入室する姿を目撃されたら元も子もない。
「大丈夫です。とりあえず知人は見当たりませんから」
結局他に当てがあるわけでもなく、私に押し切られる形で不本意ながらも孝之さんが折れた。
さすがにシングルじゃ拙いと判断したのだろうか。話をするためだけに借りたツインルームは、シンプルながら居心地の良い造りで、代金も勿体ないし一人で泊まっていっちゃ駄目かなと思考を飛ばしていたら、わざとらしい咳払いが一つ耳に届いた。
十一月にしては気温が高めの日が続き、窓から見える街路樹の紅葉も中途半端になっている。そんな穏やかな土曜日の午後、休日出勤の仕事を切り上げて母親の呼び出しに応じた孝之さんにしてみれば、面倒なことはさっさと済ませて戻りたいに違いない。
「うちに来たのは見合いの話をするためだったのか?」
率直に切り出された私は素直に認めた。
「はい。おばさんについでだから様子を見てきてと頼まれて」
母親達から唐突に無謀なお見合いを突き付けられたのは、先週の金曜日の夕方だった。そのとき富沢のおばさんから、
「いくら電話をしてもメールを送っても孝之から返事がないのよ。しかもお見合い相手の名前を間違えて咲ちゃんにしてしまって。よければ結衣ちゃんから訂正しておいてくれない?」
いかにもこじつけといったお願いをされ、孝之さんのアパートの住所と交通費を押し付けられたのだ。そしてそのまま孝之さんに連絡しておくからと新幹線で送り出された。
おばさんの魂胆は分かっている。ずっと離れていた幼馴染の二人が再会してあーれー、つまりあわよくば既成事実を作らせたいのだ。そうでなければまもなく夜を迎えるのに、わざわざ一人暮らしの息子の元に私を行かせはしないだろう。当然うちの母も加担している。
どんな媒体から情報を仕入れているのか知らないが、そもそも孝之さんが好きだった咲姉と私は全く似ていないので、間違いなんてそれこそ間違っても起きようがないのである。頼むからもうちょっとましなシナリオを書いてほしい。
孝之さんの部屋を訪ねたのは七時を過ぎた頃だった。おばさんの連絡云々は正直怪しいし、子供の頃会ったきりの私が急に現れても正直対応に困るだろう。もしかしたら仕事中という可能性もある。だから留守だったら詳細を記したメモを置いて帰るつもりだった。
「どちら様?」
チャイムを鳴らしてずいぶん経ってから、誰何する男の人のがらがら声がした。
「田坂です」
下の名前を告げても分からないだろうと、馴染みのある名字を名乗ったことが仇になったのだと今なら思う。
「入って」
孝之さんは私を確かめもせずに鍵だけを外した。奥に引っ込んでで行く気配に従って、お邪魔しますと断ってドアを開ける。恐る恐る進むとすぐにリビングが広がり、そこにある大きなソファにスーツを着た孝之さんが伏せっていた。横のテーブルにはお酒の缶が転がっている。
抱えているプロジェクトが暗礁に乗り上げたのか、はたまた失恋の後遺症か、これはいわゆるやけ酒というものではなかろうか。
大人の男のこうした姿を間近にしたのはもちろん、「咲姉の彼氏」としての孝之さんに対面するのもある意味初めてだったので、私は好奇心が刺激されてついまじまじと彼を眺めてしまった。昔「孝ちゃん」と呼んでいた頃の面影が宿った顔、苦しそうに顰められた眉、呼吸する度上下する喉元、捲られた袖から覗くがっしりした腕。
「孝之さん」
意識は既に朦朧としているのか瞼は降りたままびくともしない。本人を前にして手ぶらで帰るのもなぁと繰り返し名前を呼んでみる。
「孝之さん」
やはり反応がなかった。こうして待っていても起きる保証はないし、新幹線の時間も迫ってくる。酔っぱらっても格好いい人は貴重で名残惜しい気もするが、とりあえず観察はここで止めて、私はお見合い相手の名前を訂正するというお使いを果たすため、伝言を書くべく孝之さんに背を向けた。
