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夢をみるひと⑩(完結)
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なんて幸せな日々だろうか。
5年前からは想像もできないような光景が自分を取り囲んでいる。
啓太はここ最近、これは全部5年前の自分が見ている夢で、いつかは覚めてしまうのではないだろうかと感じることが多い。
「なにぼーっとしてんの!」
舞彩は笑いながら啓太の手を握り言う。
「なんでもない」
啓太も笑いながら答えた。これが夢なわけない。彼女の小さな手は暖かかった。
隣で歩けばそのさらっとした長い髪からは大好きな甘い匂いがするし、一歩一歩あるけばアスファルトが足の裏を押し返してくる。その場所に存在するだけでいちいち五感が刺激された。
20分ほど歩くと神社がある。そこで2人そろって安産祈願をするのが日課だ。
10円玉を賽銭箱に入れ、目を閉じて手を合わせながら元気な子が生まれるようにと願う。
横をみると舞彩がにやにやした顔でこちらを見ていた。
「毎日毎日真剣な顔して手合わせるね」
少しバカにしたように舞彩が言う。
「うるさいなあ」
啓太がそう返す。
次の瞬間、おだやかな風に運ばれてきた花粉が啓太の鼻の中をくすぐった。『へっくしゅん!!』
「うああああああ!!覚めたくなかった覚めたくなかった覚めたくなかったあああああ!!嫌だ!続きを!続きを見させてくれええええええええ!!」
啓太はそう叫ぶと先ほど男からもらった錠剤を10錠ほど一気に飲んだ。
すると突然呼吸が出来なくなる。足には力が入らなくなり全身が痙攣し始めた。
叫び声を聞いて起きた母が部屋に入るころにはもう啓太はおとなしくなっていた。
そしてだんだんと冷たくなっていった。2017年4月24日(月)の出来事だった。
翌日のお通やでは、啓太の友達や知り合いの姿はなく、母のすすり泣く声だけが響いていた。
目が覚めると、目尻から涙が流れていた。何の夢を見ていたのかよく覚えていないが、なんだか気分が悪い。昨日は早めに寝たはずなのに、なんだか少し疲労感があった。
最近は、変な夢ばかり見る。
5年前からは想像もできないような光景が自分を取り囲んでいる。
啓太はここ最近、これは全部5年前の自分が見ている夢で、いつかは覚めてしまうのではないだろうかと感じることが多い。
「なにぼーっとしてんの!」
舞彩は笑いながら啓太の手を握り言う。
「なんでもない」
啓太も笑いながら答えた。これが夢なわけない。彼女の小さな手は暖かかった。
隣で歩けばそのさらっとした長い髪からは大好きな甘い匂いがするし、一歩一歩あるけばアスファルトが足の裏を押し返してくる。その場所に存在するだけでいちいち五感が刺激された。
20分ほど歩くと神社がある。そこで2人そろって安産祈願をするのが日課だ。
10円玉を賽銭箱に入れ、目を閉じて手を合わせながら元気な子が生まれるようにと願う。
横をみると舞彩がにやにやした顔でこちらを見ていた。
「毎日毎日真剣な顔して手合わせるね」
少しバカにしたように舞彩が言う。
「うるさいなあ」
啓太がそう返す。
次の瞬間、おだやかな風に運ばれてきた花粉が啓太の鼻の中をくすぐった。『へっくしゅん!!』
「うああああああ!!覚めたくなかった覚めたくなかった覚めたくなかったあああああ!!嫌だ!続きを!続きを見させてくれええええええええ!!」
啓太はそう叫ぶと先ほど男からもらった錠剤を10錠ほど一気に飲んだ。
すると突然呼吸が出来なくなる。足には力が入らなくなり全身が痙攣し始めた。
叫び声を聞いて起きた母が部屋に入るころにはもう啓太はおとなしくなっていた。
そしてだんだんと冷たくなっていった。2017年4月24日(月)の出来事だった。
翌日のお通やでは、啓太の友達や知り合いの姿はなく、母のすすり泣く声だけが響いていた。
目が覚めると、目尻から涙が流れていた。何の夢を見ていたのかよく覚えていないが、なんだか気分が悪い。昨日は早めに寝たはずなのに、なんだか少し疲労感があった。
最近は、変な夢ばかり見る。
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