頂点捕食者のビーストイーター ~追放された少年は世界でただ一人の異能である『捕食』を駆使しSSSランクへと進化する~

Tea

文字の大きさ
2 / 3

2話 揺らぐ気持ち

しおりを挟む
「はぁ……」

 つい溜息が出てしまった。
 今後のことを考えると憂鬱になってしまうからだ。

 俺は今、森の中の街道を歩いている。
 ギルドから追放……というか退団してから新たな土地を目指して歩いているところだ。
 できることならあまり遠くには行きたくないな~と思っていたけど、どうやら俺にはここら辺では住んでいけないことが判明した。

 今までは由緒ある冒険者ギルド「セイクリッド・クルセイダー」に籍を置いていたから街でもそれなりの扱いだったけど、ギルドを退団した後、街の宿で一泊しようとしたらあからさまに嫌な顔をされるし、人気の少ない路地で女性とすれ違ったときなんか大声で叫ばれてしまった。
 まるで猛獣にでも遭遇したかのように。
 それ以外にも道具屋では「お前に売るものはない」と言われたし、この地方を出るために馬車に乗ろうとしたら断られるし、どうやっても生活していけそうにない。

 一人で生きていくには悪い印象が付き過ぎたみたいだ。
 今まで相当ギルドに護ってもらっていたらしい。
 失ってから気づくなんてな。

 だから、ギルド長に言われた通り遠くの地方を目指すことにしたんだ。
 俺のことが知れ渡っていない場所で新しい生活を始めるために。

 落ち込んだ俺に対して自然は優しかった。
 この森は爽やかな風が通り抜けて葉擦れの音が耳に心地よい。
 ここはジメジメした森ではなくて、木漏れ日が差し込み鳥のさえずりが聞こえる良い場所だ。
 こんな状況じゃなかったらピクニックでもして心の底から和めたかもしれない。

 俺の歩いている道はボコボコしているけど、一応道としては機能しているという感じだ。
 横幅はしっかりとしていて周りを気にせずゆったりと移動することができる。
 まあ、森の中の道なんて整備が大変だろうし大雑把な道になるのは仕方ないのかもしれないな。
 それに、こういう道を徒歩で移動する者は少ないだろう。
 この道を通るような行商人や旅人は馬車に乗るだろうから。
 まあ、乗れなかった俺が言うのもなんだけど。

 そしてこの森は、街からはそれなりに離れた場所にある。
 俺の育った地方の最果ての地だ。
 だから、この森を抜ければ別の地方に入るというわけ。
 俺からすれば未知の場所だ。
 別の地方ってどんな感じなのかな?

 ただ、念のために次の地方は通り抜ける予定でいる。
 人の噂っていうのは意外と広まっていると言うから。
 商人などは地方を越えて仕事をするから、その出入りで俺の噂が広まっているかもしれない。
 新しい生活を始めるには、もっと遠いところを目指さないといけないのだ。
 それを見越してギルド長はたくさんお金をくれたのだろう。

 森の中の道を歩き始めてから数時間。
 暖かい日差しが木々の隙間から入ってくる。
 時刻は昼過ぎといったところだろう。
 まだまだ日は高く昇っているらしい。
 このペースで歩けば今日中には森は抜けられるかな?
 今日は野宿したくないな……。
 ここ最近野宿続きだし、せめて宿には泊まりたいところだ。
 もしかしたら宿の人が俺の噂を聞いているかもしれないけど、ちょっと嫌な顔をされても泊まっちゃおうかな。
 お金はきちんと払うわけだし、別に悪いことするわけじゃないもんな。

 よし、今日の目的も決まったところだし、頑張って森を抜けよう!
 久しぶりのふかふかベッドだ!

 落ち込んでいた気分を高めながら、足取りを早める。
 その時、

「ぴゃあー!!」

 俺の高ぶった気持ちを一瞬で冷却する悲鳴が森に響き渡る。
 声の感じから女の子の悲鳴だろう。
 かなり切羽詰まった声色に聞こえた。

 森だから魔物に遭遇でもしたのかもしれない。
 森なんて魔物が巣くっていてもおかしくない場所だからな。

 助けに行かなきゃ!
 俺の思考は救出一択だ。
 悲鳴は街道から逸れた森の中から聞こえた。
 距離としてはそこまで離れていないはず。
 さっきの悲鳴でだいたいの場所の見当はついた。
 耳には少し自信があるからな!

 足にグッと力を入れて走り出す。
 急がなきゃ手遅れになってしまうかもしれない。

 最初こそ気合を入れて悲鳴の方へ駆けだしたのだが、すぐに足取りが重くなってしまう。
 もし、助けに行った俺を見て叫ばれたらどうしよう。
 俺のことも魔物と思われたら……。
 そうなったら俺の心は砕けるかもしれないな。
 女の子が俺のことを知っていたら十中八九怖がられるだろう。
 あんな思いをするのはもう嫌だな。

 まさか人助けするのにも躊躇するようになるなんて……。
 気づかないうちに人間不信になったみたいだ。

 助けに行かない方が俺の精神的には良いかもしれない。
 そんなことまで頭に思い浮かんでしまう。

「どうせ、俺なんて魔物を食う不気味な奴だよ……」

 誰からも返答の無い独り言。
 つい口から零れてしまった俺の本心。

 やっぱり助けるのは止めよう。
 可哀そうだけど、俺はこれ以上傷つきたくないんだよ……。

 拳を握りしめて歯を噛みしめる。
 魔物に襲われているであろう女の子を想像するだけで自然と力が入るのだ。
 これが良心の呵責ってやつか?
 悪魔と呼ばれるような俺でも良心があるんだな……。
 もはや自分自身が何者なのかも分からなくなってきた。

「助けて……」

 風のそよぐ音に乗って絞り出すような声が聞こえてくる。
 小さな小さな声だが、間違いなくさっきの女の子の声だ。
 声からは恐怖と諦めが滲んでいる。
 どうやら危機的状況に陥っているらしい。

 なまじ耳が良いためにこんな声まで聞こえちまうんだよ!

「今行くからな!」

 俺の足は動いていた。
 あんな声聞かされて動けないのは男じゃねえ!
 どうせ嫌われてる存在なら、せめて最高にカッコつけよう。
 ここで保身に走るのは愚行だ。
 ダサいだけの存在にはなりたくない。

 そうだ!
今、俺は最高に腹が減っている。
 昼飯時だしな。
 これは人助けじゃない。
 腹を満たすために魔物を狩るだけだ!
 食事のついでに誰かが助かったって俺の知ったことじゃない。
 ただの偶然だ。

 俺は女の子を目指して、街道を逸れた道の無い森へと飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された検品係、最弱の蛇に正しく聞いたら鉱脈を掘り当てた ~この世界は精霊の使い方を間違えている~

Lihito
ファンタジー
精霊に「やれ」と言えば動く。この世界の全員がそう信じている。 レイドだけが違った。範囲を絞り、条件を決め、段階的に聞く。それだけで最弱の蛇は誰より正確に答える。——誰にも理解されず、追放された。 たどり着いた鉱山町で、国が雇った上位精霊が鉱脈探査に失敗し続けていた。高性能の鷹が毎回違う答えを返す。 原因は鷹じゃない。聞き方だ。 レイドは蛇一体で名乗り出る。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...