顔はともかく後ろ姿は似ていたのかもしれない。一文字目を記すことなく私はいきなり力強い腕の中に囲われた。
「孝之さん?」
問いかけても答えはない。微かな息遣いだけがやけに耳に響く。そこからはあれよあれよという間に…。
「やってしまったわけだ」
孝之さんが大きく息をつく。節操のない表現ではあるが、動揺はしていないので記憶の擦り合わせをしているのだろう。
「計らずも富沢のおばさんの期待に応えてしまった次第です」
最終の新幹線に乗れなかった私は、結局孝之さんの部屋で夜を明かしたのだが、もちろんその事実は母親達には申告していない。
「何故黙って消えた?」
翌朝私は孝之さんが眠っている間にアパートを後にした。母親達には孝之さんには会えなかったから、高校時代の友人の家に遊びに行ったと白々しい嘘をついた。私が「田坂結衣」だと気づかなかった孝之さんのお陰で、おかしなことに無茶なアリバイは完成した。
「お見合いが決まっていたから、気まずくなるかと思って」
二人の身に起こった事実はともかく、孝之さんが私を憶えていたなんてさっき再会するまで想像もしていなかった。空っとぼけてお見合いに臨むつもりだっただけに、先週会った筈だと言われたときは本気で驚いたものだ。
「それに咲姉と勘違いしてたでしょ?」
孝之さんはぐっと言葉に詰まった。私は苦笑する。
「責めてるんじゃないですよ」
「田坂結衣」ではない私を認識していたこと、その上で知らん振りも言い逃れもしなかったこと。今こうしてあの夜について真摯に向き合ってくれていること。やってしまったことは人として褒められたことではないかもしれないけれど、私はそんな孝之さんにむしろ潔さを感じている。
それに孝之さんは決して無理強いしたわけじゃない。事に及べたのが不思議なくらい、逃げ出す隙はいくらでもあった。たぶん本気で嫌がったらやめる意思はあったのだ。そして私は逃げなかった。つまり。
「同意の上、です」
笑顔で断言した私に孝之さんはただ息を呑んだ。
怒涛のお見合いから一か月が過ぎた。街はクリスマスムード真っ盛り。ホテルの窓から見えた街路樹も葉っぱがすっかり落ちて寒そうだ。あれから孝之さんとは会っていない。母親達は何の連絡もしてこない孝之さんに業を煮やしていたけれど、私はむしろこれで良かったと思っている。
済まないとお詫びを口にして先にホテルを出た孝之さん。それが想像以上に堪えて、一人残された部屋に泊まることができなかった。
「一目惚れしちゃったんだろうなぁ」
きっと孝之さんの部屋を訪れた日に。そして同時に失恋も。少しでも可能性があるなら頑張るけれど、孝之さんには咲姉との大切な三年の時間があるから、私はその咲姉の妹だから、きっとこの想いは叶わない。謝罪の対象としてはせめてこの先、孝之さんが謂れのない責を負わないでくれることを祈るのみ。
「酔っぱらっても格好いいなんて反則だよね」
買物を終えて駅のロータリーでふーっとため息をついたとき、タイミングよくクラクションが鳴った。迎えを頼んでいた悟かと視線を投げたら、見知らぬ車がゆっくり近づいてきた。
「乗って」
静かに下がった窓ガラスの奥から現れたのは、ちょうど脳裏に浮かんでいた孝之さんだった。また仕事の合間を抜けてきたのだろうか。懲りずにスーツ姿である。
「どうして?」
滅多に帰省しない人が何故また戻っているのかを訊ねたつもりだったのに、孝之さんは悟の代わりに迎えに来たと言って強引に私を車に引き入れた。実家に着いたらちょうど悟と鉢合わせたのだそうだ。
車はスムーズに発進し、賑わう土曜日の午後の街並みを走る。どうでもいいけれど、簡単にどこぞのおじさんに着いていくなと釘を刺したのは、確か貴方ではなかったでしょうか。
