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そのじゅうに
サキト様曰く「聖夜ではなく、性夜」
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「クリスマスだそうだ」
ラスが買ってきた若者向けの雑誌を読んでいたリシェは思い出したかのように話し始める。
「この辺は雪が降らないからあまり実感が湧きませんよね、先輩。もしかして興味あった?」
「んー」
少し考えた後、リシェは別に無いなあと言った。
前回はあの兄がミニスカサンタのコスプレをしろと部屋に突撃してきて大喧嘩になったなと思い出す。とにかくコスプレをさせたい兄と、コスプレを嫌がって一方的に殴る弟の壮絶極まりない喧嘩に家庭内は騒々しいクリスマスだった。
今回は学校も変わり、自宅では無く学生寮に入っているので気が楽だった。
「せーんぱい!」
「んん?」
ラスは楽しそうに共用冷蔵庫から真っ白な大きな箱を取り出すと、リシェの目の前に見せる。上から覗ける小窓の奥には、デコレーションされた可愛らしいホールケーキが入っていた。
ふぁっ!?と甘い物好きのリシェは目を輝かせる。
「じゃーん!クリスマスケーキですよ、先輩!!一緒に食べたくて買ってきたんです!!先輩、後で食べましょうね★」
「い、いいのか?後でケーキの代金を体で払えとか言わないだろうな」
いくら何でも大変準備が良すぎる。
逆に警戒したリシェは怪しみながらラスを見上げた。
「ふふ、先輩。体で払いたいんですか?」
びくん、と怯えながら首を振る。笑いがこみ上げてくるのを抑えきれない様子を見せながら、大丈夫ですと穏やかな声で言った。
俺が先輩と普通に食べたかったんですよ、と。
ようやく警戒を解き、リシェは改めて中身を覗いた。
「チョコケーキだ」
「はい。普通過ぎても味気ないかなぁって…王道の真っ白生クリームのケーキも良さそうだけど」
「美味しそうだ、ラス」
後で楽しみにしましょうねと再びケーキを冷蔵庫に入れていると、同時に部屋の扉が勢い良く開かれる。
「…ちょっと!!誰だよこいつ部屋に仕込んだの!!」
いつものヒステリックな怒鳴り声。
リシェとラスは目を丸くしながら扉を開けてきたスティレンに注目する。
だが彼だけでは無い。もう一人…違う人間も付いてきた。
彼の後から姿を見せる完全な部外者は華やかに「やぁっほー★」と可愛らしく挨拶をすると、ふんわりとした金髪を揺らしながら天使の様相でお邪魔するね!と笑う。
「あ」
何故かシャンクレイス学園の生徒であるサキトが、スティレンにくっついていた。それを見て、リシェは何で?と従兄弟に問う。
「お前が仕込んだんじゃないの、リシェ!?完っ全に部外者でしょこの人!!部屋に入ったらいつの間にか居たんだけど!?」
何それ怖い、とラスは震えた。
サキトは大人びた笑みを浮かべると、「ちょっと寮の事務局にいくらか包んだんだよ」と非常にいやらしい事を言い放つ。
「結局皆、お金には弱いのさぁ。ま、制服姿じゃないから僕もこの学校の普通の生徒みたいに振る舞えるし」
「えげつないね!!だからピンポイントで俺の部屋に来れたのか!」
リシェは何でも俺のせいにするなと膨れた。
「…で、そのサキト様が一体何のご用でここまで?」
雪の妖精ばりに真っ白でふわふわした服を身につけるサキトに、ラスは疑問をぶつけた。わざわざお金を支払ってまで他校の寮に押し掛けてくるとは、どうしても重要な用事があったに違いない。
本来なら強制退去なのだ。
だが、サキトはううんと否定の言葉を返す。
「クリスマスプレゼントを貰いに来たんだよ」
「え?」
貰いに、来た?
