85 / 101
そのはちじゅうよん
ナチュラルボーン変態
しおりを挟む
リシェと一緒にベッドイン出来る事の喜びを妄想するラスは、突然やって来た来客に対し非常に歓迎モードに変化していた。どうせ寮の事務方も、いやらしいサキトの寄付攻撃に陥落しているのだから普通の寮生としての扱いをしてくれるだろう。
むしろ金額によっては特待生扱いのはずだ。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「なぁにぃ?」
リシェの椅子に勝手に座って完全にリラックスしているサキトは、あからさまに王子様然とした様子でラスに聞き返す。どんな行動をしてもその動作が絵になるのが小憎らしい。
彼の学園生活も何から何まで恵まれている筈だ。相当楽に違いない。生まれながらの王子様とは彼の事なのだ。
そう言えば、向こうでも王子様だったんだっけ…などと朧げに思い出す。自分には全く関わり無い人物だったのでそこまで興味も湧かなかった。
噂でしか聞いた事が無かったので元はどの様な人物なのかはほとんど把握していなかったが、やたらスティレンに執着しているとなれば、恐らく元の世界でもその様な感じだったのだろう。
「変な話、どの位こっちに包んだ訳?ここの寮だって結構厳しいと思うんだけど」
「ああ、その話ね」
サキトは華やかに微笑んだ。
リシェは彼の近くで正座しながらお茶を飲んでいる。
「何て事は無いよ。ちょっと札束握らせただけさ」
「…ちょっと所じゃない!!」
あげる方もあげる方だが、貰う方もどうかしている。
金銭感覚がまるでズレている相手は元より、受け取った側の方も心配になってきた。大人って汚い。
「聞かなかった事にするよ。…まあ、こっちは先輩と一緒に居られるんならそれでいいし」
「余程この子が気に入ってるんだねぇ。んふふ、まぁ確かにこの子は可愛い顔をしているからね。無理も無いよ。元々シャンクレイスの出の子は全体的に整っている子が多いから」
お茶を飲み一息つくリシェは、お高く止まりやがってと顔に似合わない悪態を心の中で吐いていた。
「でも」
サキトはちらりとリシェを見る。
「君のこの子に対する執念って本当に半端無さそうだよね。あわよくばいやらしい事をしようとする気持ちが伝わってくるもの。僕はね、君と同じ系統だからそういうのは良く分かるよ、ふふ」
「!!!」
ラスはショックを受けた。
自分の何処に、サキトと同じような要素が含まれているのかと。
「いっ…一緒にされても困る!!」
むしろ同列にして欲しくない。彼の変態っぷりは何となく伝わってくるのだ。慌てて否定するラスに、サキトは「そーお?」と冷ややかに返す。
「君のようにナチュラルボーン変態って何となーく分かるもんだよ?雰囲気から何からさぁ…自覚無いんだろうけど」
リシェはこくこくと頷いていた。その部分はしっかり話を聞いてるんだ…とラスは地味に傷付く。
しかもナチュラルボーン変態とは。初見からおかしげな行動をするサキトにだけは言われたくない発言だ。それに、その発言は似た者同士だと言う本人にも当て嵌まるのではないだろうか。
「そのナチュラルボーン変態って何なの…そこまで酷く無いと思うけど…」
「ええ…じゃあ何さ?パリピスケベ?」
「何かしら変なあだ名を付けないと駄目なの…?しかもパリピスケベってどういう事なの…」
「その派手な感じが僕的には受け付けないから」
「………」
地味にショックを受け、ラスは溜息をついた。その後でちらりとリシェの方を見る。
彼はどういう訳か、頬を膨らませて身を震わせながら、笑いを噛み殺していた。こちらを見ながら。
「…先輩」
「んんっ…?ふ、ふ」
そこまで我慢しているならどうして吹き出さないのだろうか。
「ほら、リシェだって君の事を良く分かってるんでしょ?だからこんなに笑いを我慢してるんじゃないのぉ?」
もしかしてリシェは自分をナチュラルボーン変態とかパリピスケベだと思っていたのだろうか。
…心外だ。
言葉で言われた訳でもないのに、ラスは妙に落ち込んでしまった。
むしろ金額によっては特待生扱いのはずだ。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「なぁにぃ?」
リシェの椅子に勝手に座って完全にリラックスしているサキトは、あからさまに王子様然とした様子でラスに聞き返す。どんな行動をしてもその動作が絵になるのが小憎らしい。
彼の学園生活も何から何まで恵まれている筈だ。相当楽に違いない。生まれながらの王子様とは彼の事なのだ。
そう言えば、向こうでも王子様だったんだっけ…などと朧げに思い出す。自分には全く関わり無い人物だったのでそこまで興味も湧かなかった。