「ずっと放っておいて済まなかったね」
まるで彼女にでも謝るみたいに、さらりと嫌な言葉を使う孝之さん。
「意味が分かりません。それよりその済まない、やめて下さい。前に別れ際にも言われましたが」
かなり虫唾が走る、はさすがに黙っておいた。慣れた手つきでハンドルを操る孝之さんは、一瞬眉間に皺を寄せたものの、すぐに何のことか理解したようで、困ったように頬っぺたを掻いた。
「意味が違うんだけど」
赤信号で停車するなり、首を傾げる私に何故か意地悪げに笑む。
「前に結衣ちゃんが、自分と咲を勘違いしてるって指摘したことあっただろ?」
また嫌な話題を振ってくる。それは紛れもなく、私と孝之さんが過ちを犯した日のことを指したものだ。
「実はあのとき、途中で別人だと気づいてた」
孝之さんがわざとらしく耳元で低く囁く。
「初めてだっただろ、結衣ちゃん」
私は瞬間湯沸かし器なみに沸騰した。そういうことは事実でも伏せておくのが礼儀でしょうに。
「くそおやじ」
涙目で罵る私に孝之さんはふっと口元を緩めた。
「うん。初めての子に優しくしてやれなくて、酷いおじさんだったよな。だから済まない」
私が勝手に解釈していたものとは違う、労わりに満ちた謝罪。
「さすがに酔いは吹っ飛んだのに、結局止めてやれなかったし」
ばつが悪そうに呟いたところで、信号は再び青になり、孝之さんは静かに車を滑らせた。助手席にいて無駄に体が揺れないのは、きっと運転が上手いからなのだろう。
「ところでうちとは反対方向に行ってませんか?」
薄闇に包まれ始めた窓の外を、見慣れない景色が流れている。
「あぁ、俺のアパートに向かってる」
驚いて私は勢いよく運転席を振り返った。
「母達にけしかけられたの?」
「いや。この一ヶ月、いろいろ考えてみた結果」
前方を睨んだまま怒るなよ? と孝之さんは続ける。
「正直抱きごごちが良かったというか、何かしっくりくるものはあってさ」
体中真っ赤に染まった私は、すかさずエロおやじと口を挟む。
「だから目が覚めていなくなっていたのには、ちょっとショックだったし、再会してそれが結衣ちゃんだと知ったときは更に驚いた」
「それで」
デリカシーの欠片もないおじさんに、半ば不貞腐れて先を促す。
「咲のこととか年齢とか、要するに体裁や建前なんかを全部取っ払ってみたわけ。そうして最後に残ったものが」
「が?」
「俺とのことは同意の上だときっぱり言い切った、強かな女の子にもう一度会いたい。そんなおじさんらしからぬ気持ちだったんだよ」
あまりにも予想外の告白に私はぽかんと口を開けた。ついでに鳥もびっくりするくらいの速さで瞬きをする。でもすぐに我に返った。だって孝之さんは咲姉に未練がある。名字を聞いただけで、無条件に私を部屋に招く程には。おそらく近所の子供に手を出した責任が、こんな行動を取らせているのだろう。
すーっと息を吸って軽く片足を上げる。
「良心の呵責に耐えかねて口走っているなら、蹴っ飛ばしますよ」
私の脅しに孝之さんはぷっと吹き出した。ひとしきり笑った後に、柔らかな表情で続ける。
「咲とは穏やかな関係だったよ」
唐突に語られ始めた咲姉との過去に、ほんの少し心拍数が上がる。
「でもいつからかそれを壊さないように、お互いに気を使い過ぎていた」
相手を思えばこそ、一緒にいるために無理を重ねて我慢して、なのに最後には一緒にいても疲弊するだけの二人になっていた。
孝之さんはそう繋げたけれど、私には抽象的で難しい。
カーブの少ないなだらかな道を、対向車の眩いライトが通りすがりに照らしてゆく。もうすっかり日が暮れた。
「だったら我慢しないで、何度でも叩き壊して、新たに積み上げればいいんじゃないですか」
