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そのなな
絶え間無い嫉妬
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リシェはたまに遊ぶゲームでチャットをしていた。
最初は辿々しい手つきだったが、次第に慣れてきたのか操作もお手の物となっている。ただ、本格的にゲームをやるよりはプレイ出来る範囲内でのんびりとやるスタイルに留めている。
あまりがっつりやるのは性に合わないらしい。
今回も唯一出来たフレンドと仲良く会話をしていた。
会話と言うよりは、悩み相談のようなものだ。
プレイヤーネーム『肉食の赤フン』、もとい『赤フン』の日頃の悩み相談。
リシェが好んで親身に聞くというよりは、相手が一方的に喋っているだけだった。
…以下、チャット内容。
赤フン『今日も軽く言い合いしちゃった』
りしぇ『ほう、何で?』
赤フン『毎度毎度向こうに行っちゃうから、たまにはこっちでご飯一緒にしようよって言ったんだけどまたごめんって。何なんだろうね、どんだけ好きなんだろ』
りしぇ『もうほっときゃいいのに。飽きたら戻るだろ』
赤フン『だって、俺はそいつ含めて仲良くやりたいのにいきなり出て来た後輩に持ってかれるとか腹立つよ』
そこで初めて赤フンが男子だという事が分かった。リシェは向こうの相談内容があまりにも女々しくて、てっきり女だと思っていたのだ。
どうせ女子同士のいざこざだとそれまで流していた。
りしぇ『その後輩がどう考えてるか知らないけど、鬱陶しがられてると思うけどな』
赤フン『…だよね…もう、直接本人に言えばいいんだろうけどさあ…』
りしぇ『そいつがどう思っているかだな』
赤フン『一度会った事があるけどそいつ、どっちかと言えば地味なタイプでさ。陰キャってやつ?夢中になる意味が分からないんだ。そいつの事余程好きみたいで』
りしぇ『なんだ、会った事あるのか』
赤フン『あるよ。はあ、ほんとムカつくよ』
りしぇ『本人に言ってもダメならその後輩とやらに言えば?休み時間に引っ張り込むなってさ』
赤フン『そうだねぇ。あ、ちょっと用が出来た。また後でね。ありがと』
りしぇ『分かった』
回線が途切れ、リシェもゲームの電源を落とした。
同時に部屋にラスが戻って来る。
「あ、先輩。早く帰るなら言ってくれたら良かったのに」
「掃除当番じゃなかったし」
よいしょと鞄を机に置き、ラスははあっと溜息を吐いた。その溜息が珍しく感じ、リシェは「何があった?」と問う。
心配してくれるの?とラスは少し嬉しそうに笑った。
「こないだ会った友達にもう少し構ってくれって言われてるんです。気をつけなきゃなあって」
「お前がいちいちこっちに来るからだろ」
「先輩に会いたいのに」
毎度顔を合わせているのに、まだ足りないというのか。
「似たような事を赤フンも言ってたな」
「…赤フン?ああ、ゲームのフレンドですか?」
「どの学校にもあるんだな、こういう事」
会話の内容は電源を切った段階でクリアになるので履歴は見れないが、ラスは「よくあるんだ…」と少し変な気分に陥る。
リシェはゲーム機を机に片付けると「腹が減ってきた」と立ち上がる。
「先輩?どこに行くんですか?」
「食堂で晩ご飯の注文をしないと」
「あ、俺も行きます!」
寮の食堂にはその都度連絡をしなければご飯を用意して貰えない決まりがある。連絡を怠れば外に買いに行く事も可能だが、大抵の生徒は面倒がって食堂内で済ませていた。
リシェはラスと一緒に食堂へ向かい、表記された献立のセット内容を選んで注文を専用の申し込み用紙に記入してポストに入れる。