噂でしか聞いた事が無かったので元はどの様な人物なのかはほとんど把握していなかったが、やたらスティレンに執着しているとなれば、恐らく元の世界でもその様な感じだったのだろう。
「変な話、どの位こっちに包んだ訳?ここの寮だって結構厳しいと思うんだけど」
「ああ、その話ね」
サキトは華やかに微笑んだ。
リシェは彼の近くで正座しながらお茶を飲んでいる。
「何て事は無いよ。ちょっと札束握らせただけさ」
「…ちょっと所じゃない!!」
あげる方もあげる方だが、貰う方もどうかしている。
金銭感覚がまるでズレている相手は元より、受け取った側の方も心配になってきた。大人って汚い。
「聞かなかった事にするよ。…まあ、こっちは先輩と一緒に居られるんならそれでいいし」
「余程この子が気に入ってるんだねぇ。んふふ、まぁ確かにこの子は可愛い顔をしているからね。無理も無いよ。元々シャンクレイスの出の子は全体的に整っている子が多いから」
お茶を飲み一息つくリシェは、お高く止まりやがってと顔に似合わない悪態を心の中で吐いていた。
「でも」
サキトはちらりとリシェを見る。
「君のこの子に対する執念って本当に半端無さそうだよね。あわよくばいやらしい事をしようとする気持ちが伝わってくるもの。僕はね、君と同じ系統だからそういうのは良く分かるよ、ふふ」
「!!!」
ラスはショックを受けた。
自分の何処に、サキトと同じような要素が含まれているのかと。
「いっ…一緒にされても困る!!」
むしろ同列にして欲しくない。彼の変態っぷりは何となく伝わってくるのだ。慌てて否定するラスに、サキトは「そーお?」と冷ややかに返す。
「君のようにナチュラルボーン変態って何となーく分かるもんだよ?雰囲気から何からさぁ…自覚無いんだろうけど」
リシェはこくこくと頷いていた。その部分はしっかり話を聞いてるんだ…とラスは地味に傷付く。
しかもナチュラルボーン変態とは。初見からおかしげな行動をするサキトにだけは言われたくない発言だ。それに、その発言は似た者同士だと言う本人にも当て嵌まるのではないだろうか。
「そのナチュラルボーン変態って何なの…そこまで酷く無いと思うけど…」
「ええ…じゃあ何さ?パリピスケベ?」
「何かしら変なあだ名を付けないと駄目なの…?しかもパリピスケベってどういう事なの…」
「その派手な感じが僕的には受け付けないから」
「………」
地味にショックを受け、ラスは溜息をついた。その後でちらりとリシェの方を見る。
彼はどういう訳か、頬を膨らませて身を震わせながら、笑いを噛み殺していた。こちらを見ながら。
「…先輩」
「んんっ…?ふ、ふ」
そこまで我慢しているならどうして吹き出さないのだろうか。
「ほら、リシェだって君の事を良く分かってるんでしょ?だからこんなに笑いを我慢してるんじゃないのぉ?」
もしかしてリシェは自分をナチュラルボーン変態とかパリピスケベだと思っていたのだろうか。
…心外だ。
言葉で言われた訳でもないのに、ラスは妙に落ち込んでしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】初恋は檸檬の味 ―後輩と臆病な僕の、恋の記録―
夢鴉
BL
写真部の三年・春(はる)は、入学式の帰りに目を瞠るほどのイケメンに呼び止められた。
「好きです、先輩。俺と付き合ってください」
春の目の前に立ちはだかったのは、新入生――甘利檸檬。
一年生にして陸上部エースと騒がれている彼は、見た目良し、運動神経良し。誰もが降り向くモテ男。
「は? ……嫌だけど」
春の言葉に、甘利は茫然とする。
しかし、甘利は諦めた様子はなく、雨の日も、夏休みも、文化祭も、春を追いかけた。
「先輩、可愛いですね」
「俺を置いて修学旅行に行くんですか!?」
「俺、春先輩が好きです」
甘利の真っすぐな想いに、やがて春も惹かれて――。
ドタバタ×青春ラブコメ!
勉強以外はハイスペックな執着系後輩×ツンデレで恋に臆病な先輩の初恋記録。
※ハートやお気に入り登録、ありがとうございます!本当に!すごく!励みになっています!!
感想等頂けましたら飛び上がって喜びます…!今後ともよろしくお願いいたします!
※すみません…!三十四話の順番がおかしくなっているのに今更気づきまして、9/30付けで修正を行いました…!読んでくださった方々、本当にすみません…!!
以前序話の下にいた三十四話と内容は同じですので、既に読んだよって方はそのままで大丈夫です! 飛んで読んでたよという方、本当に申し訳ございません…!
※お気に入り20超えありがとうございます……!
※お気に入り25超えありがとうございます!嬉しいです!
※完結まで応援、ありがとうございました!
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる