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そのはちじゅういち
変態・II
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よろめき、壁際で苦悶の表情を浮かべるロシュを見つけた教師のカティルは、彼の姿を見るなり「ややっ」と驚いて近くまで駆け寄っていた。
「ろ、ロシュ先生!?大丈夫ですか!?」
ロシュは胸を押さえながらカティルに「ええ、まあ」と返事をする。
「具合でも悪くなったのですか?」
「いや、そうじゃないのです。私は至って元気ですよ」
それならどうしてそんなに苦しそうな顔をしているのか、とカティルは不思議そうな顔を向ける。
「随分と苦しげですが…」
「ある意味苦しいのは正解ですけどね…こう、目の前に欲しいものがあるのに手を出せないという状態なので」
その意味深な発言に、カティルはそうかと納得する。
ええ、ええ、分かりますよと彼は頷いた。
「今のあなたは相当な欲求不満と見える」
「まあ、そんな感じですが…」
間違いではない。
「あっ、そうだ。この前渡したドリンク飲みましたぁ?」
今頃思い出したように彼は苦しげなロシュに問う。ドリンクと言われ、頭の中で何だっけと考えていた後にああ、と閃いた。
性欲剤の事だ。
ニコニコと邪気の無い笑みを見ながら、ロシュは首を振った。
「学校では流石に飲めませんよ」
「でしょうねぇ」
でしょうねぇ、じゃない。
ドリンクの正体を理解した上で自分に渡してきたのかとロシュは恨みがましく思った。
確認しておいて良かったと心底思う。元の世界で身につけていた司祭の法衣ならば下はうまく隠されているが、こちらではスーツだと元気になってしまうのがバレてしまうかもしれない。
リシェが目の前に居れば尚更だ。
カティルはよろめいているロシュに対し、何か悩みでもあるのかと問う。
悩みがあっても彼は話を聞くだけで、結果的には何の解決にもならない気がする。ロシュはその親切心はありがたく受け入れながらも、「大丈夫ですよ」と返した。
「簡単に言うと恋煩いのようなものですから」
「恋煩い!!!」
ロシュの言葉を聞き、カティルは素っ頓狂な声を上げて驚いた。そしてずいっと身を乗り出すようにして話を聞きたがる。
「生徒達に人気のあるロシュ先生が、恋煩いですか!」
「人気だなんて…そんな驚くような事でも」
「いやあ、ほら。分かりますよぉ。分かる分かる。私もね、アプローチはするんですがどうも相手が素っ気ないというかね。こちらが仕掛けると倍以上になって返ってくるんですよぉ。困ったものです」
照れ笑いをするカティルに、ロシュは意外そうな顔であなたも誰か好きな相手が居るんですねと問う。
だが仕掛けると倍以上になるとはどういう事なのだろうか。
「倍以上とは?」
「いやあ、例えばですよ。軽くお尻を触ると全力で裏拳してくるとか、何もしないからって言いながらホテルで休もうとしたらエレベーター前で思いっきり蹴飛ばされたりとか。キスをせがもうとすればそのまま頭突きを食らったりとか色々です」
してきた事をスラスラと話す内容が、ことごとく犯罪紛いな行動ばかりでロシュは脱力しそうになった。
いくら自分でもそこまではしない。
相手に同情したくなる行為だ。
「露骨すぎて草も生えませんね」
「そうですかぁ?うーん、私なりに全力で求愛してるんですがねぇ…」
彼は何かがズレているのだろう。
内心困惑しているロシュに対し、カティルは目を輝かせながら「どうですかね?」と話を切り出した。
「私でよければあなたの恋路の相談相手に」
相談相手、と聞いた瞬間。
ロシュは首を振りながら断った。
「いや、お気持ちは嬉しいですが大丈夫です。結構ですよ」
彼のアドバイス通りにすると、むしろ逆効果になる。
ええ…と残念がるカティル。
ロシュは困惑の色を隠せない様子で、だってと返した。
「あなたの求愛方法は完全に変質者のそれですし…」