とりあえずその日の晩ご飯と、次の日の朝食分は確保出来た。用件は済んだ。
さて、戻るかと踵を返したその時。
「ラス!」
「あっ、ノーチェ」
前に会ったラスの友人ノーチェが近付いて来た。彼はリシェをちらりと見遣った後、軽く敵意を見せつつ「ちょっと彼に用があるんだけどいい?」と許可を求める。
ラスはきょとんとしながらリシェを見下ろした。
一方のリシェも首を傾げる。
「どうしたんだよ、ノーチェ」
「どうしたも何も…何でこの子がラスを引っ張ってんのかってね」
「俺が?ラスを?」
リシェはきょとんとしていた。
「そうだよ。大体一年のくせに遠慮ってものを知らないんだよ、あまりラスにちょっかい出さないでくれない?同部屋は仕方無いよ?ただ、休み時間にいちいち呼ぶなっての!どんだけ依存してるのさ!」
リシェは呼んだつもりもないし引っ張っているつもりも無かった。それだけに、はあ?としか言いようが無い。
「それはこいつに言え」
面倒そうなリシェはラスを見上げて答える。
「この前も説明しただろう。こいつが勝手に来るんだと」
えへへ、とラスは笑顔になる。
ノーチェはラスじゃなくてあんたに言ってるんだよとリシェに突っかかった。
「あんたが断ればいいだけだろ!」
「俺が断ってもこいつが勝手に来るんだからどうしようも無いじゃないか!」
堂々巡りになり、次第にリシェは面倒臭くなって「分かったよ」と折れた。
「分かった分かった。負けた負けた。だからラスはお前に譲る。それならいいだろう」
頭をかき、リシェは観念したように言った。
それを聞いたラスは悲しそうに「せ、先輩!?」と叫ぶと、その場から立ち去ろうとするリシェに何て事言うんですか!と嘆いた。
「後は勝手にやれ。俺はもう知らん。知らんぞ」
無駄な痴話喧嘩をする気力も沸かないリシェは、さっさと退場するに限ると判断する。
残されたノーチェはやり場の無い感情に、そういう問題じゃないんだよ、この陰キャ!!と毒を吐き捨てていた。
最初は辿々しい手つきだったが、次第に慣れてきたのか操作もお手の物となっている。ただ、本格的にゲームをやるよりはプレイ出来る範囲内でのんびりとやるスタイルに留めている。
あまりがっつりやるのは性に合わないらしい。
今回も唯一出来たフレンドと仲良く会話をしていた。
会話と言うよりは、悩み相談のようなものだ。
プレイヤーネーム『肉食の赤フン』、もとい『赤フン』の日頃の悩み相談。
リシェが好んで親身に聞くというよりは、相手が一方的に喋っているだけだった。
…以下、チャット内容。
赤フン『今日も軽く言い合いしちゃった』
りしぇ『ほう、何で?』
赤フン『毎度毎度向こうに行っちゃうから、たまにはこっちでご飯一緒にしようよって言ったんだけどまたごめんって。何なんだろうね、どんだけ好きなんだろ』
りしぇ『もうほっときゃいいのに。飽きたら戻るだろ』
赤フン『だって、俺はそいつ含めて仲良くやりたいのにいきなり出て来た後輩に持ってかれるとか腹立つよ』
そこで初めて赤フンが男子だという事が分かった。リシェは向こうの相談内容があまりにも女々しくて、てっきり女だと思っていたのだ。
どうせ女子同士のいざこざだとそれまで流していた。
りしぇ『その後輩がどう考えてるか知らないけど、鬱陶しがられてると思うけどな』
赤フン『…だよね…もう、直接本人に言えばいいんだろうけどさあ…』
りしぇ『そいつがどう思っているかだな』
赤フン『一度会った事があるけどそいつ、どっちかと言えば地味なタイプでさ。陰キャってやつ?夢中になる意味が分からないんだ。そいつの事余程好きみたいで』
りしぇ『なんだ、会った事あるのか』
