77 / 101
そのななじゅうろく
真夜中に飛び交う矢文
しおりを挟む
どこから矢を飛ばしてるんだろう、とリシェは窓から顔を出してみる。しかし人影らしいものは見当たらず、リシェは不思議そうな顔で首を傾げていた。
変だなあと呟いていると、額に刺さるようにくっついていた矢を手にしながらラスが隣で憤慨しながらやってきた。
「この辺りには隠れられる場所なんかあるわけないのに…!どこに居るんだよ!」
「ラス」
随分と矢がくっついたなあ、と彼の手の中にある数本の吸盤付きの矢を眺めていると、再び「あ痛っ!」とラスが叫んだ。
またかよ!と彼は額に付いた矢を抜く。
「またよく分からない紙が付いてる」
指摘された通り、その矢には紙が括られていた。
「何なんだよ、腹立つなあ!あの変態教師め!」
ラスはその紙を勢い良く広げて中身を確認した。
『この矢にリシェの身に付けるものを括り付けて送り返しなさい』
丁寧な美しい文字でそう認められている。
ラスは忌々しげに舌打ちすると、ぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。
リシェはきょとんとしながら何て書いていたんだ?と問う。
「いや、先輩が見たら気分が悪くなりますから見ない方がいいですよ」
「?」
こうなったら絶対にリシェをあの変態から守らなければ、とラスは意気込む。あんな奴の毒牙に当たれば、先輩は嫌でも従わざるを得ない状況になるに違いない、と。
密室に連れられてあんな事やそんな事をされてしまうのは分かっている。
「あの変態なんかに、先輩は渡さないから!」
「変態?」
すると再びラスの額にピシリと矢が飛んできた。
痛い!と額を押さえながら引っこ抜く。先程と同じように、矢文が付いていた。
何故こんな古典的なやり方をするのか。
「大丈夫か」
無言で矢を取り、紙を広げる。
『意味が分かりますか?リシェが身に付ける物です。例えば下着とか下着とか下着とか。察して下さい、私はリシェの身に付けるものが欲しいのです』
ラスは矢を投げ捨て、紙を破いて窓に飛び出すと「この変態野郎!!」とどこに居るか分からない相手に向けて叫んだ。
リシェは段々飽きてきたらしく、室内に入って温かいお茶を飲み始めていた。そんな彼の前をズカズカと横切り、ラスは何かの布切れを矢に括り付け投げ飛ばす準備を始める。
クッキーを頬張りながら、リシェは彼に「何をしているんだ?」と聞いた。
「相手様の要求に従おうと思って。向こうは大層ご所望のようだから」
「?」
矢に布を巻き付け、ゴムで縛る。
「何だそれ?」
「何かって?俺の下着ですよ。勿論未使用です。派手すぎてなかなか使えないんだよねぇ」
確かに黄色やら紫やらの派手な柄で、目にうるさい色をしている。でも何故下着を括り付けているのだろう、と手紙の内容を知らないリシェは疑問だった。
ラスは勝ち誇った顔で、これでも喰らえと窓から矢を飛ばす。
「変なやり取りをしてるなあ」
リシェはうずず、と音を立てながら茶を飲み切った。やり方が古風過ぎる。
返事はなかなか返ってこない。
お望み通り、未使用だが下着を送りつけてやったので満足したのかもしれない。
普通なら捕まる案件だと思うが、変態には変態的なやり方で撃退したらどうかと考えたのだ。
しばらくすると、また矢が窓に貼り付いてきた。
「何だよ、まだ文句があるのか!」
ラスは窓を開けて矢を抜き、同封された手紙を広げる。
『リシェはもっと地味なのを履くと思います』
知ったような口で言う相手に、ラスはかあっとなる。今度はケチをつける気なのか、と腹が立ってきた。未使用の下着をやっただけでもありがたいと思って欲しい。
そのまま手紙をぐしゃりと握り潰すと、「贅沢を言うな!!」と暗闇に向けて怒鳴り散らしていた。
変だなあと呟いていると、額に刺さるようにくっついていた矢を手にしながらラスが隣で憤慨しながらやってきた。
「この辺りには隠れられる場所なんかあるわけないのに…!どこに居るんだよ!」
「ラス」
随分と矢がくっついたなあ、と彼の手の中にある数本の吸盤付きの矢を眺めていると、再び「あ痛っ!」とラスが叫んだ。
またかよ!と彼は額に付いた矢を抜く。
「またよく分からない紙が付いてる」
指摘された通り、その矢には紙が括られていた。
「何なんだよ、腹立つなあ!あの変態教師め!」
ラスはその紙を勢い良く広げて中身を確認した。
『この矢にリシェの身に付けるものを括り付けて送り返しなさい』
丁寧な美しい文字でそう認められている。
ラスは忌々しげに舌打ちすると、ぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。
リシェはきょとんとしながら何て書いていたんだ?と問う。
「いや、先輩が見たら気分が悪くなりますから見ない方がいいですよ」
「?」
こうなったら絶対にリシェをあの変態から守らなければ、とラスは意気込む。あんな奴の毒牙に当たれば、先輩は嫌でも従わざるを得ない状況になるに違いない、と。
密室に連れられてあんな事やそんな事をされてしまうのは分かっている。
「あの変態なんかに、先輩は渡さないから!」
「変態?」
すると再びラスの額にピシリと矢が飛んできた。
痛い!と額を押さえながら引っこ抜く。先程と同じように、矢文が付いていた。
何故こんな古典的なやり方をするのか。
「大丈夫か」
無言で矢を取り、紙を広げる。
