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本格的に

遠くに(1)

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 「・・・はぁ」
 ため息をついて自分の部屋の窓から中に入る。
 大家が志綾しあのことをあやと呼んでいた人物は志綾ではなく別人だった。志綾は名前が似てると言うことで本物の綾に許可をもらい綾に扮して大家と会話をしていた。それをし始めたのは結構昔だった。大家と仲良くなったのは部屋を貸してもらうため。現に駿河音するがねがお世話になることが出来た。志綾はそう言う繋がりを人一倍大事にして来た。たとえ、名乗る、見てくれている相手が志綾本人ではなく違う誰かだとしても。
 志綾に「どうして別人として仲良くなるんだ?見ている人物は志綾様本人じゃない」と誰かが質問したことがある。その人の質問に志綾は「それでも、話してるのも聞いているのも全て私だから。それに今から私が仲良くなったところで別人のように仲良くなるのは難しいから」と笑顔で答えた。
 大家さんが知っている『綾』は近所に住む娘さん。大家さんとは昔からお世話になっていた。綾は大家さんに言っていなかったが病弱なためいつからか顔を見せに行くことが出来なかった。そこで志綾が綾の前に現れた。
 「綾さん。私に綾さんとして大家さんと過ごしたいんです」
 そう言われて少しだけ悩んだが承諾した。志綾は理由を聞いたを
 「本当は私自身が行きたいんだけどもうこの体じゃ会うこともままならないわ。それに来なくなった理由が病弱だからなんて大家さんに心配かけてしまうし。大家さんには笑顔でいて欲しいの。貴方も仲良くなれば分かるわ。大家さんの笑顔はたくさんの人を笑顔にしてくれるの。だから、貴方が大家さんの笑顔を守って、お願いね。」
そう呟いた。
 綾はそれ以来病状が悪化して入院になってしまった。
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