夢をみるひと

石津 

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夢をみるひと⑧

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その場所に立ち、待っていると30分おきくらいに人が来た。
体が大きくストリート系の格好をした男、派手な化粧をした女、一見普通の若い男、80歳くらいの老人。

様々な人が来て「クスリ」を買っていった。みな6万円ほどの金を啓太に渡し、袋に入った1グラムを受け取る。
見た目の怖い人から普通の人まで、その日は15人ほどの人が来たが、みなどこか不思議な空気感を持っていた。

日常的に使っている人は見えてる世界が違うのだろうか、そんなことを考えながら金と物の交換を行っていると、夜中の2時ごろ例の黒いワンボックスが啓太の前に現れた。

男が車に乗るよう指示したので助手席に座る。座るとまたすぐに出発した。
行きよりかは少しだけ緊張もほぐれ、窓の外を見る余裕ができた。夜
の2時過ぎだというのに渋谷の街は明るく、人々で賑わう。


徐々に静かな街に景色が移りはじめ、30分ほどで漫画喫茶へついた。
昨日の出来事がもう少し前の事のように感じる。

車を止めると男は、

「お疲れさん。給料はねえけど頑張ったからこれやるよ。」

そう言って昨日啓太が預けた免許証と共に、直径5ミリほどの錠剤がたくさん入った袋を渡してきた。
そして続ける

「いま一個飲んでみろよ。」

啓太はもちろん薬物などやったこともないし、これが何の薬物なのか、というより薬物なのかそうでないのかも分からなかった。
飲みたくはなかったが、男に対する恐怖心に押し負け1粒口に含み、飲み込む。
何も感じなかった。

「1時間くらいしたら効いてくるかな。1時間立つ前に寝ればおもしれえ夢も見れるよ。あ、あと一気にたくさん飲むと死ぬからな。」

さらに男は続けると車から降りるよう指示した。
死ぬというワードにビビった啓太の心臓は、激しく音を鳴らした。
車から降りると窓が開く。

「明日もまた同じ時間に来いよ」

そういって男は車を出した。

啓太は急いで逃げた。何から逃げているのかもわからず、自分の家に向かって全速力で逃げた。

家に着き、シャワーも浴びずにベッドへ入る。目をつぶると今日の光景が一気に瞼の裏に映った。
 
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