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欲発剤

直也の大事な者

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 てんは思い出すように白斗はくとに語り出す。


 あれはまだ4歳の時、白斗にとって直也は喧嘩ばかりしている両親の代わりの拠り所。白斗はもうその時には直也に依存していた。
 でも、一回だけ直也がトラウマになる出来事がこの時起きた。それは神瀬かみせと言う家柄の為直也は誘拐されてしまった。
 神瀬と言う苗字は有名だ。男高を作ったと言えるほどや研究者の一人だからだ。
 男高の要である妊娠欲発剤は神瀬が作ったと言っても過言じゃない。一般人には知られていないが一部の裏組織には知られていた。そのため悪用したい人はその薬が欲しい。だから直也を誘拐した。人質として。
 白斗は直也がいなくなったことを自分のせいだと思い一人で探し始めた。でも幼い白斗一人の力では簡単には見つけられない。だから、幼い頭で白斗はあることを考えた。
 『自分が直也の代わりになれば良いんだ』
と。早速、白斗は公衆電話で直也に電話をかけた。予想していた通り出たのは誘拐した犯人の声だった。
 「な、なおやを離してください。ぼ、僕がなおやの代わりになります。ぼ、ぼくの母のおじいちゃんは〇〇会社の社長をなんです。ぼくを人質にしたらくすりもお金もたくさんもらえます。」
 そう犯人に行った。犯人はそれをあっさり信じた。場所を決め、そこで犯人を待った。すぐに来た犯人達は白斗を連れて行った。  
 犯人達は大丈夫だと思い縄も何も付けずに白斗を直也を閉じ込めている場所に入れた。
 「白斗!なんで」
 「助けに来たよ。」
 縄を解いて通気口を通るよう直也をさとした。直也は当然、白斗も来ると思ってた。でも、白斗は来ない。通気口を出て「白斗!」と声をかけたが白斗が通気口から、姿を消した。最初までいたはずだったのに・・・そこで直也は両親に見つけられた。誘拐されていたことは白斗よりも先に知っていたし、白斗が電話して連れて行かれるより先に誘拐されている場所も分かっていつ侵入するかを相談していた時に直也がひょこっと通気口から顔を出し通気口に向かって「白斗!」と叫んだ。だから両親達は理解した。白斗がまだ捕まっていると。直也に色々聞いた。

 白斗は俺の身代わりになったんだ。

 白斗は最初俺といたんだ。

 白斗は俺を助けに来てくれんだ。

 白斗は?

 白斗を助けないの?

 直也はずっと白斗は、白斗はと両親に言っていた。

 「直也。白斗君助けに行くから、病院行って来て、怪我してるかもしれないから」
 「白斗と行く!白斗がいないと行かないから」
 
 困った両親達は白斗を助けに向かった。
 


 犯人は無事捕まった。白斗も殴られた以外に何もされていなかった。

 直也にとってこの日は忘れられることのない悲しい日となった。

 俺が・・・直也が白斗だけは守ると決めた日でもあった。
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