異世界学園の中の変な仲間たち

へすこ(ひしご)

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そのじゅうよん

リシェ、何故か恨まれる

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 靴を綺麗に洗い、生徒達の姿がようやく見えてくる時間まで敷地内で時間を潰していたリシェは、校舎が解放されるのを見計らってやっと中に入る事が出来た。
 あまり早過ぎてもダメだなと反省する。
 時間が有り余ってしまうので、無趣味に等しい彼には時間を潰すのは苦痛でしかなかった。鞄に突っ込んでいた教科書を読むのも飽きていたのだ。
 早くしすぎて既に眠気も湧いてくる。
 生徒らに紛れ、自分の靴箱をがちゃりと開いて学校用の靴を履き替えようとしたが、自分の靴箱から大量の何かが雪崩のように落ちてきた。
「!?」
 リシェは息を飲む。
 それは封筒やら紙切れやらの手紙だった。
「…うは、凄えな」
「モテるなあ、あんた」
 その様子を見た同級生らはリシェをからかうような発言をする。
「何だこれは」
「何だって…今までも貰ってきたんじゃないのか、ラブレターみたいなの。こんなによく詰め込んだよなあ。…ああ、なるほど。靴箱の扉に隙間あるからか。ポストみたいだもんな」
 落下した手紙を見下ろし、リシェは黙る。
 …どうしろと言うのだろうか。
「とりあえず貰っとけば?暇なら目を通せばいいし。一応言っとくけど、ここ男子校だからな」
「!?」
 返事のしようがない。
 渋々と手紙の束を回収していると、突如「何してんのさ」と嫌な相手の声が飛んできた。
「それ何なの?」
 訝しむスティレンは、手紙を回収するリシェに問う。朝から無駄に華やかな雰囲気を放つ彼は、その場に立っているだけでも空気を変えてきた。
 通りがかる生徒達もスティレンをちらりと見てはその美少年っぷりに驚く。
「…俺が聞きたいよ」
 リシェの手元にある封筒を一部ひったくると、手荒な様子で中身を開封する。
「ええっと」
 なになに、と前置きして目を通した。
「あなたを初めて見た時から気になっていました。気がつけば自分の視線があなたの方に惹きつけられてしまい…何これ、きっも。手紙書くならもっと考えてからにしなよ。…って、これラブレターじゃん!!はあ!?何で陰キャのお前が!!」
「陰キャ…」
 バカにされた気分になり、リシェは眉をハの字にして困惑する。
「お前がモテるならこの美しい俺がそれ以上モテないのはおかしいだろ!!」
「………」
 酷くめちゃくちゃな事を言っている気がする。
 しかも、ここは男子校なのだ。そんな学校で同性にモテたいのだろうか。
「他は!?寄越しな!」
 別の手紙をひったくった。
「読みたいならお前に全部やるよ…」
「何でお前宛のラブレターを俺が引き取らなきゃいけないのさ!…えっと…好きです、あなたの体操着になりたいです?気持ち悪い!!却下!!」
 確かに気持ち悪い。
「もう、どいつもこいつも気持ち悪いな!マトモなのは無い訳?次、次!!」
 いつの間にかラブレターの品評会になっていた。
 次に取り出したのは黒い封筒。珍しいねとスティレンは中身を開く。
 初見が印象深い手紙の中身は、一体どんな事が書いてあるのだろう。
「んーと?」
 これもまた真っ黒な便箋。それに目を通したスティレンは、表情をうわあ…と嫌そうに曇らせる。
「何?」
「お前、何か嫌がらせみたいな事した?」
「は?してないよ」
 スティレンは見てみなと便箋を突き返す。
 リシェは無言でそれを受け取って、初めてラブレターの中身に目を通した。

【呪 いつかお前の靴箱に大量のナマコを入れてやる 覚えてろよ】

 みるみるリシェの表情が蒼白になった。
「何で?」
 何故犯行予告をされなければならぬのか。
 黒地に赤い書道用の小筆で書くという、芸のこもった書き方から相当な恨みを買っているようだった。
「何でナマコなのだ…」
「さあ?お前何かしたんじゃないの」
「何もしてない!!意味が分からない、俺が何をしたっていうんだ」
 頭を抱え、リシェはうねうねと混乱する。
「いつ靴箱にナマコを入れて来るのか楽しみにしなよ。張り込んでおけばそのうち犯人が出てくるんじゃない?ナマコを持ってさ」
「何で俺が張らなきゃならないんだ面倒臭い!」
「本当にナマコを持ってくるか興味あるじゃない。休み時間とか張ってみようよ」
 靴箱が鍵付きではないのが憎たらしい。
 スティレンは犯人に興味があるようだが、リシェは嫌で嫌でたまらなかった。
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