最期の時まで、君のそばにいたいから

雨ノ川からもも

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ある日の会話

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「――死にたい気持ちを消すには、どうしたらいい?」
 隣から聞こえてきた思わぬ質問に、ニンジンを切る手が止まる。危うく指まで切るところだった。
 突然何を言い出すんだ、この子は。
 今日だけじゃない。たまに、歳のわりにえらくませた質問や発言をするときがあるから、戸惑ってしまう。
「えっ……?」
 驚いて聞き返すと、傍らに立つ少年は「コウタがね……」と沈んだ声で切り出した。
「泣いてたんだ。あいつ、いつもうるさいのに、今日は朝からなんか元気なくてさ。訊いちゃいけなかったのかもしれないけど、ほっといたらどんどん落ち込んでいっちゃう気がして。我慢できずに、昼休みに『どうしたの?』って声かけたら、それで泣いちゃって」
 コウタとは、普段からちょくちょく話題にのぼるクラスメイトだ。我が家にも何度か遊びに来たことがあるけれど、明るく活発な男の子で、たしかに泣き顔を想像できない。
「ちっちゃい頃からずっと一緒だった猫が、死んじゃったんだって。その猫、ちくわって名前らしいんだけど、『ちくわがいない毎日なんて耐えられない。俺も死にたい』って言ってて……」
 失礼かもしれないが、自殺願望のきっかけが案外無垢むくなものだったことに一安心しつつ、十歳にも満たない子供ですらやはりそんなふうに心を痛めるのだな、とぼんやり思った。
 悲しみの大きさは、人生の長さや場数には比例しない。するとしたら、悲しみをもたらした事柄そのものに対してだ。
「僕だっていろいろ思うことはあったよ? 『そんなこと言っちゃダメだよ』とか『そんなことしたってちくわは喜ばないよ』って言ってあげたかった。でも、どれも違う気がして」
 綺麗事嫌いはあの人――彼の血かしら、と悠長に考えている横で、少年は剥き終えた玉ねぎをこちらに寄越すと、真剣な表情で問うてくる。
「ねぇ、僕はどうすればよかったのかな……」
 目が潤んで見えるのは、玉ねぎを剥いていたせいだろうか。縋るような瞳で見つめられ、なんと答えるべきか悩んでしまう。
「うーん、そうねぇ……」
 返答を待つ少年の眼差しが、彼のそれによく似ていて、遠い昔を思い出した。
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