子供には分からない世界ですけど、と肩をすくめる。孝之さんは満足そうに頷いた。
「たぶんそんな結衣ちゃんだから、仕切り直ししたくなったんだよ」
増えてきた明かりを追うように、車は徐々に住宅地に入った。寒い夜に暖かな色が灯る。
「まだ恋愛感情かどうかはっきりしないけど」
「ということは、ひとまずお友達ですね」
「ちょっと待った。そこまで健全でなくても」
急に焦りだした孝之さんに、帰りは新幹線にしますね、と真顔で嘯いたら、
「参っちゃうよな。悟とその辺を転げ回っていた鼻たれガキに落ちるなんて」
悔しそうに唇を噛み、やがて私の頭をぽんぽんと撫でながら破顔した。
富沢家から正式におつきあいの申し込みがあったのは、何故か年の瀬も押し迫った大晦日。
「本人達に任せればいいだろう」
父親達の忠告は聞き流し、次は結納の日取りを決めなきゃと騒ぐ一方、咲姉と悟のお見合いを画策する母親達に、家族は新年早々うな垂れている。
「お久しぶりです」
地方都市の駅に隣接されたホテルのロビーで、彼は不愉快さを隠さずに小声で責める。
「先週会った筈だが」
正にその通り。ただの酔っ払いでないところはさすがです。でも私も嘘はついていません。
「ところで、どうして」
ここにいるのか、と訊ねようとしたのだろうか。でもそう続ける前に、彼の言葉は賑やかな声に遮られた。
「よかった。ちゃんと来たのね、孝之」
いつもより着飾った彼の母親が歩み寄ってくる。
「やだ、何その格好」
いかにも仕事帰りといった、少しこなれたスーツがお気に召さなかったらしい。思いっきり渋面を作った。
「見合いの日取りをいきなりメールで送ってきて、それはないだろう。しかも相手が咲だなんて」
「あら、結衣ちゃんが知らせにいったでしょ?」
「結衣ちゃん?」
彼と母親が同時に首を傾げたところで、今度は別の女性が割り込んだ。
「遅れてごめんなさいね」
こちらも明らかに気張った出で立ちだ。二人とも主役が誰か忘れている。
「田坂のおばさん?」
一人で現れた女性に不思議そうに洩らした彼が、ふとこちらに視線を移した。私はとりあえずワンピースの皺を直し、もう一度頭を下げた。
「お久しぶりです。田坂結衣です」
驚愕に目を見開く彼ーー富沢孝之の姿に、私はにっこりと笑み零した。
ホテルのレストランに移動してからも、飲んでは喋り食べては喋りを繰り返す母親達に、孝之さんは根気よく事のあらましを確認していた。
「要するに結衣ちゃんとの見合いに変更したと」
呑気に食事を楽しむ私をよそに、疲れて嘆息する孝之さん。無理もない。まず顔を見ない日なんてないのに、数年振りに同窓会で再会した旧友のような状態の二人から、まともな情報を引き出すのは至難の業だ。
「だから結衣ちゃんから全部聞いてるでしょ」
仕方なくナイフとフォークを手にしたものの、孝之さんは意味ありげに私を窺う。
そう。私と孝之さんの家はお向かいさんで、私達はいわゆる幼馴染。といっても孝之さんは三十二歳の立派な社会人、私は二十歳の短大生で、その年齢差から一緒に遊んだことは殆どない。しかも孝之さんは大学入学を機に家を出たきり、滅多に帰省しなかったので、最後に会ったのが小学一年生のとき。成人した私とはむしろ初対面に近い。
なのにどうしてこの形ばかりのお見合いがセッティングされたかというと、全て幼馴染の胸きゅんな恋愛を夢見ていた母親達が原因である。富沢家は男ばかりの三兄弟、田坂家は女ばかりの三姉妹。これを全員結婚させようと大っぴらに目論んでいたわけなのだ。
ところが富沢家の次男と我が家の長女は既に幼馴染み以外の人と縁を結び、三男の悟と三女の私は同い年で仲良しながら、兄妹以上にも以下にもなれずに見事に期待を裏切った。幸い長男の孝之さんと次女の咲姉がつきあったおかげで、母親達は何とか満足してくれていたのだけれど。
