最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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10章「狩人たちの見る夢」

かつて学び舎だったもの

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≪ターミナルに新規レポートログが追加されています≫

[タングラム中枢システム002≪産道≫]

システム内には、[データ編集済]にも上る[データ消去済]が保存されています。その重要性から、中枢システム001‐005のセキュリティレベルは最高機密の6に設定されています。
≪産道≫はシステムナンバー003と連動して起動することで、24時間に1人の□□□□を生み出します。□□□□は、言語・技能・身体などは[データ編集済]と全く同一のものですが、記憶に重度の異常を来しています。それと”感応”の力までは引き継がれないようです。

その性質から、[データ破損]にこのシステムを利用する計画が現在検討中です。

現在製作されている□□□□のリスト

=【[データ編集済]】


記録AI名称【屋根裏の大宇宙】

******





※アカ&クロノ組視点です




――――――ビルゲンワース。そこはかつて、学問を学ぶ場でもあり狂おしいまでの神秘の研究所だった場所。

しかし今では半ばまで悪夢に呑み込まれ、現実とも悪夢ともつかぬ場所を漂っている廃墟と成り果てている。いまや学徒たちは変異し、学長ウィレームは月の映る湖を眺めながら安楽椅子に揺られている。

そこにやってきたアカとクロノはそこここに散らばる古びたメモを探しつつ、辺りを探索する。

「……………………」
「……………………」

凄く、無言で。そういえば普段比較的喋るヒビキといつも賑やかなルクスがペアで別行動中なので、こうなるのも当然の帰結というべきか。

「…………………そういえば貴方、その目の布、どうしたんですか?」
「?」

アカがクロノの目に巻かれた黒い布を一瞥して、ぼそりと訊く。別行動してから時々ふらふらと変な方向に歩いていくクロノを見て、盲目なのではないかとアカは気づきだしていた、今まで戦う姿があまりに違和感がなかったため、気づかなかったのだ。感じる血の気配から、同族だということは事実であるが。

「………………」

長い沈黙の後、クロノは不意にその目に巻かれた黒布を解いた。

露になったのは固く閉ざされ、両の目。鋭い傷跡が1条ずつ縦に走っている。

「成程、そういうことですか…………」

それでアカは、それである程度察したようだった。

「…私は”見えすぎた”から………………お前は”見なくていい”と言われて……………この有様、だ…」

ぼそりと呟くクロノ。彼はかつて嘘偽りなく全てを見通す色違いの重瞳を眼窩に宿していた。あと別に話せないわけではなく、本当に必要最低限しか話さないのである。

「はぁ、やはり悪習は消えてなかったのですね………あ、ここにメモがありました」

溜息をひとつつき、丁度視界の隅に入ったメモを手に取る。その古いメモには【3本の3本目】と走り書きされていた。クロノがその後に見つけたメモには【思索と祈りと共に。■■■■■(掠れて読めない)、星の子よ】と書かれてある。

他も探せば、よくわからない生き物の絵が描かれていたりカレル文字が描かれているメモがぱらぱらと見つかった。いくつかのカレル文字は連盟長ヴァルトールの左目に刻まれた【淀み】、血族狩りアルフレートの右目に刻まれた【輝き】など契約の文字である。こんな場所に何故と一瞬思ったが、そういえばカレル文字の製作者である筆記者カレルはビルゲンワースの学徒だった。つまりはそういうことだ。

「あ、そちら学徒がいったんで気を付けてください」
「……ああ」

そういうや否や背後に迫っていた学徒を聖剣で抜き打ちざま斬る。向き直り、光波で頭部を斬り飛ばした。アカは遠距離でこちらに気づいていなさそうな、瞳が埋まった蜘蛛のような敵「瞳の苗床」を貫通銃を取り出してぶち抜いた。追加で【夜空の瞳】を撃ったものだからそいつがいた場所が若干抉れている。

