異世界学園の中の変な仲間たち

へすこ(ひしご)

文字の大きさ
18 / 101
そのじゅうなな

ナマコ野郎

しおりを挟む
 大急ぎで屋上から階段を降り、リシェは生徒達の下駄箱が並ぶ昇降口に向けて急ぐ。あまりの猛ダッシュっぷりに、他の生徒らは何事かと仰天しながら彼を見届けていった。
 あの無駄にデカい袋を持って学校に入る姿がとにかく怪しい。怪しいから奴がナマコ野郎に間違いない、というアバウトな理由で、彼は走る。
 息を切らしながら昇降口に辿り着くと、先にスティレンが壁際に隠れて張り込んでいた。
「リシェ」
「は…っ、はあっ、な、ナマコ野郎は」
「まだ来てないよ。何なのお前、どこから来たの」
「屋上…はっ、昼ご飯食べてたらいかにもな奴が、こっちに向かって来てたからっ、はあっ」
 へえ、とスティレンは再び監視を始める。
「お前が見た奴がそうなら、すぐに解決出来そうじゃない?ふふ、どんな奴なんだろ」
 苦しさでけほけほしているリシェ。
 生徒達は普段通りの様子で廊下を行き来している。
 しばらく張り込んでいると、分かりやすい程真っ黒な袋を重そうに抱えた一人の生徒が周囲を伺いながら昇降口に出現する。
 リシェは「ああっ」と声を上げるも、スティレンに口をばちんと手で塞がれた。唸る従兄弟を無視しながら、相手の出方を見守る。
「現場を押さえとかないと」
 俺の靴がナマコだらけになる!と呻くリシェ。
 袋を持った生徒は人の姿が捌けるのを確認した後、靴箱の列の前に立った。そこは間違い無くリシェの靴が収納されている列で、目的は予告通り彼の靴箱にナマコを入れるつもりなのが明らか。
「誰あいつ?見た事ある?」
 緩やかに波打つ金髪と、優しげな顔立ちでなかなかの美少年。背丈はスティレンと同じ位だろうか。
 リシェは口を塞がれながらも首を振った。
 初めて知る顔だ、と。
 知らない奴に何故恨まれなけれればならないのかと悲しくなる。やはり自分は不幸の星の下に生まれてきたのだろうかと。
 相手がリシェの靴箱の扉を開けた瞬間、スティレンは「行くよ!」とリシェを解放した。
 同時に彼は機敏な動きで先に走り出す。
「待て!このナマコ野郎!!」
「!!!」
 相手の少年はリシェの姿を見ると同時に黒い袋を背後に隠した。しかし明らかにバレる大きさで、隠し切れていない。
 彼は数歩後退りながら「な、何?」と気まずそうにリシェに言った。
「お前か、俺の靴箱にナマコを入れるって予告したのは!何故だ、理由を話せ!!」
 今にも殴りかからんばかりに詰め寄ってくるリシェに、彼は警戒しながらまた後退りをする。
「むしろあんた誰?」
 苛々とするリシェとは逆に、スティレンは冷静に彼に素性を明らかにするように求めると、彼は二人から目線を逸らし頰を膨らませて「…喋る必要ある?」と全く反省の無い態度を見せてきた。
 リシェは「あるから聞いているんだ!」と呆れると、その袋の中身を見せろと命令する。
「中身、知ってるんじゃないの」
「確認するんだ。黙って差し出せ、このナマコ野郎」
 何その呼び方…と不満そうにしつつ、彼は大人しく黒い袋を二人に突き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生しても推しが尊い!〜京橋くんとの学園ライフが尊死案件〜オタクでよかった、君に出会えたから

中岡 始
BL
前世の俺は、社畜オタクだった。 唯一の救いは、“黒星騎士団”という漫画のキャラ、レオ様を推すこと。 だがある日突然── 事故で命を落とした俺は、目覚めたら高校生になっていた。 しかも隣の席にいたのは、前世で推してたキャラの激似男子⁉ 「え、レオ様…!? いや、現実!? ちょ、待って尊死するんだけど!?」 これは、転生オタク男子が “リアル推し” と出会ってしまった尊さ特化の学園ラブコメ。 推しに手が届きそうで届かない、心拍数限界突破の日々。 創作と感情の狭間で、「推し」と「恋」の境界がじわじわ崩れていく── 「これはもう、ただの供給じゃない。 俺と“君”の物語として、生きてるんだ」 尊死系BL/オタクあるある満載/文化祭・学園SNS・保健室…青春全部乗せ! 笑って泣ける、“愛”と“推し活”の二重螺旋ラブストーリー、開幕!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

僕がサポーターになった理由

弥生 桜香
BL
この世界には能力というものが存在する 生きている人全員に何らかの力がある 「光」「闇」「火」「水」「地」「木」「風」「雷」「氷」などの能力(ちから) でも、そんな能力にあふれる世界なのに僕ーー空野紫織(そらの しおり)は無属性だった だけど、僕には支えがあった そして、その支えによって、僕は彼を支えるサポーターを目指す 僕は弱い 弱いからこそ、ある力だけを駆使して僕は彼を支えたい だから、頑張ろうと思う…… って、えっ?何でこんな事になる訳???? ちょっと、どういう事っ! 嘘だろうっ! 幕開けは高校生入学か幼き頃か それとも前世か 僕自身も知らない、思いもよらない物語が始まった

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

悲恋の騎士と姫が転生したら男子高校生だったんだが、姫は俺を落とす気満々だ

つぐみもり
BL
《第一部 翠河の国の姫は押しが強い》 かつて俺は、滅びゆく王国で姫君に忠誠を誓い、命を落とした―― ……はずだったのに。 転生したら、なんで俺が男子高校生やってんだ!? しかも、クラスの陽キャトップ・周藤智哉(すどうともや)は、どう見ても前世の姫君その人。 顔も声も、距離感バグってる性格もそのまま。 今度は身分差も掟もないからって、攻略する気満々で迫ってくるのやめてくれ! 平穏な現代ライフを送りたい陰キャ男子(元騎士)と、全力で落としにかかる陽キャ男子(元姫)の、逆異世界転生BLギャグコメディ! 「見つけたぞ、私の騎士。今度こそ、お前を手に入れる」 「イイエナンノコトカワカリマセン」 忠義も身分も性別も全部飛び越えて、今日も逃げる俺と追いかける姫(男子高校生) 《第二部 熱砂の国からの闖入者》 郁朗と智哉は、前世の想いを飛び越え、ついに結ばれた。 そして迎える高校二年生、健全な男子高校生同士として、健全な交際を続けるはずだったが—— 「見つけたぞ姫! 今度こそお前を手に入れる!」 「もしかして、あいつは!?」 「……誰だっけ?」 熱砂の風と共に転校してきた、前世関係者。 千隼と翠瑶姫の過去の因縁が、また一つ紐解かれる。 ※残酷描写あり ※本作は、前世では男女、現代では男子同士の恋愛を描いています。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息 就職に失敗。 アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。 自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。 あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。 30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。 しかし……待てよ。 悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!? ☆ ※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。 ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。

処理中です...