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第2章

第8話 自称美貌の珍獣は傍若無人だよ

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「最初の星に着いたみたいだな」
「ええ、感覚的には地球と似た磁場を感じますね。」
『お腹空いた、何処でランチにする?』

「「…………」」

「真琴、ゼノバゼロス様の所から一瞬で移動したんだから、腹がすく訳ないだろうが、もう少し緊張感持てよ。それで、何故その姿なんだ?お前その姿嫌がってなかったか?」

『これ?う~ん、初めはビックリしたんだけどさー、慣れると前世の姿とか他の姿よりも何故かしっくりくるしスキル使うのも楽な気がする。後これが一番の理由でさー、この姿の俺ってば庇護欲書き立てるくらいに可愛いと思うんだよ。きっとこれから出会う神様達メロメロになるね、ニャハハ。』

「「…………」」

何処にいても変わらず真琴は真琴だと思っていたが、止めのように転生と言う非常識な出来事で更に常識が通用しない究極ポジティブ生命体になったのだと奏多と桜は改めて理解するのだった。

「とりあえず飯はいつでも食えるから、ちょっと待て、先にこの星の神様に会いに行くか、この星がどんな星なのか見るのが先か、それを決めてからでいいだろう」

「そうですよ真琴様、急ぐ旅ではないですが初歩的な行動指針は決めておいた方が楽だと思います。」

『任せるよーだから!!』

「……ああ、分かった、飯な。桜、取りあえず弁当食わせろ。ペットに転生した影響なのか前より食い意地が汚い気がするぜ。」

星を巡る旅に出る前に奏多の提案で真琴の取り寄せスキルを使い大量の出来立て料理や飲み物を魔法で創ったアイテムボックス(無限)に収納済みだった。これは奏多と桜二人が共通で取り出せるものでカモフラージュの意味から奏多は腰に取り付けタイプのサイドバック、桜は籐製バスケット、真琴に無いのは単純に面倒くさいとの本人の意向だけであった。もっとも大元の空間魔法を使ったアイテムボックスの管理者は真琴なのだからその気になれば自由に取り出し可能だ。その証拠に現在進行形で自分で取り出したコークをがぶ飲みしている真琴だ。

◇◇◇◇◇


一番初めの訪問先と言うことで星の支配空間に移動しこの星の神様にご挨拶することにする。

「ん?其方そちたちは何処から迷い込んで来たのかね?
おおっ!その紋章は宇宙創造神様の!」

『さすが、神様、一目で宇宙創造神様の証だと気が付くね』

「それはもちろんです。貴方たちはいったい?」

『初めまして~俺は、宇宙創造神様ゼノバゼロス様の……』

「?」

「ああ、すみません。ゼノバゼロス様の代理補佐で星々の巡回を仰せつかった奏多と申します。そしてこちらがペットの従者で桜。そして、途中で言葉が止まっているその珍妙な生き物が不本意ながらゼノバゼロス様の代理で珍獣ペット【チビバニボー】の真琴です。」

『うお~いっ!なんて紹介だよ!人がペットと言いあぐねている隙に』

「いや、お前人の姿してないから、【チビバニボー】だから自分で言ってただろ?一番可愛いって」

『はっ!そうだった、ハハハ!そうです俺がゼノバゼロス様が唯一愛してやまないビューティーペット真琴であ~る!』

「「「…………」」」

奏多も桜もこの星の神まで真琴のセリフで黙りこくってしまった。

《おろ?なんで奏多たちまで黙るんだ?俺様の美貌なんて嫌になるくらい見慣れているだろうに。ああ、桜は偉大な飼い主に更なる尊敬の眼差しってところか。奏多は毎度だ、思いに答えてやれないといつも言ってるのにな。》

奏多と桜、そして訪問先の神までも真琴とは正反対の事を思っていた。先が思いやられると呆れる奏多たちであった。


「巡回とおしゃりましたか?それでは宇宙創造神様はこのアムの報告で貴方様方を遣わして下さったのですね。いつもは、全てこちらに任せると一言で終わりでしたが、やはりこたびは聞き届けて頂けたのですね、有難いことです。」


《う~ん、この人何言っちゃってるのかな?ゼノバゼロス様何も言ってなかったよな?だって俺、遊びに来ただけだもん。ここは何も聞かなかった事にして……》

「はい、アム神様、宇宙創造神様から話は伺っております。アム神様が統べている星々の一つで破壊神が生まれたとか。その解決に参りました。」


《えええっ???何言っちゃってるのかな奏多君。そんなこと初耳ですが?なに破壊神って?怖っ!えっ?桜も知ってましたみたいな反応?どゆこと?世界旅行でしょう?うふふ、あははの楽しい旅でしょうがっなんだろうね、異世界だから冒険でしょうみたいなノリは。奏多君、ラノベ読み過ぎ、たまに借りて読んだことあるけどさ、あれはラノベ世界でこっちは現実だからね~そこ間違えないで。》


「ああ、真琴は聞いてなかったんだな、今回の旅の目的は神様たちから宇宙創造神様へのSOSに応えることだからな。観光旅行じゃないから、お前こそ間違えるなよ。」

『おう!なんてこったい!うまい話には裏がある的な事なのかっ!ゼノバゼロス様!いったいどういうことですかね!』

真琴は自分の首輪に付いているゼノバゼロス神への連絡通信機でいきなり創造神相手に文句を言い放つ。
アム神はそんな真琴の暴挙を唖然と見つめていたが、奏多達はまたかとあっさりスルーしていた。

(真琴か?無事に着いたようじゃの、何かあったのかな)
『何かじゃないでしょう!ゼノバゼロス様に言いましたよね?観光で遊びに行ってくるって。ここで悪者退治するみたいな流れになってるのってゼノバゼロス様の仕業ですかね!」

(おお、そんな事か)
『そんなじゃないでしょう!プンプン!』

(フォフォ、それは奏多達に頼んだ事だの。真琴の旅行が本命でSOSは単なる暇つぶしじゃよ。心配はいらん、奏多に任せておけばよかろうて。でもの、真琴はワシの次に能力が高いからの~悪者退治も指一本で済むじゃろうがな、フォフォフォ)
『なんだー、ごめんね~ゼノバゼロス様大声出して。怖くてビックリしちゃったんだよ。ハハハハハ、
でもそうだよね~俺ってば強さも半端ないもんね~旅行のついでに暇つぶし討伐もいいかも!」

(フォフォ、そうじゃの、楽しんでおいで)
『分かったー、ゼノバゼロス様、またね~』

「「「…………」」」

相変わらずの宇宙創造神と真琴のやり取りに奏多と桜はまたかと呆れ気味。しかしアム神は神の頂点である宇宙創造神に対して何とも不敬で恐れ多い言動をしている珍妙な生き物に呆れよりも恐れと尊敬の念を抱き始めていたのである。


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