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第2章

第16話 それじゃ、後はよろしく!

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「しかし、この街の住人は異世界人の召還に慌てないな」

「ええ、違和感があるくらいですね」

『…… アム神! プリーズかむひあ~』

 《真琴様 ! およびでございますか ? 》

「「…………」お前ってヤツは!! 」

『ええー、だって神様に聞くのが一番早いじゃん』

 《奏多殿、良いのです。いつでも呼んで頂いて構いません。
 それでいかが致しましたか ?》

 奏多は、真琴が呼び出したであろう理由をアム神に説明し始め、結果いとも簡単にその理由を知ることになり、その理由にさすが原始の星の住人だと納得をすることになった。

 アム神の説明によれば、この星を創生して原始の生命を創り出したときに、神々からの支援や改革に困惑、混乱を引き起こさないように、神による精神干渉が生み出された瞬間に発動されるようになっていて、今回の出来事も住人たちには見えなくても、神気を帯びている真琴を本能で感じ取り、真琴が引き起こした現象に、なんら疑いを持つことがないと言うものだった。

『ふーん、やっぱり生命実験星じゃん! まぁ、住人に害はなさそうだから
 問題はないだろうけどね、でもさ、原始でも食の改善は譲れないからね』

 《食の改善ですか、はて、衣食住についての制限は施しておりませんが》

『制限してなくても、やっぱりこの星の人間はまだまだ発展途上なんだよね。
 他種族との交流も無く、狭い中で平和に暮らしているから現状に満足してる。
 たぶんだけど、神による精神干渉の影響が出てるんだと思うよ』

 《成程、言われてみればそうです。では精神干渉を外しましょうか? 》

『ん? それは別にいいよ。だってこの星の役目は種族を生み出す事でしょう。
 下手に外したら、色んな問題が一気に出てきても嫌だしこのままでいいよ。
 ただし、アム神が俺がこの星ですることを全てOKしてくれるならね』

 《それはもちろん、真琴様のお好きなようにして頂いて構いません。
 必要であれば、何なりとお手伝い致しますが? 》
  
『それは大丈夫だよ、アム神をこき使うと奏多に文句言われるから』

 《…… それは、残念です。奏多殿 —— 》

「ああ、そんな残念そうにしないで下さい、アム神様。
 まだまだこの星には滞在する予定ですし、アム神様の所へも立ち寄りますから」

『ええー「ゴホン、ゴホン!」…… ソウダアムシンノトコロニイクヨ』

 《おお! 真琴様、必ずですぞ。神域でお待ちしております》

『はいはい、アム神じゃーねー 』

 真琴がアム神へ右手をかざして横に振るうと、現れた時と同じように唐突にアム神が消え去ってしまい、その光景に奏多と桜はまたしても口を閉ざしてしまっていた。

 真琴が地球から召喚した食の改善スタッフ達は、この星では違和感なく活動出来ると知ったことで、焼き鳥屋店長に好きなように改革を推し進めて大丈夫と、丸投げから一歩進んだOKサインを出していた。
 メインはこの街の名物、鉱山豚の串焼き改善。
 真琴は、店長によろしくと手を振りながら、次の街に向かうことを告げていた。

『店長、俺たちこの国の首都であるフォルトザに向かわなければならないんだよ。
 地球から召喚された店長なら信じてくれるだろうけど、神様の命に従い国々を巡回する
 大変な使命を受けているんだ。食の改善を一緒に出来ないのが残念でならないよ』

「「………… 」真琴。。。」

「おおよ! 任せておきな! いきなりこんな所に来たときはビックリしたが、
 こんなマズイ串焼きは俺でも許せねえからな。期待に応えて見せるからよ。
 真琴様は、神様の眷属なんだろ? 何かあれば連絡するからよ、お勤め頑張ってくれよ」

『ククッ、店長! あんた最高だよ! 安心して任せられるね。
 改善が済んだら連絡を入れてくれ! どんなに忙しくても戻るから。
 それじゃ、店長よろしく! さぁ、奏多、桜、神よりの務めを果たそう! 』

「…… 「アアソウデスネ」」

 奏多の桜は遠い目をして、真琴の話に感動をしている店長をはじめとした、《五感を呼び起せ"ハルフルの街"食への飽くなき挑戦》のメンバー全員の熱い視線から目を逸らしていた。
 そして真琴は今度ここに来るときは、美味しい鉱山豚の串焼きが光り輝くタレを纏って、俺を至福の世界へ誘うだろうと、よだれをこぼしそうになる妄想を抱きながら、軽やかな足取りで街に一泊も留まることなく、再び首都へと旅立って行った。
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