見つかる前に殺せばこちらは被害を受けずに済む。4人は得意分野にかけてはステータスが高いので数撃で殺ることができるのだ。得意分野にかけては。

扉を開け、1階を2人で探索していると……

――――キィィィン……
「「…………!!」」

空気を震わせる甲高い音が耳に届く。眩い光がこちらに迫ってくる。
余りに弾速が速く、避けきれずに数発くらった。HPが大きく削れる。

「あそこですね」

星弾が飛んできた方向、階段の中辺りにアカと同じ聖歌隊装束を纏った女性狩人が立っていた。右手には仕込み杖、左手にロスマリヌスを握っている。

「俺が秘儀を撃つので、接近戦お願いします」
「……………ああ」

やや軋む床を蹴り、変形していない聖剣を振りかざして接敵する。それに反応して相手が仕込み杖を振ろうとして瞬間、左手の銃を撃った。女性狩人――――「最後の学び手、ユリエ」と呼ばれる彼女が大きく怯む。
無表情のまま右手の聖剣を突き刺し、内臓攻撃へと繋げた。多量の返り血が噴き出し、真正面にいたクロノに降りかかる。

直後に宇宙的な音が響いてきたのでバックステップでアカと位置を入れ替え、すでに【彼方への呼びかけ】を待機状態にしていたアカがそれを全弾発射する。10の弾の内4弾が命中したが、ユリエのHPはまだ半分以上残っている。

だが相手も仕込み杖を変形させており、その上【彼方への呼びかけ】を撃った直後のため少々隙が生じていた。

「………………」

続けてたたみかける。2人でたたみかけたせいか、十数分ほど【彼方への呼びかけ】を避ける→攻撃を繰り返すと彼女は倒れ、消えていった。

***

―――――階段を登り、見える位置のアイテムを拾い集めながら進んでいく。外のバルコニーにもアイテムやら敵もいた。チョウチンアンコウのような他の存在をおびき寄せるための神秘的に発光する触手を持ったムカデ「蛍花」やナメクジ人間「脳喰らい」、頭上などの死角にまた「瞳の苗床」が絶妙に潜んでおり心臓に悪い奇襲を受けること数回。

蛍花は強烈な火力の火の玉を撃ってきた。が、側面に回り込んで頭の触手を銃撃や秘儀で攻撃すれば弱点だったのか案外簡単に倒せた。

落ちていたアイテムの中に紛れていた月見台の鍵を手に入れ、慎重に隠密しつつ瞳の苗床を遠距離で仕留める。

そして一時間ほど後、3階の湖に突き出した月見台にたどりつく。

月見台の上で

そこには学長ウィレームと思われる老齢の人物が、安楽椅子に揺られたまま月を眺めていた。

「…………………■■■■■■あらゆる儀式を蜘蛛が隠す。露にすることなかれ。
啓蒙的真実は、誰に理解される必要もないものだ」

話しかけてもまともな会話にならない。やはりこちらには理解ができないものだった。

ただ分かったのは、何となく湖の方を指し示すような動きをしている。

「……?」
「…………??」

広い湖は細やかに揺れ動き、月夜の朧な光を反射している。

他を見回すが、道は見当たらない。

意を決した。










******

≪ターミナルが自動で起動し、カタカタとメッセージを表示し始める。≫

お元気ですか?

こちらはいつも通りです。暖かさが戻りつつあるそちら側が少々羨ましくも感じます。

お体にお気をつけて。ああ、もし彼に会ったならたまには戻ってきてとお伝えください。

ちょっと変わっていて、たまにふらふらとどこかに行っちゃったりするのだけど、根は優しくていい子です。

ぜひ、会ったらお話してみてください。

                           ■■■より、愛を込めて

≪メッセージが終了し、モニターに一枚の写真が表示される。月夜に深々と雪が降りしきるどこかの街の十字路に、薄くたなびく霧を纏った外套姿の男性の後ろ姿が映っている≫

***


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