赤フン『あるよ。はあ、ほんとムカつくよ』
りしぇ『本人に言ってもダメならその後輩とやらに言えば?休み時間に引っ張り込むなってさ』
赤フン『そうだねぇ。あ、ちょっと用が出来た。また後でね。ありがと』
りしぇ『分かった』
回線が途切れ、リシェもゲームの電源を落とした。
同時に部屋にラスが戻って来る。
「あ、先輩。早く帰るなら言ってくれたら良かったのに」
「掃除当番じゃなかったし」
よいしょと鞄を机に置き、ラスははあっと溜息を吐いた。その溜息が珍しく感じ、リシェは「何があった?」と問う。
心配してくれるの?とラスは少し嬉しそうに笑った。
「こないだ会った友達にもう少し構ってくれって言われてるんです。気をつけなきゃなあって」
「お前がいちいちこっちに来るからだろ」
「先輩に会いたいのに」
毎度顔を合わせているのに、まだ足りないというのか。
「似たような事を赤フンも言ってたな」
「…赤フン?ああ、ゲームのフレンドですか?」
「どの学校にもあるんだな、こういう事」
会話の内容は電源を切った段階でクリアになるので履歴は見れないが、ラスは「よくあるんだ…」と少し変な気分に陥る。
リシェはゲーム機を机に片付けると「腹が減ってきた」と立ち上がる。
「先輩?どこに行くんですか?」
「食堂で晩ご飯の注文をしないと」
「あ、俺も行きます!」
寮の食堂にはその都度連絡をしなければご飯を用意して貰えない決まりがある。連絡を怠れば外に買いに行く事も可能だが、大抵の生徒は面倒がって食堂内で済ませていた。
リシェはラスと一緒に食堂へ向かい、表記された献立のセット内容を選んで注文を専用の申し込み用紙に記入してポストに入れる。
とりあえずその日の晩ご飯と、次の日の朝食分は確保出来た。用件は済んだ。
さて、戻るかと踵を返したその時。
「ラス!」
「あっ、ノーチェ」
前に会ったラスの友人ノーチェが近付いて来た。彼はリシェをちらりと見遣った後、軽く敵意を見せつつ「ちょっと彼に用があるんだけどいい?」と許可を求める。
ラスはきょとんとしながらリシェを見下ろした。
一方のリシェも首を傾げる。
「どうしたんだよ、ノーチェ」
「どうしたも何も…何でこの子がラスを引っ張ってんのかってね」
「俺が?ラスを?」
リシェはきょとんとしていた。
「そうだよ。大体一年のくせに遠慮ってものを知らないんだよ、あまりラスにちょっかい出さないでくれない?同部屋は仕方無いよ?ただ、休み時間にいちいち呼ぶなっての!どんだけ依存してるのさ!」
リシェは呼んだつもりもないし引っ張っているつもりも無かった。それだけに、はあ?としか言いようが無い。
「それはこいつに言え」
面倒そうなリシェはラスを見上げて答える。
「この前も説明しただろう。こいつが勝手に来るんだと」
えへへ、とラスは笑顔になる。
ノーチェはラスじゃなくてあんたに言ってるんだよとリシェに突っかかった。
「あんたが断ればいいだけだろ!」
「俺が断ってもこいつが勝手に来るんだからどうしようも無いじゃないか!」
堂々巡りになり、次第にリシェは面倒臭くなって「分かったよ」と折れた。
「分かった分かった。負けた負けた。だからラスはお前に譲る。それならいいだろう」
頭をかき、リシェは観念したように言った。
それを聞いたラスは悲しそうに「せ、先輩!?」と叫ぶと、その場から立ち去ろうとするリシェに何て事言うんですか!と嘆いた。
「後は勝手にやれ。俺はもう知らん。知らんぞ」
無駄な痴話喧嘩をする気力も沸かないリシェは、さっさと退場するに限ると判断する。
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