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4章【手がかりは全て…】
堕ちたエルフとの交戦:1(前)
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夜の闇の中を木々をかき分け進んでいくと、茂る木の葉の隙間から、洋風な館が姿を見せ始めた。
―――まあ、
「…へっ、そんなに簡単には入らせてくれない様だなぁ…」
挑戦的な笑みを浮かべる。
その視線の先には、身動き一つもせず立つ、人影があった。
「……………………」
魔導士っぽいローブと精緻な杖、そして何よりフードから覗く細長く尖った耳は森妖精の証。おまけにその耳は黒っぽい色をしている。
エルフで黒っぽい肌色と言えば、黒エルフが普通だが…こいつは。
「…もしかしてお前、堕ちたエルフか?」
―大昔に森の禁忌を犯し、ダークエルフなど他のエルフ族が普通に持っている聖樹の加護を失い、闇に堕ちた一族。
「…………そうだ。あの方からの命令で、お前を後ろにある【真理の館】に行かせるわけにはいかなくてな。少々邪魔させていただく」
「ふーん、戦る気か。ならこっちも無視する訳にはいかねーな」
レイが答えると、フォールンエルフの男は杖を構え、詠唱を始める。
杖の先端の、丸くて赤い宝玉が白い光を放ち始めている。
「魔法の大気現象を起こしていないのは見事だけど、発動スピードではこっちの方が上かな?」
――いつの間にやら後ろへ回り込んでいた。
「確かにそうだが、総魔力量では恐らく私の方が多いと思うぞ?」
その言葉の通り、魔法発動スピードではレイの方が圧倒的に早いが、総魔力量ではエルフの男の方が多い。体内に保持しておける魔力量が多ければ多いほど必然的に熟練した魔導士である。
「ちっ、やっぱ一筋縄じゃ行かないか…!」
刀で斬撃を加えようとするが、攻撃を防がれた。
魔法を構築する為の源泉である、己の身に纏う魔力だけで物理攻撃を防御する。一般に【流動魔力障壁】と呼ばれる芸当である。
無論相手の物理攻撃力よりこちらの魔力の纏う量が不十分であれば、そのまま大ダメージを食らう。
「あまり舐めてかかってこられてはこちらも困る」
「仕方ねえな…」
一旦後ろに跳び退いて、今さっきの攻防で得た情報を整理する。
――まず、総魔力量云々については【走査】で確認済み。
そして魔法に長けているが故に、超接近戦はやや不得手としているようだ。
だが、純粋な物理攻撃をしようとしても、流動魔力障壁で防がれる。
だから、
「魔法攻撃か魔法を付与した物理攻撃しかないってことか…はぁ…」
そう。流動魔力障壁では、純粋な物理攻撃しか防げないのだ。これはまあ法則的な理由がある。
何も加工が掛っていない状態の魔力は、既に魔法として構築された魔力に非常に弱いのである。
「属性魔法でいいのあったかな…」
とぼやきながら、刀に魔法を付与する。
光属性魔法【閃光刃】を十発纏めて乱射し、土煙を派手に上げると、相手は風属性魔法【一陣の旋風】で土煙を左右に吹き飛ばそうとする。杖の先端の宝玉の光が十分に溜まりきる前に、レイが動いた。
「あまりこっちは時間かけてる間ないんでな、さっさと決着つけさせてもらうぜ」
「む、これは!」
刀身に重なる様に浮かび上がったのは、純白と金色、2種類の魔法陣。
地面へ向けていた刀を、ブンッという小気味良い音を鳴らして正面に向けた瞬間に魔法陣が自壊し、レイの体を一瞬だけ白い光が覆い、刀が金色の光を帯びた。
それを見て、男は笑みを浮かべる。
「面白い…流石は大陸最強の魔導士製のホムンクルス。そうでなくてはつまらん」
魔法がぶつかり合う衝撃波の余韻で、周辺に立っていた木々や草などはまるで強力な台風が通り過ぎ去った後のような惨状だが、館の方へ飛んでいった流れ弾は、着弾したものの館はまるで当たっていなかったかのような状態を保っている。
無駄な言葉は一切交わさず、どちらも一切手を抜かず、能力に応じた戦術の駆け引きを交えて。