実は三ヶ月前に破局してしまったこの二人。六歳の年齢差や遠距離など問題は多々あったようで、嫌いではないからこそ両者納得の上で幼馴染に戻ることにしたらしい。夢が潰えた母親達は気の毒なくらいしょんぼり。ただこれで大人しくなるかといったらそうは問屋が卸さず、
「もう一人余っているじゃない!」
余り物を娶せる考えに辿り着くなり、あっというまにこの席が用意される運びとなった。
「見合いなど必要ないだろう」
年齢的には一番不釣り合いなカップリングだし、そもそも顔合わせなんて今更だし家でも充分。父親達はもっともな意見を述べたが、母親達は胸元で拳を握り合わせてはしゃぐだけ。
「やってみたかったの!」
もはや二人の暴走を止められる者はおらず、父親達は頭を抱え、責任を感じた咲姉は日々私に謝ってくる始末。
「姉ちゃんとつきあっていた人と結婚すんだよ? 微妙じゃね?」
悟はむしろ別のことが気になったようだが、当の私は母親達の行動は予想範囲内だったし、お向かいの鼻たれ小僧だった私を、大人の孝之さんが本気で相手にするとは思えなかったので、美味しい食事を堪能しよう程度の気持ちでお見合いを了承したのだ。
実際咲姉はともかく、孝之さんは未練があったみたいだから。
「あとは若い二人でね。あぁ、孝之は若くないけど」
「じゃあね、結衣。ゆっくりしてらっしゃい」
非日常を満喫した母親達は、結婚式はいつ頃がいいかしらと、纏まってもいない話で盛り上がりつつ、これまた勝手に帰ってゆく。
「ちゃんと説明してもらおうか、結衣ちゃん」
残された若くない男に凄まれ、同じく残された若い私は、せめてデザートを食べてからにしてと条件をつけて頷いた。
「簡単にどこぞのおじさんに着いていっては駄目だぞ」
お見合い会場のホテルの一室に入って、窓際の席に向かい合うなり、眉を顰めた孝之さんに咎められた。自分も連れ込んでいるじゃないかと返しそうになり、いや今回は私を慮った行動だったなと思い出して口を噤む。
約束通り私がデザートと食後のコーヒーを堪能するのを待って、先週の出来事について問い質そうとした孝之さんは、レストラン内をさっと見回してから場所の移動を提案してきた。地元とはいえ彼はこの地を離れて久しいが、実家暮らしの私にとっては現在も生活圏。話が話だけに万が一誰かに聞かれぬよう配慮してくれたらしい。
ただいざ場所を変えようにも二人きりになれる所なんて早々なく、カラオケじゃ落ち着かないし、孝之さんのアパートはここから車で二時間近くかかる。だから私から言ったのだ。
「このホテルの部屋でいいですよ」
孝之さんは身に覚えがあるせいか、信じられないという表情で断固反対した。そもそも一緒に入室する姿を目撃されたら元も子もない。
「大丈夫です。とりあえず知人は見当たりませんから」
結局他に当てがあるわけでもなく、私に押し切られる形で不本意ながらも孝之さんが折れた。
さすがにシングルじゃ拙いと判断したのだろうか。話をするためだけに借りたツインルームは、シンプルながら居心地の良い造りで、代金も勿体ないし一人で泊まっていっちゃ駄目かなと思考を飛ばしていたら、わざとらしい咳払いが一つ耳に届いた。
十一月にしては気温が高めの日が続き、窓から見える街路樹の紅葉も中途半端になっている。そんな穏やかな土曜日の午後、休日出勤の仕事を切り上げて母親の呼び出しに応じた孝之さんにしてみれば、面倒なことはさっさと済ませて戻りたいに違いない。
「うちに来たのは見合いの話をするためだったのか?」
率直に切り出された私は素直に認めた。
「はい。おばさんについでだから様子を見てきてと頼まれて」
母親達から唐突に無謀なお見合いを突き付けられたのは、先週の金曜日の夕方だった。そのとき富沢のおばさんから、
