異世界学園の中の変な仲間たち

へすこ(ひしご)

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そのさんじゅうきゅう

【俺が】盗み聞き【正しい】

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 急いで寮に戻り、リシェに部屋のシャワーを浴びさせたラスは彼の鞄に付着した少量のカラスのフンを綺麗に拭き取っていた。
 折角だから他の汚れも綺麗にしてあげよう、と念入りに手入れをしていく。
 …先輩、頭の方は取れたかな?
 シャワーの音が止まり、しばらくしてようやくリシェは浴室から姿を見せてきた。
「先輩、どう?取れた?」
「…一応…」
 泣き腫らした目のままで彼は言う。
 こちら側の先輩はとにかく泣くなあ、とラスは苦笑すると、鞄を床に置いて立ち上がり彼の頭を確認した。ボディーシャンプーの香りがリシェから漂ってくる。
 うん、落ちてると彼の頭を優しく撫でた。
「鞄にもちょっと付いてたから、完全に落としておきましたよ」
 まさか鞄にまで…とリシェはややショックを受けるも、甲斐甲斐しく落としてくれたラスの親切心に素直に礼を告げた。
 ラスはふふっと笑う。
「俺は喜んで先輩のお世話をしますから。向こうじゃ出来なかった分、たっぷり構ってあげます」
「………?」
 浴室で上気した顔をラスに向け、なんの話なのかときょとんとするリシェ。
「ですから先輩。俺に沢山甘えて下さい」
 するりとラスの手がリシェの頰を撫で、下に降りる。首筋に指先が触れるや否や、ぴくりと同年代にしては頼りない体が震えた。
 首筋でもしっとりとした肌触りに驚く。
「ら、ラス」
「ん?」
「くすぐったい…」
 すりすりと頰に指をなぞらえ、片手では物足りなくなり両手を使って子猫をあやすかのような手つきでリシェを優しく撫でた。
 指先を動かす度に表情を変化させていく。
「んん、…やっ、やめ…」
 その様子がまたラスを刺激した。
「あっ、くすぐったいってば…もうっ」
「先輩は敏感なんですね。指を動かすだけで瞼とかぴくぴくしてくる。可愛い」
「ひっ、ひゃ…あっ、くすぐったいっ」
 つんつんと頰を突くと、リシェは身を縮めさせて「ふああ」と小さく喘いだ。たまらなくなり、ラスは彼をガシッと抱き締める。
「はああああ…!!可愛い、可愛いです先輩っ!!ああもう誰にも渡したくない!!」
 ぎゅううう、と締め付けられたリシェはいきなりの息苦しさと相手の暴挙に慌てふためいていた。
 ラスは辛抱たまらんと言った感じで抱きしめていく。
「お、俺っ、先輩を大切にしますから!!だからっ、だから…けっ」
 結婚して下さい!!とかなり早まった事を言おうと口を開いたその瞬間。
 ちょっと待ちな!!という怒鳴り声。
 ばしん!と部屋の扉が開かれた。
「…リシェ!その変態よりも俺にしな!!」
 お決まりのようにスティレンが姿を見せる。
「スティレン。もう帰って来たのか」
 早いなとリシェは扉の前のスティレンに言った。ラスは「もう」とむくれながらリシェを抱き締め残念がる。
 いい所だったのに、と。
「あまりにも妄想が酷すぎてすぐ帰ってきたよ。…で、何?盗み聞きしてたら何勝手に暴走してくれちゃってんのさ?」
 堂々と盗み聞きをしたと言う正直なスティレン。
「何盗み聞きしてるんだ…」
「悪い!?お前に悪い虫がつかない様に見張らなきゃいけないんだって言ったでしょうが!全く、盗み聞きしなきゃいけない立場ってものをもう少し分かってよね!」
 しかも正当化させようとするタチの悪さ。
 恥の概念がまるでない様だ。
「…自分でおかしい事を言ってるって分かる?スティレン…」
 やはりラスもおかしいと思ったらしい。だがスティレンはふん、と鼻で馬鹿にするように笑った。
「俺に限っておかしい事は何一つ無いんだよ!俺はいつでも正しいんだから!おまけに美しいし!何もあんたらに迷惑はかけてない!」
 堂々と言い放ち、彼は胸を張った。
 ああ…とラスは脱力する。
「先輩。この人、いつもああなんですか…?」
 どう見てもリシェと関係あるとは思えない考え方で、ラスには信じられなかったようだ。あまりの身勝手ぶりに目眩がする。
 何かしらある度に、彼にいちいち邪魔されてしまうのだろう。文句を言うものなら、自分は間違っていないと突き放すと思う。
 リシェはラスに抱き締められながらこくりと頷いた。
 こいつは昔からこうだ、と。
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