異世界学園の中の変な仲間たち

へすこ(ひしご)

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そのじゅう

オーギュスティンの汚点

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 先程のロシュから与えられた不思議な感覚に、リシェはぞくぞくしていた。
 これではまるで、自分が変態ではないかと思いながら、どうにか理性を保とうとする。
「ああ、大事になる前で良かった」
 保健室から離れ、ようやくリシェを引っ張っていたオーギュスティンは彼の手を離すといつもの冷静沈着な表情で安堵する。
「ありがとうございます」
 リシェは担任でもある彼に礼を告げると、オーギュスティンはようやくふわりと優しい笑みを向けてきた。
 パッと見てかなりキツそうに見えるが、笑うとそのギャップが凄まじい。
「あなたはまだこの学校に来たばかりですからね。分からないのも仕方ありません。あの人にはくれぐれも近づかないようになさい。毒牙にかかった生徒も居るらしいのでね」
 あの人…ロシュ先生の事か、とリシェは思う。
 確かに魅力的な顔で優しく微笑んでくるので、彼に惹かれる者も多いだろう。
「そんなに危険なのですか?」
「現にあなた、危なかったではないですか」
 …確かに。
 あの中性的な優しい顔のまま、引き込まれてしまいそうな目で見つめられてしまうと何故か心が溶かされていきそうだった。
「ロシュ先生を良く知ってるみたいですけど…」
「ああ、嫌という程ね。腐れ縁みたいなものです」
「腐れ縁?」
「幼馴染なんです」
 そう話す彼は嫌そうに顔を曇らせた。
「へえ…昔からあんな感じなんですか?」
 何故なのか知らないが、リシェはロシュの事を聞きたがってしまう。変な魅力に取り憑かれてしまったのだろうか。
 あの時、密着されながら口の中に指を入れられて悪戯された時、恐怖感はあったもののもっとして欲しいという気持ちが少しずつ湧いていた。
 ロシュに触れられるだけで、甘い感情が全身を責めてくる。怖いのに。
 やはり自分はおかしいのかもしれない、とふるふると首を振る。
「あんな感じも何も、あの人は昔から悪戯好きなんですよ。小さい子供のレベルならまだいい。あの人は度が過ぎてくるのです」
「はあ」
 オーギュスティンは苦々しい表情で過去を反芻した。まだ十代の頃のあどけない顔をしたあの時の頃を。

 これまでの勉強の結果が先の進路に左右される大切なテスト前。
 忘れもしない、大学への受験前のピリピリしていた時期。
 勉強に関してはトップクラスの成績のロシュは、何の教科でも高得点を得ていて、テスト前だろうが何だろうが他の生徒に比べると余裕があった。
 それだけでもオーギュスティンにとっては気に入らない要素になっていたが、持ち前の才能の一種ならば仕方ない。
 人は人、自分は自分と割り切っていた。
 長い休み時間になれば、周囲の喧騒を嫌がってよく図書室で勉強をする学校生活をしていたオーギュスティンは、ある日普段誰も来ない図書室でいつものように勉強の続きをこなしていた。
 するといつも居ない図書室で人の話し声がする。
 話し声ならまだ気にはならないのだが、何かがおかしかった。
 妙に色気付いた声なのだ。
 変に思い、声がした方へ忍び足で近付いてみるとそこには三人の人影があった。カーテンにくるまったように隠れていたが、やはり分かりやすい。
 まるで見つけてくれと言わんばかりに。
 オーギュスティンは無言でカーテンを開くと、そこには制服の前を開けているロシュといかにも下級生の可愛らしい顔をした生徒が二人、いちゃついている最中だった。
 オーギュスティンは言葉を失い、棒立ちになる。
「やあ、オーギュスティン」
 やあ、じゃない。
 何がやあ、だ。
 色んな言葉がぐるぐる浮かんでは消える。
 するとロシュが抱きしめている下級生の一人が、彼のむき出しの肌に軽くキスをした。ロシュは気分良さそうに吐息を漏らすと、「今日はこれまで」と彼らの頭を撫でた。
 ええっ、と悲痛な表情をする。
「先輩、もっとしたいよう」
「これからなのにぃ」
 二人は口々に未練がましい声を上げるが、ロシュは服を着直し「駄目だよ」と諭した。
「また今度…次はもっと際どい事をしようね」
 際どい事と言われ、彼らは互いに顔を見合わせると次回の予定を想像し恍惚感に溢れた顔をする。
「先輩、またね」
「楽しみ…」
 オーギュスティンはあまりの衝撃に思考が停止していた。一方でロシュは慣れた様子で普通にオーギュスティンを見る。
 ふわふわした茶色い髪をかきあげ、見目麗しい美少年のロシュは「あーあ」と残念そうに呟いた。
 彼は頭の良さもあるが、その容姿も目を奪われる程可愛らしい顔立ちをしていた。それが余計に腹が立ってくる。
「折角気持ち良くなってきたのに。萎えさせちゃうなんて、どうしてくれるのさオーギュスティン。いくら昔馴染みでも邪魔されちゃあ気分が悪いよ」
「は…はああ!?そっちがこの場所で変な事をしていたくせにこっちのせいにするとか…しかも学校でだなんて!信じられない…」
 ドン引きするオーギュスティンを、ロシュは無言で見つめる。
「変な事、ねぇ。そっかそっか。君はそういう訳だったか。なるほどねえ」
 意味深なセリフを呟き、ロシュはオーギュスティンをじろじろと眺めた後。
「は…!?」
 混乱するオーギュスティンは、ロシュが自分に何をしたのか判断出来ずにいた。気がつけば床に組み敷かれていたのだった。
 …状況が分からないままで、オーギュスティンは自分の上に居る幼馴染を見上げていた。ロシュは怪しく舌舐めずりし、「それなら」と囁く。
「僕が君のを貰ってあげる。それなら僕の気持ちも分かると思うよ」
「は!?なっ、何の事を…意味が分からないっ、離せ!!」
 抵抗するオーギュスティンだが、何故か可憐な容姿と不釣り合いな程ロシュの力は強かった。
 必死に嫌がっているのを完全に無視。
 ロシュは妖しげな表情で迫りながら「さあ」と楽しげに囁き、その後に意味深な発言をした。
 まるで処刑宣告のようだった。
「…僕と一緒にこっちのお勉強もしようね、童貞君★」

 ………。
 思い出し、オーギュスティンは全身がかあっと熱くなった。
「先生?」
 リシェに声をかけられ、ようやく彼は我に返る。
「大丈夫ですか?顔が赤いけど…」
「いっ…いえ!何でもないです、何でも!!」
 昔の汚点を思い出し、オーギュスティンは不意に怒りが湧いてくる。
 とにかくあの色ボケを殴りたくなった。
「リシェ、あとは教室に戻れますよね?私は用事を思い出したので離れます」
「え?…は、はあ」
 オーギュスティンはにっこりとリシェに微笑んだ後、ではまたと来た道を引き返していった。
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