「いくら電話をしてもメールを送っても孝之から返事がないのよ。しかもお見合い相手の名前を間違えて咲ちゃんにしてしまって。よければ結衣ちゃんから訂正しておいてくれない?」
いかにもこじつけといったお願いをされ、孝之さんのアパートの住所と交通費を押し付けられたのだ。そしてそのまま孝之さんに連絡しておくからと新幹線で送り出された。
おばさんの魂胆は分かっている。ずっと離れていた幼馴染の二人が再会してあーれー、つまりあわよくば既成事実を作らせたいのだ。そうでなければまもなく夜を迎えるのに、わざわざ一人暮らしの息子の元に私を行かせはしないだろう。当然うちの母も加担している。
どんな媒体から情報を仕入れているのか知らないが、そもそも孝之さんが好きだった咲姉と私は全く似ていないので、間違いなんてそれこそ間違っても起きようがないのである。頼むからもうちょっとましなシナリオを書いてほしい。
孝之さんの部屋を訪ねたのは七時を過ぎた頃だった。おばさんの連絡云々は正直怪しいし、子供の頃会ったきりの私が急に現れても正直対応に困るだろう。もしかしたら仕事中という可能性もある。だから留守だったら詳細を記したメモを置いて帰るつもりだった。
「どちら様?」
チャイムを鳴らしてずいぶん経ってから、誰何する男の人のがらがら声がした。
「田坂です」
下の名前を告げても分からないだろうと、馴染みのある名字を名乗ったことが仇になったのだと今なら思う。
「入って」
孝之さんは私を確かめもせずに鍵だけを外した。奥に引っ込んでで行く気配に従って、お邪魔しますと断ってドアを開ける。恐る恐る進むとすぐにリビングが広がり、そこにある大きなソファにスーツを着た孝之さんが伏せっていた。横のテーブルにはお酒の缶が転がっている。
抱えているプロジェクトが暗礁に乗り上げたのか、はたまた失恋の後遺症か、これはいわゆるやけ酒というものではなかろうか。
大人の男のこうした姿を間近にしたのはもちろん、「咲姉の彼氏」としての孝之さんに対面するのもある意味初めてだったので、私は好奇心が刺激されてついまじまじと彼を眺めてしまった。昔「孝ちゃん」と呼んでいた頃の面影が宿った顔、苦しそうに顰められた眉、呼吸する度上下する喉元、捲られた袖から覗くがっしりした腕。
「孝之さん」
意識は既に朦朧としているのか瞼は降りたままびくともしない。本人を前にして手ぶらで帰るのもなぁと繰り返し名前を呼んでみる。
「孝之さん」
やはり反応がなかった。こうして待っていても起きる保証はないし、新幹線の時間も迫ってくる。酔っぱらっても格好いい人は貴重で名残惜しい気もするが、とりあえず観察はここで止めて、私はお見合い相手の名前を訂正するというお使いを果たすため、伝言を書くべく孝之さんに背を向けた。
顔はともかく後ろ姿は似ていたのかもしれない。一文字目を記すことなく私はいきなり力強い腕の中に囲われた。
「孝之さん?」
問いかけても答えはない。微かな息遣いだけがやけに耳に響く。そこからはあれよあれよという間に…。
「やってしまったわけだ」
孝之さんが大きく息をつく。節操のない表現ではあるが、動揺はしていないので記憶の擦り合わせをしているのだろう。
「計らずも富沢のおばさんの期待に応えてしまった次第です」
最終の新幹線に乗れなかった私は、結局孝之さんの部屋で夜を明かしたのだが、もちろんその事実は母親達には申告していない。
「何故黙って消えた?」
翌朝私は孝之さんが眠っている間にアパートを後にした。母親達には孝之さんには会えなかったから、高校時代の友人の家に遊びに行ったと白々しい嘘をついた。私が「田坂結衣」だと気づかなかった孝之さんのお陰で、おかしなことに無茶なアリバイは完成した。