レイは刀を構えて一足飛びに約10メートルの間合いを詰め、男は杖を構えて待ち受ける。
―――まあ、
「…へっ、そんなに簡単には入らせてくれない様だなぁ…」
挑戦的な笑みを浮かべる。
その視線の先には、身動き一つもせず立つ、人影があった。
「……………………」
魔導士っぽいローブと精緻な杖、そして何よりフードから覗く細長く尖った耳は森妖精の証。おまけにその耳は黒っぽい色をしている。
エルフで黒っぽい肌色と言えば、黒エルフが普通だが…こいつは。
「…もしかしてお前、堕ちたエルフか?」
―大昔に森の禁忌を犯し、ダークエルフなど他のエルフ族が普通に持っている聖樹の加護を失い、闇に堕ちた一族。
「…………そうだ。あの方からの命令で、お前を後ろにある【真理の館】に行かせるわけにはいかなくてな。少々邪魔させていただく」
「ふーん、戦る気か。ならこっちも無視する訳にはいかねーな」
レイが答えると、フォールンエルフの男は杖を構え、詠唱を始める。
杖の先端の、丸くて赤い宝玉が白い光を放ち始めている。
「魔法の大気現象を起こしていないのは見事だけど、発動スピードではこっちの方が上かな?」
――いつの間にやら後ろへ回り込んでいた。
「確かにそうだが、総魔力量では恐らく私の方が多いと思うぞ?」
その言葉の通り、魔法発動スピードではレイの方が圧倒的に早いが、総魔力量ではエルフの男の方が多い。体内に保持しておける魔力量が多ければ多いほど必然的に熟練した魔導士である。
「ちっ、やっぱ一筋縄じゃ行かないか…!」
刀で斬撃を加えようとするが、攻撃を防がれた。
魔法を構築する為の源泉である、己の身に纏う魔力だけで物理攻撃を防御する。一般に【流動魔力障壁】と呼ばれる芸当である。
無論相手の物理攻撃力よりこちらの魔力の纏う量が不十分であれば、そのまま大ダメージを食らう。
「あまり舐めてかかってこられてはこちらも困る」
「仕方ねえな…」
一旦後ろに跳び退いて、今さっきの攻防で得た情報を整理する。
――まず、総魔力量云々については【走査】で確認済み。
そして魔法に長けているが故に、超接近戦はやや不得手としているようだ。
だが、純粋な物理攻撃をしようとしても、流動魔力障壁で防がれる。
だから、
「魔法攻撃か魔法を付与した物理攻撃しかないってことか…はぁ…」
そう。流動魔力障壁では、純粋な物理攻撃しか防げないのだ。これはまあ法則的な理由がある。
何も加工が掛っていない状態の魔力は、既に魔法として構築された魔力に非常に弱いのである。
「属性魔法でいいのあったかな…」
とぼやきながら、刀に魔法を付与する。
光属性魔法【閃光刃】を十発纏めて乱射し、土煙を派手に上げると、相手は風属性魔法【一陣の旋風】で土煙を左右に吹き飛ばそうとする。杖の先端の宝玉の光が十分に溜まりきる前に、レイが動いた。
「あまりこっちは時間かけてる間ないんでな、さっさと決着つけさせてもらうぜ」
「む、これは!」
刀身に重なる様に浮かび上がったのは、純白と金色、2種類の魔法陣。
地面へ向けていた刀を、ブンッという小気味良い音を鳴らして正面に向けた瞬間に魔法陣が自壊し、レイの体を一瞬だけ白い光が覆い、刀が金色の光を帯びた。
それを見て、男は笑みを浮かべる。
「面白い…流石は大陸最強の魔導士製のホムンクルス。そうでなくてはつまらん」
魔法がぶつかり合う衝撃波の余韻で、周辺に立っていた木々や草などはまるで強力な台風が通り過ぎ去った後のような惨状だが、館の方へ飛んでいった流れ弾は、着弾したものの館はまるで当たっていなかったかのような状態を保っている。
無駄な言葉は一切交わさず、どちらも一切手を抜かず、能力に応じた戦術の駆け引きを交えて。
レイは刀を構えて一足飛びに約10メートルの間合いを詰め、男は杖を構えて待ち受ける。
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