最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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1章「第一次大規模メンテナンス」

メンテナンス通知が届いた模様です

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――――ザ・ファイナルリコード・オンライン。

直訳で「最後の旅行記」とも言うこの世界は、超大規模VRMMOとしてたった数か月前オープンしたばかりだ。
無限の可能性が広がるこの世界は、オープン直後にとてつもない人気を博し、多数のプレイヤーで賑わっている。性別を偽ることはできず(肉体と精神の齟齬による混乱を防ぐため)、また過剰な肉体接触も禁じられている。それに現実の体格からかけ離れすぎたアバターは作れないなどの幾つかの縛りはある。

戦闘に明け暮れる冒険者になるもよし、モノづくりで頂点を目指す生産者になるのもよし、また、両職を兼任するのもよしだ。ここには冒険・恋・友情・ロマン全てがある!




―ゲーム内時刻、20XX年海鳴りの月XX日午後6:30
プレオープンからまだ数か月しかたっていないVRMMO【ザ・ファイナルリコード・オンライン】内の「カルディア」と呼ばれる主街区の中の人ごみに紛れて、2つの人影があった。
1人は黒づくめの姿、もう1人は白づくめの姿をしており、黒づくめの青年の名はヒビキ、白づくめの青年の名はカイと言った。

9か月程度前のサービスオープン時からいる最古参プレイヤーであり、オープンから僅か2か月程度で並み居るギルドの頂点に駆け上がった、人数僅か5人の最強ギルド【蒼穹】のギルドマスターと副ギルドマスターでもある。
身内でやるため新しいメンバーを加えるつもりはない。

最近はめいめい各街に散らばって、住人達からの頼み事を解決して回る便利屋紛いのことをやっている。無論悪事に手を染める奴には容赦せず、程度に合わせて心をへし折った後に衛兵さんの所へとご案内だ。

2人は暫くカルディアの中を歩いていたが唐突にピロンッ、と音が鳴り、自動的にウィンドウが開く。
これはイベントなど、運営からの重要なお知らせを示す音である。

「……ヒビキ、お知らせ」
「あぁ」


《プレイヤーの皆様へ重要なお知らせです・イベントハイライト》

【第一次大規模メンテナンス開始の予告】

ザ・ファイナルリコード・オンラインにログインしておりますプレイヤーの皆様へ、第一次大規模メンテナンス実施の予告をさせていただきます。

『開始日時』
・本日午後7時30分より実施。
『完了予定日時』
・明日午後9時頃
『主な実装内容』
・新たな種族「精霊」を追加いたします。(NPCのみの種族です)それに伴い、システムなども開放いたします。
・また、精霊との契約・同行システムを実装いたします。
・新たなダンジョン・素材・モンスターを追加いたします。
・第一次大規模キャンペーンイベント開催をメンテナンス終了後に予定しております。

詳細は公式ホームページをご覧ください。


「…だって、ヒビキ」
「精霊か、楽しみだぜ」

一通り読み終え、ウィンドウを消した2人は実に楽しそうだった。周りを見れば、似たような反応をしているプレイヤーも結構いる。

何しろ、対モンスター戦か月2回の週末ギルド戦ぐらいしか彼らプレイヤーが好きに暴れられる時はないのだ。初めての大規模メンテナンスなので、全員結果が楽しみなのである。

「じゃ、取り合えずここで分かれるか?ログアウトしたらそっちの戦果教えてくれよな」
「了解しました。では」
「おう。じゃあな」

そういって二人は別れる。



――――その後のヒビキ。特に何をする気も起きなかったので、冒険者ギルドに行って解決できそうな依頼を探す。高位依頼の中で今のヒビキの手持ち素材で解決できる依頼があったので、それらを幾つか剥がして素材を添えて受付の人に渡しておいた。その後はログアウトまで好きに動く。

余談代わりに現在の武具事情その他なのだが、運営が死に武具を作らないようにしているのか、最初は近接最上主義でゴミだ何だとこき下ろされていた筆頭の覇弓もフレンドのエヴァンが弓で無双を披露したことで覆され、防具は付与術師や職人たちの技術の発達により「重鎧並みの防御力の布装備」や「防御力は十分なのに革並みに軽い重鎧」、「全く音が立たない羽のように軽い革鎧」など現実ではありえないものが多々ある。