「お見合いが決まっていたから、気まずくなるかと思って」
二人の身に起こった事実はともかく、孝之さんが私を憶えていたなんてさっき再会するまで想像もしていなかった。空っとぼけてお見合いに臨むつもりだっただけに、先週会った筈だと言われたときは本気で驚いたものだ。
「それに咲姉と勘違いしてたでしょ?」
孝之さんはぐっと言葉に詰まった。私は苦笑する。
「責めてるんじゃないですよ」
「田坂結衣」ではない私を認識していたこと、その上で知らん振りも言い逃れもしなかったこと。今こうしてあの夜について真摯に向き合ってくれていること。やってしまったことは人として褒められたことではないかもしれないけれど、私はそんな孝之さんにむしろ潔さを感じている。
それに孝之さんは決して無理強いしたわけじゃない。事に及べたのが不思議なくらい、逃げ出す隙はいくらでもあった。たぶん本気で嫌がったらやめる意思はあったのだ。そして私は逃げなかった。つまり。
「同意の上、です」
笑顔で断言した私に孝之さんはただ息を呑んだ。
怒涛のお見合いから一か月が過ぎた。街はクリスマスムード真っ盛り。ホテルの窓から見えた街路樹も葉っぱがすっかり落ちて寒そうだ。あれから孝之さんとは会っていない。母親達は何の連絡もしてこない孝之さんに業を煮やしていたけれど、私はむしろこれで良かったと思っている。
済まないとお詫びを口にして先にホテルを出た孝之さん。それが想像以上に堪えて、一人残された部屋に泊まることができなかった。
「一目惚れしちゃったんだろうなぁ」
きっと孝之さんの部屋を訪れた日に。そして同時に失恋も。少しでも可能性があるなら頑張るけれど、孝之さんには咲姉との大切な三年の時間があるから、私はその咲姉の妹だから、きっとこの想いは叶わない。謝罪の対象としてはせめてこの先、孝之さんが謂れのない責を負わないでくれることを祈るのみ。
「酔っぱらっても格好いいなんて反則だよね」
買物を終えて駅のロータリーでふーっとため息をついたとき、タイミングよくクラクションが鳴った。迎えを頼んでいた悟かと視線を投げたら、見知らぬ車がゆっくり近づいてきた。
「乗って」
静かに下がった窓ガラスの奥から現れたのは、ちょうど脳裏に浮かんでいた孝之さんだった。また仕事の合間を抜けてきたのだろうか。懲りずにスーツ姿である。
「どうして?」
滅多に帰省しない人が何故また戻っているのかを訊ねたつもりだったのに、孝之さんは悟の代わりに迎えに来たと言って強引に私を車に引き入れた。実家に着いたらちょうど悟と鉢合わせたのだそうだ。
車はスムーズに発進し、賑わう土曜日の午後の街並みを走る。どうでもいいけれど、簡単にどこぞのおじさんに着いていくなと釘を刺したのは、確か貴方ではなかったでしょうか。
「ずっと放っておいて済まなかったね」
まるで彼女にでも謝るみたいに、さらりと嫌な言葉を使う孝之さん。
「意味が分かりません。それよりその済まない、やめて下さい。前に別れ際にも言われましたが」
かなり虫唾が走る、はさすがに黙っておいた。慣れた手つきでハンドルを操る孝之さんは、一瞬眉間に皺を寄せたものの、すぐに何のことか理解したようで、困ったように頬っぺたを掻いた。
「意味が違うんだけど」
赤信号で停車するなり、首を傾げる私に何故か意地悪げに笑む。
「前に結衣ちゃんが、自分と咲を勘違いしてるって指摘したことあっただろ?」
また嫌な話題を振ってくる。それは紛れもなく、私と孝之さんが過ちを犯した日のことを指したものだ。
「実はあのとき、途中で別人だと気づいてた」
孝之さんがわざとらしく耳元で低く囁く。
「初めてだっただろ、結衣ちゃん」
私は瞬間湯沸かし器なみに沸騰した。そういうことは事実でも伏せておくのが礼儀でしょうに。
「くそおやじ」