言っている意味が分からず、三人はサキトを一斉に見た。当然だよと彼は呆れた様子でこちらを見返した。
「僕はプレゼントを貰いに来たの」
「貰いに…?」
何にも用意していない。むしろ初耳だった。
何をやればいいのだろうかと困惑していると、サキトはスティレンの方に目を向ける。
ぎくりと彼は反応し、思いっきり嫌そうな表情をした。
「そう。僕はスティレンが欲しくて貰いに来たんだよ!その為にわざわざ来てあげたんだから。性夜を一緒に過ごす為にね!」
聖夜ではなく、確実に性夜と言っているのが分かってしまうのは何故だろうか。
スティレンは「絶対嫌だ!!」と拒否する。
「ふざけないでよ、あんた本当に馬鹿じゃないの!?絶対あんたとなんて嫌だから!!」
「えー」
ぷくーっと頰を膨らませ、サキトは不満げにスティレンを見上げた。顔に似合わずかなりのアグレッシブ。
「じゃあ僕をあげる!勿論、貰ってくれるよねっ」
めちゃくちゃな事を言うサキト。彼はスティレンに抱き着くと、すりすりと頰を胸元に寄せながら甘え始めた。
「いっ…い」
固まるスティレンはとにかく嫌なのか顔をひくつかせ、嫌だって言ってるだろ!!と叫び出す。
「ちょっと!!」
かなり困り果て、彼はラスとリシェに助けを求めようと声を張り上げた。
「どうにかしてよこの人!マジで無理なんだけど!」
どうにかしてと言われても。
相手が相手だからどうしようも出来ない。困り果てるラスの横で、リシェは「仕方無い」と返す。
何かしら救いの手を出すのかとスティレンは一瞬ホッとする。早くこいつ離してと口を開いたが、リシェは無表情を保ちながら続ける。
「諦めろ。むしろ問題を持ち込んでくるな」
俺はケーキを食べたいんだ、と言い放った。
サキトに抱き付かれたスティレンは切り捨てられた気持ちに陥りながらリシェを睨む。
「お前っ…困ってる身内とケーキ、どっちが大事なんだよ!?」
絡みついてくる腕を鬱陶しい!と強く引き離す。
リシェはしばらく考え込んだ。そして決断するかの如く答えを返す。
「ケーキだ!!」
やはり食欲には勝てないらしい。
二人の会話を黙って聞いていたラスは、スティレンには悪いと思いながらついブフッと吹き出してしまった。
ラスが買ってきた若者向けの雑誌を読んでいたリシェは思い出したかのように話し始める。
「この辺は雪が降らないからあまり実感が湧きませんよね、先輩。もしかして興味あった?」
「んー」
少し考えた後、リシェは別に無いなあと言った。
前回はあの兄がミニスカサンタのコスプレをしろと部屋に突撃してきて大喧嘩になったなと思い出す。とにかくコスプレをさせたい兄と、コスプレを嫌がって一方的に殴る弟の壮絶極まりない喧嘩に家庭内は騒々しいクリスマスだった。
今回は学校も変わり、自宅では無く学生寮に入っているので気が楽だった。
「せーんぱい!」
「んん?」
ラスは楽しそうに共用冷蔵庫から真っ白な大きな箱を取り出すと、リシェの目の前に見せる。上から覗ける小窓の奥には、デコレーションされた可愛らしいホールケーキが入っていた。
ふぁっ!?と甘い物好きのリシェは目を輝かせる。
「じゃーん!クリスマスケーキですよ、先輩!!一緒に食べたくて買ってきたんです!!先輩、後で食べましょうね★」
「い、いいのか?後でケーキの代金を体で払えとか言わないだろうな」
いくら何でも大変準備が良すぎる。
逆に警戒したリシェは怪しみながらラスを見上げた。
「ふふ、先輩。体で払いたいんですか?」
びくん、と怯えながら首を振る。笑いがこみ上げてくるのを抑えきれない様子を見せながら、大丈夫ですと穏やかな声で言った。
俺が先輩と普通に食べたかったんですよ、と。
ようやく警戒を解き、リシェは改めて中身を覗いた。
「チョコケーキだ」
「はい。普通過ぎても味気ないかなぁって…王道の真っ白生クリームのケーキも良さそうだけど」