『意味が分かりますか?リシェが身に付ける物です。例えば下着とか下着とか下着とか。察して下さい、私はリシェの身に付けるものが欲しいのです』
ラスは矢を投げ捨て、紙を破いて窓に飛び出すと「この変態野郎!!」とどこに居るか分からない相手に向けて叫んだ。
リシェは段々飽きてきたらしく、室内に入って温かいお茶を飲み始めていた。そんな彼の前をズカズカと横切り、ラスは何かの布切れを矢に括り付け投げ飛ばす準備を始める。
クッキーを頬張りながら、リシェは彼に「何をしているんだ?」と聞いた。
「相手様の要求に従おうと思って。向こうは大層ご所望のようだから」
「?」
矢に布を巻き付け、ゴムで縛る。
「何だそれ?」
「何かって?俺の下着ですよ。勿論未使用です。派手すぎてなかなか使えないんだよねぇ」
確かに黄色やら紫やらの派手な柄で、目にうるさい色をしている。でも何故下着を括り付けているのだろう、と手紙の内容を知らないリシェは疑問だった。
ラスは勝ち誇った顔で、これでも喰らえと窓から矢を飛ばす。
「変なやり取りをしてるなあ」
リシェはうずず、と音を立てながら茶を飲み切った。やり方が古風過ぎる。
返事はなかなか返ってこない。
お望み通り、未使用だが下着を送りつけてやったので満足したのかもしれない。
普通なら捕まる案件だと思うが、変態には変態的なやり方で撃退したらどうかと考えたのだ。
しばらくすると、また矢が窓に貼り付いてきた。
「何だよ、まだ文句があるのか!」
ラスは窓を開けて矢を抜き、同封された手紙を広げる。
『リシェはもっと地味なのを履くと思います』
知ったような口で言う相手に、ラスはかあっとなる。今度はケチをつける気なのか、と腹が立ってきた。未使用の下着をやっただけでもありがたいと思って欲しい。
そのまま手紙をぐしゃりと握り潰すと、「贅沢を言うな!!」と暗闇に向けて怒鳴り散らしていた。
0
あなたにおすすめの小説
転生しても推しが尊い!〜京橋くんとの学園ライフが尊死案件〜オタクでよかった、君に出会えたから
中岡 始
BL
前世の俺は、社畜オタクだった。
唯一の救いは、“黒星騎士団”という漫画のキャラ、レオ様を推すこと。
だがある日突然──
事故で命を落とした俺は、目覚めたら高校生になっていた。
しかも隣の席にいたのは、前世で推してたキャラの激似男子⁉
「え、レオ様…!? いや、現実!? ちょ、待って尊死するんだけど!?」
これは、転生オタク男子が “リアル推し” と出会ってしまった尊さ特化の学園ラブコメ。
推しに手が届きそうで届かない、心拍数限界突破の日々。
創作と感情の狭間で、「推し」と「恋」の境界がじわじわ崩れていく──
「これはもう、ただの供給じゃない。
俺と“君”の物語として、生きてるんだ」
尊死系BL/オタクあるある満載/文化祭・学園SNS・保健室…青春全部乗せ!
笑って泣ける、“愛”と“推し活”の二重螺旋ラブストーリー、開幕!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
僕がサポーターになった理由
弥生 桜香
BL
この世界には能力というものが存在する
生きている人全員に何らかの力がある
「光」「闇」「火」「水」「地」「木」「風」「雷」「氷」などの能力(ちから)
でも、そんな能力にあふれる世界なのに僕ーー空野紫織(そらの しおり)は無属性だった
だけど、僕には支えがあった
そして、その支えによって、僕は彼を支えるサポーターを目指す
僕は弱い
弱いからこそ、ある力だけを駆使して僕は彼を支えたい
だから、頑張ろうと思う……
って、えっ?何でこんな事になる訳????
ちょっと、どういう事っ!
嘘だろうっ!
幕開けは高校生入学か幼き頃か
それとも前世か
僕自身も知らない、思いもよらない物語が始まった
悲恋の騎士と姫が転生したら男子高校生だったんだが、姫は俺を落とす気満々だ
つぐみもり
BL
《第一部 翠河の国の姫は押しが強い》
かつて俺は、滅びゆく王国で姫君に忠誠を誓い、命を落とした――
……はずだったのに。
転生したら、なんで俺が男子高校生やってんだ!?
しかも、クラスの陽キャトップ・周藤智哉(すどうともや)は、どう見ても前世の姫君その人。
顔も声も、距離感バグってる性格もそのまま。
今度は身分差も掟もないからって、攻略する気満々で迫ってくるのやめてくれ!
平穏な現代ライフを送りたい陰キャ男子(元騎士)と、全力で落としにかかる陽キャ男子(元姫)の、逆異世界転生BLギャグコメディ!
「見つけたぞ、私の騎士。今度こそ、お前を手に入れる」
「イイエナンノコトカワカリマセン」
忠義も身分も性別も全部飛び越えて、今日も逃げる俺と追いかける姫(男子高校生)
《第二部 熱砂の国からの闖入者》
郁朗と智哉は、前世の想いを飛び越え、ついに結ばれた。
そして迎える高校二年生、健全な男子高校生同士として、健全な交際を続けるはずだったが——
「見つけたぞ姫! 今度こそお前を手に入れる!」
「もしかして、あいつは!?」
「……誰だっけ?」
熱砂の風と共に転校してきた、前世関係者。
千隼と翠瑶姫の過去の因縁が、また一つ紐解かれる。
※残酷描写あり
※本作は、前世では男女、現代では男子同士の恋愛を描いています。
モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる