ラスト・バスティオン伝説 ~最後の勇者と最後の砦~

Tea

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第一章 初心者冒険者編

20話 レア薬草

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 翌朝、シルトたちはメディーカにより起こされた。
 メディーカはかなりしっかりとした生活リズムで日々暮らしているようだ。
 三人は起きたばかりで頭が覚醒しきっていないまま部屋を出てダイニングへと行くと、すでに朝食が準備されていた。
 机にはパンやサラダなどが並べられている。
 簡易的な料理ではあるが、朝食にはもってこいのメニューと言えるだろう。

「三人ともお寝坊さんだな。日が昇るのと同時に起きないと一日の調子が狂うだろう?」

 日の出と同時に起きるというメディーカ。
 かなりの早起きだということが判明した。

 シルトたちは眠い目を擦りながらチビチビと朝食を食べる。
 ゆっくりと朝食を食べ、食べ終えたころには目も冴え始めていた。
 食後にメディーカが特製ブレンドの美味しい飲み物を出してくれ、三人はそれを啜りながら今日の予定を立てる。
 予定といっても、アンファングの街に帰って冒険者ギルドに薬草を買い取ってもらうだけなのだが。

 朝食後に少しゆっくりしてから三人はメディーカの家を去ることにした。

「メディーカさん。一晩泊めて頂いてありがとうございました」
「もう行くのか……。いつでも遊びに来てくれ! しばらくはここに居る予定だから!」
「はい!」

 玄関前で別れの挨拶を交わす。
 メディーカは少し寂しそうな表情を浮かべるが、また来て欲しいとシルトたちと約束をする。
 断る理由も特にはないシルトたちは快く返事をするのだった。

 シルトたちが玄関の扉を開けて帰ろうとしたとき、

「あっ、そうだ! 少し待っててくれ!」

 とメディーカが何かを思い出したように家の奥の方へパタパタと駆けていく。
 言われた通りシルトたちが玄関で待っていると、何かが詰まった袋を持ったメディーカが戻ってきた。
 袋を両腕に抱えて一生懸命に駆けてくる姿は可愛らしいものである。
 そして、その袋をシルトへと手渡す。

「これはなんですか?」
「その袋には薬草が詰まってる。薬草採取の依頼を受けていると言っていただろ? 少しでもシルトたちの冒険の足しになればと思ってな!」
「こんなにいっぱいもらっていいんですか?」
「ああ。持って行ってくれ! その代わりといってはなんだが、また遊びに来てくれると嬉しい」

 メディーカはシルトたちの目を見ながらそう呟いた。
 きっと森の中で一人暮らしをするというのはとても寂しいのだろう。

「必ず来ます!」

 またメディーカに会いに来ようと三人は心に決めるのであった。

 シルトたちはメディーカの家を後にし、無事に森を抜けることができた。
 そして街道に出ると、アンファングの街に向けて意気揚々と歩き出すのだった。

 もう歩き慣れた街道だ。
 特に問題など起こらずに街へと辿り着くことができた。
 そして、街に着いてからも歩き慣れた通りを歩いて冒険者ギルドへと向かう。
 冒険者ギルドに入るといつもの受付のお姉さんの下へと向かい、依頼の達成を報告する。
 そういえばこのお姉さんはいつも受付をしているけど休んでいるのだろうか。
 そんな疑問も頭を過るが、

「シルト様、ロゼ様、リヒト様、お疲れ様です」

 と冒険者を労いながら、疲れた様子を伺わせない素敵な笑顔を浮かべられると疑問もどこかへ吹き飛んでしまう。
 冒険者に癒しを与えるような笑顔は、流石は受付のプロといったところなのだろう。
 さっそくシルトたちは薬草を提出することにした。

「薬草採取の依頼を受けていたので、薬草の鑑定をお願いします!」
「分かりました! では皆様が採取された薬草の鑑定を行いますね! 少々お待ちください」

 薬草の袋を受け取ったお姉さんは受付の奥の方に行き、おそらく薬草の鑑定を行う担当者であろう人物と一緒に鑑定を始めた。
 結構な量がある薬草の鑑定まで行うとは、受付のお姉さんの仕事量は凄まじいものだ。
 体を壊さなければいいけど、と三人は思いながらも鑑定結果が出るまで待つことにした。

 そして数十分後、鑑定結果が出たということなのでシルトたちは受付へと戻ってきた。
 すでに報奨金が用意されているようだ。

「今回の薬草採取の報奨金はこちらになります」

 お姉さんがシルトたちへとお金を差し出す。
 その金額はシルトたちが予想していた金額を遥かに超えるものだった。
 ビックリしたロゼは、

「こんなにもらっていいんですか? 相場よりもかなり多いような……」

 とお姉さんに確認を取る。
 するとお姉さんは、はい、と笑顔を向けてくれ金額が多い理由を述べてくれた。

「皆さんが集めてくれた薬草なんですが、一般的な薬草がほとんどだったのですが、一つの袋の中にとても貴重な薬草が詰まっておりましたので、こちらの金額になります。現在不足していた薬草だったので少し色もつけさせていただきました」

 どうやらメディーカがくれた袋にはかなり貴重な薬草が詰まっていたらしい。
 シルトたちはメディーカに感謝しながらありがたく報酬を受け取ったのだった。

 報酬を受け取ったシルトたちは、まだ昼頃なので新しい依頼を受けることにした。
 冒険者たるもの依頼は次々にこなしていくものだ。
 冒険者のランクを上げるためにも功績を残すというのは重要なことなのである。

 ということでクエストボードの前で依頼書とのにらめっこが始まった。
 この光景は冒険者ギルドでは日常茶飯事のものであり、どの冒険者も必ず通る道なのだ。
 どの依頼にするか悩む三人。

「どうする?」
「どうしましょうか?」
「シルト兄、ロゼ姉、今回は討伐依頼にしてみない?」

 リヒトが二人に提案をする。

「どうしてだ?」
「昨日森でシルト兄がシャドウファングを倒したでしょ? だから、僕たちも魔物に勝てるんだなと思ったんだ! それに魔物を倒さないと冒険者ランクも上がらないし」

 冒険者ランクを上げるためには魔物の討伐が一番の近道であるのは確かなことである。
 強い魔物を倒したものにはそれに相応しいランクを与えるというのが冒険者ギルドの考え方なのだ。
 今の世界情勢から見ても、魔物の被害を抑えることができる冒険者が重宝される。
 そのため、腕に自信があればそれなりのランクまでは上がれるのだ。
 しかし、簡単に倒せる魔物を倒していてもランクが上がるはずもなく、だからといって強い魔物に挑めば命を失う。
 冒険者ランクとはその人物の力量を見分けるのにもってこいの制度なのである。

 そして現在シルトたちはシルバー級冒険者。
 これは初心者中の初心者を現す。
 なので、まずは一つ上のゴールド級を目指そうというのがリヒトの考えである。
 冒険者のランクを上げれば受けられる依頼の幅も増えていき、おのずと行動範囲も広くなっていく。
 いわゆる冒険者の醍醐味というやつだ。
 それに、シルバー級で受けられる依頼の報酬では日々の生活でいっぱいいっぱいになってしまう。
 そのため冒険者ランクを上げるというのは冒険者として生きていくうえで重要な事項ともいえるのだ。

「リヒトの言う通り、そろそろ冒険者ランクも考えなきゃだな……。おっ、この依頼なんかどうだ!」

 シルトは一枚の依頼書を見つけた。
 内容は、『ブリリアント平原に生息するグラインダーアントの討伐』である。
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