さすがにまだ若過ぎるリシェに対してやる行動では無い。
…校舎内で事案が発生してしまうのはあまりよろしくはないだろう。
「ろ、ロシュ先生!?大丈夫ですか!?」
ロシュは胸を押さえながらカティルに「ええ、まあ」と返事をする。
「具合でも悪くなったのですか?」
「いや、そうじゃないのです。私は至って元気ですよ」
それならどうしてそんなに苦しそうな顔をしているのか、とカティルは不思議そうな顔を向ける。
「随分と苦しげですが…」
「ある意味苦しいのは正解ですけどね…こう、目の前に欲しいものがあるのに手を出せないという状態なので」
その意味深な発言に、カティルはそうかと納得する。
ええ、ええ、分かりますよと彼は頷いた。
「今のあなたは相当な欲求不満と見える」
「まあ、そんな感じですが…」
間違いではない。
「あっ、そうだ。この前渡したドリンク飲みましたぁ?」
今頃思い出したように彼は苦しげなロシュに問う。ドリンクと言われ、頭の中で何だっけと考えていた後にああ、と閃いた。
性欲剤の事だ。
ニコニコと邪気の無い笑みを見ながら、ロシュは首を振った。
「学校では流石に飲めませんよ」
「でしょうねぇ」
でしょうねぇ、じゃない。
ドリンクの正体を理解した上で自分に渡してきたのかとロシュは恨みがましく思った。
確認しておいて良かったと心底思う。元の世界で身につけていた司祭の法衣ならば下はうまく隠されているが、こちらではスーツだと元気になってしまうのがバレてしまうかもしれない。
リシェが目の前に居れば尚更だ。
カティルはよろめいているロシュに対し、何か悩みでもあるのかと問う。
悩みがあっても彼は話を聞くだけで、結果的には何の解決にもならない気がする。ロシュはその親切心はありがたく受け入れながらも、「大丈夫ですよ」と返した。
「簡単に言うと恋煩いのようなものですから」
「恋煩い!!!」
ロシュの言葉を聞き、カティルは素っ頓狂な声を上げて驚いた。そしてずいっと身を乗り出すようにして話を聞きたがる。
「生徒達に人気のあるロシュ先生が、恋煩いですか!」
「人気だなんて…そんな驚くような事でも」
「いやあ、ほら。分かりますよぉ。分かる分かる。私もね、アプローチはするんですがどうも相手が素っ気ないというかね。こちらが仕掛けると倍以上になって返ってくるんですよぉ。困ったものです」
照れ笑いをするカティルに、ロシュは意外そうな顔であなたも誰か好きな相手が居るんですねと問う。
だが仕掛けると倍以上になるとはどういう事なのだろうか。
「倍以上とは?」
「いやあ、例えばですよ。軽くお尻を触ると全力で裏拳してくるとか、何もしないからって言いながらホテルで休もうとしたらエレベーター前で思いっきり蹴飛ばされたりとか。キスをせがもうとすればそのまま頭突きを食らったりとか色々です」
してきた事をスラスラと話す内容が、ことごとく犯罪紛いな行動ばかりでロシュは脱力しそうになった。
いくら自分でもそこまではしない。
相手に同情したくなる行為だ。
「露骨すぎて草も生えませんね」
「そうですかぁ?うーん、私なりに全力で求愛してるんですがねぇ…」
彼は何かがズレているのだろう。
内心困惑しているロシュに対し、カティルは目を輝かせながら「どうですかね?」と話を切り出した。
「私でよければあなたの恋路の相談相手に」
相談相手、と聞いた瞬間。
ロシュは首を振りながら断った。
「いや、お気持ちは嬉しいですが大丈夫です。結構ですよ」
彼のアドバイス通りにすると、むしろ逆効果になる。
ええ…と残念がるカティル。
ロシュは困惑の色を隠せない様子で、だってと返した。
「あなたの求愛方法は完全に変質者のそれですし…」
さすがにまだ若過ぎるリシェに対してやる行動では無い。
…校舎内で事案が発生してしまうのはあまりよろしくはないだろう。
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