夢をみるひと

石津 

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夢をみるひと②

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改札を通り階段を上るとちょうど電車が来るところだった。

「黄色い線の内側までお下がりください」

アナウンスが流れ、30秒ほどで電車が来た。
9号車の扉が開き電車へ乗り込む。
手前すぐ右側の席に座ると、高校生くらいだろうか、二人とも顔の整った若いカップルが正面の座席に座っていた。
携帯にはおそろいのストラップをつけており、なんだか楽しそうに話している。

啓太が初めて女の子とデートをしたのは中学3年生の頃だった。
相手は一つ隣のクラスの女の子。3か月ほどメールのやり取りを続けてから告白をしたのだが、彼女とメールアドレスを交換したきっかけはよく覚えていない。

中学生のカップルと言えば、当時は一緒に学校から少し遠回りをしながら帰ったり、土日にはファーストフード店やゲームセンターに行くのが定番だった。学校から彼女と一緒に帰ろうとすると、同じクラスの仲の良い奴らが冷やかしてくる。
それが優越感と言うかなんというか、表面上はうざそうに振る舞っても内心はかなり嬉しかった。

さて、そんな彼女との初めての大きなデートは、二人の最寄駅から30分ほど電車に乗ったところにある遊園地だった。
電車で30分、乗り換えは一回、入園料は3000円弱と、中学生の啓太にはちょっとした冒険に感じた。

少し大人の真似をして、入園後すぐに手を繋ごうとしたが、緊張で手汗がものすごいことになっていたので諦めた。
そのあとも何度か試みようとするのだが、うまくいかず結局その日は手を繋げずに帰ることとなった。

当時の啓太の中では、手を繋ぐというミッションをクリアしなければキスという段階に進むことはできない決まりになっていた。
タケシを倒してグレーバッジを手にしなければハナダジムに挑戦できないのと同じ要領だ。そのためもちろん、啓太の脳内プランにあったファーストキスも達成できずにその日は終わった。
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