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1章 はじめまして
赤い記憶
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遠い昔の記憶にはいつも視界に赤があった。
物心が着く頃から目の前の光景が私の当たり前で私の世界の全てだった。
それまでは真っ暗でなにも覚えていない。
「た、たすけ…」
人気のない長い長い廊下に響き渡るか細い声。
そこにいるのは服はボロボロになり、高貴そうな服を着た中年男性が仰向けで目の前の幼い少女に手を伸ばしていた。
「殺せ。」
ザシュッ。
暗闇の中から発せられた低い言葉と同時に顔色一つ変えず目の前の男の首を切り裂いた。
男は「ゴポッ」と口から溢れる赤い液体に溺れながら背中を地面につけ宙を見つめる。
さらに見た目からして似合わない自身の身長よりも大きく重そうな剣を振り上げて胸に突き刺す。
男はその瞬間ビクッと小さく体を跳ねて動かなくなった。
少女はゆっくりと顔を上げ、目の前の暗闇を見つめる。
しばらくすると暗闇だった長い廊下の奥から月明かりが長い廊下の奥から段々と照明のようにいくつもの窓から照らされていく。
そこには床までもある黒いマントを被った人らしきものがいた。
フードの部分は大きく覆われていて顔は見えない。
それはもう死んだであろう先程の貴族の前に近づき手に持っていた十字架を剣が刺さった胸に置いた。
「よくやった。これで彼もようやく神のご意志が理解できるだろう…。」
フードで顔は見えないが、声からして男と思われる人物が、ゆっくりと少女に近づいていく。
「…。」
少女は何も答えない。いや、答えないのではなく答えられないのだ。
自分が今なにをしたのか、そして今なにを言われているのかわからないからだ。
少女の心を例えるなら今、感情のない機械という言葉が相応しいだろう。
「お前は本当に人形にようだな。」
男が独り言のように少女に話しかけ、そして続ける。
「いいか。よく聞け。お前はただの道具だ。道具は道具らしく、何も感じるな。何も考えるな。」
少女は目の前まで来た男を見上げるが、それでもフードの中は暗闇で見えない。
男の身長が高いからか、少女の首が真上まで向いているが、その目と表情には苦しそうな表情が見当たらない。
ただ無表情に真っ直ぐに男を見つめている。
するとその時、
──バーン!!ガシャンガシャン!ドダドタ!
「侵入者を探せ!発見次第、ただちに拘束せよ!」
突然、男が来た方角からドアが破壊された音と金属同士が当たっている音が聞こえ、それに負けず複数人の足音が先程まで静かだった廊下に響き渡った。
「チッ。 随分と遅いご到着だな。」と、男は舌打ちをして少女の耳元で命令した。
「行け。」
するとその瞬間、少女は風のような速さで音がする方へ走り去って行った。
物心が着く頃から目の前の光景が私の当たり前で私の世界の全てだった。
それまでは真っ暗でなにも覚えていない。
「た、たすけ…」
人気のない長い長い廊下に響き渡るか細い声。
そこにいるのは服はボロボロになり、高貴そうな服を着た中年男性が仰向けで目の前の幼い少女に手を伸ばしていた。
「殺せ。」
ザシュッ。
暗闇の中から発せられた低い言葉と同時に顔色一つ変えず目の前の男の首を切り裂いた。
男は「ゴポッ」と口から溢れる赤い液体に溺れながら背中を地面につけ宙を見つめる。
さらに見た目からして似合わない自身の身長よりも大きく重そうな剣を振り上げて胸に突き刺す。
男はその瞬間ビクッと小さく体を跳ねて動かなくなった。
少女はゆっくりと顔を上げ、目の前の暗闇を見つめる。
しばらくすると暗闇だった長い廊下の奥から月明かりが長い廊下の奥から段々と照明のようにいくつもの窓から照らされていく。
そこには床までもある黒いマントを被った人らしきものがいた。
フードの部分は大きく覆われていて顔は見えない。
それはもう死んだであろう先程の貴族の前に近づき手に持っていた十字架を剣が刺さった胸に置いた。
「よくやった。これで彼もようやく神のご意志が理解できるだろう…。」
フードで顔は見えないが、声からして男と思われる人物が、ゆっくりと少女に近づいていく。
「…。」
少女は何も答えない。いや、答えないのではなく答えられないのだ。
自分が今なにをしたのか、そして今なにを言われているのかわからないからだ。
少女の心を例えるなら今、感情のない機械という言葉が相応しいだろう。
「お前は本当に人形にようだな。」
男が独り言のように少女に話しかけ、そして続ける。
「いいか。よく聞け。お前はただの道具だ。道具は道具らしく、何も感じるな。何も考えるな。」
少女は目の前まで来た男を見上げるが、それでもフードの中は暗闇で見えない。
男の身長が高いからか、少女の首が真上まで向いているが、その目と表情には苦しそうな表情が見当たらない。
ただ無表情に真っ直ぐに男を見つめている。
するとその時、
──バーン!!ガシャンガシャン!ドダドタ!
「侵入者を探せ!発見次第、ただちに拘束せよ!」
突然、男が来た方角からドアが破壊された音と金属同士が当たっている音が聞こえ、それに負けず複数人の足音が先程まで静かだった廊下に響き渡った。
「チッ。 随分と遅いご到着だな。」と、男は舌打ちをして少女の耳元で命令した。
「行け。」
するとその瞬間、少女は風のような速さで音がする方へ走り去って行った。
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