特に一番最後の革鎧の所為で【暗殺者アサシン】系職業が凶悪になり、その対策として探索系スキルである【危機察知】【索敵】が爆発的に普及した。今では始めたて初心者でも一番先にどちらかは取る程に常識化している。

実際【危機察知】【索敵】を取るのには初心者でもそんなに苦労はしない。

比べ、あまりいないのが【罠察知】もとい【罠解除】持ちだ。【罠察知】の方はまだ取得するのがめんどくさいだけなのだが、【罠解除】の方はスキルレベルを上げるのに実際に罠を解除しなければならない。それも、罠の危険度で得られるスキル経験値に明確に格差がある。罠解除というのは案外気をすり減らすので率先してやる人は少ない。

が、高難易度ダンジョンになるほど罠も鬼畜になるので【罠解除】持ちの需要は非常に高い。

盾も小盾、中盾、大盾どれも需要があり、小盾は軽装遊撃職や魔法使いに、中盾は剣士など前衛攻撃職に、大盾はタンカーに人気だ。【付与術師】か【画家】あたりの絵心ある人が描いたのか大輪の花や神々、竜や龍の絵が描かれてあったりもする。

魔法はというと炎属性は威力、水属性は回復と攻撃、風属性は出の速度とコスパ、大地属性は移動などの妨害、光属性&聖属性は治癒や不死族特攻、闇属性はデバフなどの妨害に長けているのでどれもこれも利点はある。

しかし魔法スキルを取るには職業ジョブ同様ちょっとしたクエストをこなす必要があり、しかも自分の得意不得意がよく影響するスキルの1つだ。

プレイヤーによっては神職に就いて、中にはいつのまにやら熱心な信者になってたりもする。というか神職を自分のジョブに据えている奴は大体の程度はあれど信仰心が高い。


生産は、ポーションや攻撃用薬品を提供できる【製薬術】、便利な道具を作れる【錬金術】、武具を作ったり修理できる【鍛治術】、アクセサリを作る【細工術】、即席簡易拠点を作ったりギルドハウスのメンテもする【建築術】、薬草や野菜、作物や薬草だとかを育てる【農業術】などなど、腕の見せ所は多々あるのだ。


で、このゲーム世界でプレイヤーたちから尊敬を集める名誉ある肩書きである上位プレイヤー、または最上位プレイヤーと呼ばれるようになるには、最低限幾つかやれなくてはいけないことがある。

魔法は職業関係なく全属性かじっておくのが当然、使うメイン武器は最低限神話級ミソロジークラス以上。最低1つは生産系職業を極めておく、かつ職業は2次職以上。パーティでレベル900帯のボスを狩れるのが上位プレイヤーの最低条件。

最上位プレイヤーの場合は1人で同じレベル900帯のボスを狩れないとそう呼ばれる資格はない。え?デバフやバフ主体の補助魔法職はどうするのかって?……それも極めればインチキレベルに有利な状態を作り出せるので、それぐらいはできないと困る。

…………噂なのだが、このゲームの一部の展開には本人の精神構造―――例えばグロ耐性だとか痛みに対する耐性、そういうファンタジーな世界の存在に偏見を抱いているかいないか、血や戦いに対する適性などなど。が関係しているとかいないとか…………あくまで噂だ。

流石に致命傷レベルの痛みは感じることはないが、一定までの痛みが忠実に再現される上にたまに流血表現も容赦なく行われるこの世界に認知フィルターなどという甘いものは存在しない。故に一応15歳以上の年齢制限がかかっている。

ちなみに、男女間のセクハラはご法度だ。システムに感知された瞬間運営が監視する牢獄エリアに叩き込まれ、重度であればアカウントバンもあり得る。これはプレイヤーから住民に対してでも同じで、また男性から女性だけでなく女性から男性のセクハラも平等に裁かれる。ちゃんと男女平等だ。

犯罪行為に関しては衛兵たちを始めとした警察に該当する組織があるので、そちらに捕まることになる。



それらのリアルさが人気を博す一因になっているのだが…。
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