涙目で罵る私に孝之さんはふっと口元を緩めた。
「うん。初めての子に優しくしてやれなくて、酷いおじさんだったよな。だから済まない」
私が勝手に解釈していたものとは違う、労わりに満ちた謝罪。
「さすがに酔いは吹っ飛んだのに、結局止めてやれなかったし」
ばつが悪そうに呟いたところで、信号は再び青になり、孝之さんは静かに車を滑らせた。助手席にいて無駄に体が揺れないのは、きっと運転が上手いからなのだろう。
「ところでうちとは反対方向に行ってませんか?」
薄闇に包まれ始めた窓の外を、見慣れない景色が流れている。
「あぁ、俺のアパートに向かってる」
驚いて私は勢いよく運転席を振り返った。
「母達にけしかけられたの?」
「いや。この一ヶ月、いろいろ考えてみた結果」
前方を睨んだまま怒るなよ? と孝之さんは続ける。
「正直抱きごごちが良かったというか、何かしっくりくるものはあってさ」
体中真っ赤に染まった私は、すかさずエロおやじと口を挟む。
「だから目が覚めていなくなっていたのには、ちょっとショックだったし、再会してそれが結衣ちゃんだと知ったときは更に驚いた」
「それで」
デリカシーの欠片もないおじさんに、半ば不貞腐れて先を促す。
「咲のこととか年齢とか、要するに体裁や建前なんかを全部取っ払ってみたわけ。そうして最後に残ったものが」
「が?」
「俺とのことは同意の上だときっぱり言い切った、強かな女の子にもう一度会いたい。そんなおじさんらしからぬ気持ちだったんだよ」
あまりにも予想外の告白に私はぽかんと口を開けた。ついでに鳥もびっくりするくらいの速さで瞬きをする。でもすぐに我に返った。だって孝之さんは咲姉に未練がある。名字を聞いただけで、無条件に私を部屋に招く程には。おそらく近所の子供に手を出した責任が、こんな行動を取らせているのだろう。
すーっと息を吸って軽く片足を上げる。
「良心の呵責に耐えかねて口走っているなら、蹴っ飛ばしますよ」
私の脅しに孝之さんはぷっと吹き出した。ひとしきり笑った後に、柔らかな表情で続ける。
「咲とは穏やかな関係だったよ」
唐突に語られ始めた咲姉との過去に、ほんの少し心拍数が上がる。
「でもいつからかそれを壊さないように、お互いに気を使い過ぎていた」
相手を思えばこそ、一緒にいるために無理を重ねて我慢して、なのに最後には一緒にいても疲弊するだけの二人になっていた。
孝之さんはそう繋げたけれど、私には抽象的で難しい。
カーブの少ないなだらかな道を、対向車の眩いライトが通りすがりに照らしてゆく。もうすっかり日が暮れた。
「だったら我慢しないで、何度でも叩き壊して、新たに積み上げればいいんじゃないですか」
子供には分からない世界ですけど、と肩をすくめる。孝之さんは満足そうに頷いた。
「たぶんそんな結衣ちゃんだから、仕切り直ししたくなったんだよ」
増えてきた明かりを追うように、車は徐々に住宅地に入った。寒い夜に暖かな色が灯る。
「まだ恋愛感情かどうかはっきりしないけど」
「ということは、ひとまずお友達ですね」
「ちょっと待った。そこまで健全でなくても」
急に焦りだした孝之さんに、帰りは新幹線にしますね、と真顔で嘯いたら、
「参っちゃうよな。悟とその辺を転げ回っていた鼻たれガキに落ちるなんて」
悔しそうに唇を噛み、やがて私の頭をぽんぽんと撫でながら破顔した。
富沢家から正式におつきあいの申し込みがあったのは、何故か年の瀬も押し迫った大晦日。
「本人達に任せればいいだろう」
父親達の忠告は聞き流し、次は結納の日取りを決めなきゃと騒ぐ一方、咲姉と悟のお見合いを画策する母親達に、家族は新年早々うな垂れている。
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