「美味しそうだ、ラス」
後で楽しみにしましょうねと再びケーキを冷蔵庫に入れていると、同時に部屋の扉が勢い良く開かれる。
「…ちょっと!!誰だよこいつ部屋に仕込んだの!!」
いつものヒステリックな怒鳴り声。
リシェとラスは目を丸くしながら扉を開けてきたスティレンに注目する。
だが彼だけでは無い。もう一人…違う人間も付いてきた。
彼の後から姿を見せる完全な部外者は華やかに「やぁっほー★」と可愛らしく挨拶をすると、ふんわりとした金髪を揺らしながら天使の様相でお邪魔するね!と笑う。
「あ」
何故かシャンクレイス学園の生徒であるサキトが、スティレンにくっついていた。それを見て、リシェは何で?と従兄弟に問う。
「お前が仕込んだんじゃないの、リシェ!?完っ全に部外者でしょこの人!!部屋に入ったらいつの間にか居たんだけど!?」
何それ怖い、とラスは震えた。
サキトは大人びた笑みを浮かべると、「ちょっと寮の事務局にいくらか包んだんだよ」と非常にいやらしい事を言い放つ。
「結局皆、お金には弱いのさぁ。ま、制服姿じゃないから僕もこの学校の普通の生徒みたいに振る舞えるし」
「えげつないね!!だからピンポイントで俺の部屋に来れたのか!」
リシェは何でも俺のせいにするなと膨れた。
「…で、そのサキト様が一体何のご用でここまで?」
雪の妖精ばりに真っ白でふわふわした服を身につけるサキトに、ラスは疑問をぶつけた。わざわざお金を支払ってまで他校の寮に押し掛けてくるとは、どうしても重要な用事があったに違いない。
本来なら強制退去なのだ。
だが、サキトはううんと否定の言葉を返す。
「クリスマスプレゼントを貰いに来たんだよ」
「え?」
貰いに、来た?
言っている意味が分からず、三人はサキトを一斉に見た。当然だよと彼は呆れた様子でこちらを見返した。
「僕はプレゼントを貰いに来たの」
「貰いに…?」
何にも用意していない。むしろ初耳だった。
何をやればいいのだろうかと困惑していると、サキトはスティレンの方に目を向ける。
ぎくりと彼は反応し、思いっきり嫌そうな表情をした。
「そう。僕はスティレンが欲しくて貰いに来たんだよ!その為にわざわざ来てあげたんだから。性夜を一緒に過ごす為にね!」
聖夜ではなく、確実に性夜と言っているのが分かってしまうのは何故だろうか。
スティレンは「絶対嫌だ!!」と拒否する。
「ふざけないでよ、あんた本当に馬鹿じゃないの!?絶対あんたとなんて嫌だから!!」
「えー」
ぷくーっと頰を膨らませ、サキトは不満げにスティレンを見上げた。顔に似合わずかなりのアグレッシブ。
「じゃあ僕をあげる!勿論、貰ってくれるよねっ」
めちゃくちゃな事を言うサキト。彼はスティレンに抱き着くと、すりすりと頰を胸元に寄せながら甘え始めた。
「いっ…い」
固まるスティレンはとにかく嫌なのか顔をひくつかせ、嫌だって言ってるだろ!!と叫び出す。
「ちょっと!!」
かなり困り果て、彼はラスとリシェに助けを求めようと声を張り上げた。
「どうにかしてよこの人!マジで無理なんだけど!」
どうにかしてと言われても。
相手が相手だからどうしようも出来ない。困り果てるラスの横で、リシェは「仕方無い」と返す。
何かしら救いの手を出すのかとスティレンは一瞬ホッとする。早くこいつ離してと口を開いたが、リシェは無表情を保ちながら続ける。
「諦めろ。むしろ問題を持ち込んでくるな」
俺はケーキを食べたいんだ、と言い放った。
サキトに抱き付かれたスティレンは切り捨てられた気持ちに陥りながらリシェを睨む。
「お前っ…困ってる身内とケーキ、どっちが大事なんだよ!?」
絡みついてくる腕を鬱陶しい!と強く引き離す。
リシェはしばらく考え込んだ。そして決断するかの如く答えを返す。
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