最強者のVRMMO活動記 ~トラブルに愛されるとあるプレイヤーのトラブルシューティング記~

火の無い灰

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2章「鳥人族(ディーヴァ)の暮らす都市」

新たな迷宮へ

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―ある意味いつも通りの【蒼穹】の戦いぶりによって、決着がつき、キャンペーンクエスト第1章が終了した翌日。
【蒼穹】メンバーもそれぞれ自由に過ごしていたが、戦闘狂なヒビキはカイとスコールと一緒に新しいダンジョンへ行くことにしたようだ。

「それで、どこのダンジョンに行くつもりなんですか?」
「ここにしようかと俺は思ってるんだが」

そう言ってヒビキが出したダンジョン詳細のウィンドウは、☆11の「鳥人達の楽園」のものだ。

『成程な』
「何かありそうな予感がしますが…まあ行ってみましょうか」

そんな調子で転移した先は、文字通りの空中庭園。幾つもの大小さまざまな浮遊島が空に浮かび、都市があったり森があったり遺跡があったり草原があったり、色々な様相を見せている。
その浮遊島の中でも、現在ヒビキたちがいる島と比べるとかなり大きな島が、遥か上に見えていた。その島には、都市があるらしい。

「…都市、ありますね」
「…だな」
『……あそこを目指せばいいのか?』
「…そのようです」
「……どうやって行けばいいんだ?見たとこ、足掛かりになるようなモンすらねぇぞ」

ヒビキの言う通り、島と島との間には何もない。どういうことなのだろうか、と暫く首をひねっていると不意にスコールが思いついたかの様に呟く。

『……そうか』
「…どうした?」

パキパキパキ…と何かがひび割れていくような音を伴い、虚空から血晶が現れる。ただし、その質量が尋常ではなかった。
ある種の美しさすら感じられるその血晶の塊は、徐々に意味のある形へと変化する。
それは…

「…階段、か?マジ万能だな、その能力」
「…です、ね」

そう、無数の長方形の結晶板が階段状に並んでいた。恐らくあの島まで届いているだろうと思われるほどの数だ。
中空に浮く結晶板は、見たところ落下する危険はなさそうだが手すりも無い上、下を見下ろせば高所恐怖症の人は一発でアウトになる以上の高さがある。

「行きましょうか」
「行こう」
『……早めに行くか。そんなに長くは持たないが、渡り切るぐらいまでは持つはずだ』

その上を躊躇いなく、硬い音を立てながら進んでいく。


浮遊島にのっている都市の周りは高い城壁で覆われ、唯一の出入り口である大きな門の両脇には二人の兵士の姿があった。当然の如く門は開いている。もしかしたら緊急時以外閉めないのかもしれない。
その前にいくつかの列ができており、カイは適当に並んでいた人に話しかける。

「ちょっと聞きたいことがあるんですが、いいでしょうか?」

相手は行商人らしく、大きな荷物を担いでいた。カイに気づき、答える。

「何だい?」
「僕たちはこの街に来るのは初めてなんですが、通行証とか必要なんでしょうか?」
「あぁ、勿論。犯罪を犯したり、それに匹敵するような悪事をしたことがない限りはね。君たちはどうやら冒険者のようだから、管理者のところに行って依頼を受けて達成すれば、多分もらえると思うよ。私は見ての通り行商人だから、また違うけれどね」
「ありがとうございます」
「頑張ってね」

カイは少し離れて見ていたヒビキとスコールのところに戻り、教えてもらったことを話す。

「成程な」
『ふむ』

今度はヒビキが、門の隅の方にいた手が空いている兵士のところに行く。

「すいません。俺たちはここに来るの初めてなんですけど」
「む?なら管理者のところに案内するから、ついてきてくれるか?あとは知らんが」

ついてこい、というように一瞥された後、その兵士は建物の方へと歩き出す。
ヒビキは残り2人も呼び、その後をついていく。

―ついた場所は、最低限の装飾がされた広めの部屋だった。
正面の立派な机の奥には、ヒビキと同じくらい背の高い、真っ赤な長髪の若い男性がいた。騎士衣姿で、鋭い目つきが特徴的。鳥人族らしく、背には1対の翼がある。【解析アナリシス】が発動し、視界にカーソルが映る。

――――【ゼクス・ファルシオン Lv632 鳥人族  神殿騎士/魔導戦士】

「…お前たちか?通行証を求める冒険者は」

容貌に見合う、鋭い声が響く。

「そうです」

カイが答えると、彼はそうか、と呟き暫く黙った後、言葉を返す。

「なら…」

言葉の途中で突如、大気を大きく震わせる何かの吠え声が響く。窓から差す光が何かによって遮られ、辺りが薄暗くなる。

「ちっ、【島喰い】が。よりにもよって今か…!」

途端に兵士たちが騒がしくなり、指示を求める声も聞こえてくる。

「おい、島喰いって…あれだよな?」
「あれですよね。前一度倒したことのある」

辺りの様子そっちのけで、ヒビキとカイは小声で囁きを交わす。二人が思い出したのは、前に別の場所で受けたことのある高位依頼ハイレベル・クエスト:【島喰らいの大鯨】の事だ。

『…どういうことだ?』

【島喰い】がどういうものか分からないスコールは首を傾げている。

「ああ、それはな…」
ヒビキは簡単に説明する。曰く…

・その名の通り島ほどもある巨大鯨で、自身と同じぐらいの質量を持つ島を食べる。
・基本速度は鈍重。その体表は生半可な攻撃なら反射する。(=一定量以下のダメージは全て反射する)
・主に攻撃方法として使ってくるのは水や風属性の魔法スキル。ただし要警戒なのはたまに巨躯から想像もできないほどの素早さで直撃すれば大ダメージを食らう突進攻撃をしてくる。

「前に倒したときはヒビキが見事に輪切りにしちゃって僕はその後始末でしたけど」
「…別にいいじゃねぇか。味はほぼそのまま鯨だったんだし」

その様は某大人気漫画の隻眼の侍の如しだったとか云々。

小声で囁きを交わしていた二人だが、このまま突っ立っているのもあれなので、カイが管理者ゼクスに協力を持ちかける。
無事に許可を貰ってから、3人で外に出る。

―様子からして、スコールはともかく、ヒビキとカイの2人はこの事態も、「鯨肉の補給になるなー」程度にしか考えていないらしい。
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